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 やばいな、俺のサッカーは最強だったな。

 もう本当に相手なしといったところだ。

 そうだ、こんな調子でサッカーを続けていけば、俺の欲求は満たされ続け、人生のゴールへと蹴り込んでいけるはずだ。


「きたこれだな。もうこうなればどんどんシュートを決めていきたいぜ。街とか大きなところに行って、ひたすら人々を蹴りまくろう。そうして俺のサッカー伝説を作るんだ」


 俺は気分がどんどん上向いていくのを感じていた。

 目標、ひいては完全体なる自分をイメージすることができた。

 明確な目標のある人生がこんなにも楽しいだなんて、十何年生きてきて初めて気付いたや。


「おら!!」


 俺は跳躍した。

 足腰に力を入れて草地を蹴れば、俺の体は空へと向かって突き刺さった。

 ゴールネットを揺らすがごとく突き刺さったのだ。


 気づけば俺は空にいた。


「ふぅ! 最高の眺めだな! やっぱり俺の足腰はガチで最強すぎるな。サッカーをするには少し過剰な気はするけど、まぁあるに越したことはないよな!」


 ひゅーん! ひゅーん!


 俺は地面に着地するや否や跳躍するを繰り返し、凄まじい速度で大地を蹴り進んでいく。

 ああ、もう俺を追い越せるものは何もないな。

 今の俺を追い越せるとしたら、ジェット機か新幹線かスポーツカーくらいのものだ。あとミサイルとか光とか。


「お! あれは」


 その調子で進んでいると、眼下に街のようなものを捉えた。

 城壁に囲まれており、細かい建物たちが密集しているのが見て取れる。


「巨大な街だなぁ。こんなあっさり見つかるとはラッキーだったな。まぁ俺のスピードがやばすぎるのもあるんだろうけど。今なら世界最高峰のドリブルを披露できそうだぜ」


 ボールがないのが悔やまれるが、まぁいざゲットした時にでも見せつければいい。


 俺はとりあえず街の中に入ることにした。


 瞬く間に城壁付近まで到達し、ぴょーおおおおん! と壁を飛び越える。

 凄まじい跳躍。


 そして街の中心部に勢いよく着地する。



 どごおおおおおおおおおおおおおおおおん!!



 凄まじい轟音が鳴り響いた。

 気づけば俺が着地した場所には大きなクレーターができていた。

 大通りだったのか、周囲には何人もの人の亡骸が落ちていた。


「あちゃー、ちょっと派手に着地しようとしたのが仇になっちゃったかな。てかやっぱすげーな俺の脚力。こんなにもたくさんの死者を出すことができるだなんて。これはミサイル超えしてしまってるかもな、スピードは負けてるかもしれないけど、威力はミサイル超えだわ」


 しかし派手にやってしまった。

 これからどうしたらいいんだろう、死体を運ぶのを手伝ったほうがいいのかなどと頭をぽりぽり考えていると、遠くの方から誰かが呼びかけてきた。


「お、おい! そこのお前! 一体何もんだ!?」


 クレーターの縁から俺の方をわずかに見下ろす形で小太りのおっさんが声をかけてくる。

 その横には同所属の者と思しき者たちもいた。

 一緒の制服を着ているのだ。まぁなんだろう、この世界の警官みたいな感じなのかな? 知らないけど。


「僕ですか? 僕はただサッカーが大好きなだけの、純粋なサッカー少年ですよ。そんなところで立ってないで、どうですか? 僕と一緒にサッカーとでもいきませんか?」


「さ、さっかー? なんだ訳の分からないことを言うな! お前はなんだ!? 闇の組織の一員か!?」


「ゴンガ隊長、もしかすると魔物が人に化けているのかもしれません」


「ありえますね、ここは早急な排除が必要かと存じます」


 何やら側近たちと話しあっているようだった。

 なんだよ、サッカーしないのか? 俺はサッカーをするために生きているのであって、訳のわからない話に付き合うために生きてるわけではないんだ。


「そ、そうだな。ならば増援が来るまで時間稼ぎを……」


「何をおっしゃいますかゴンガ隊長。このような者一人の始末、我々だけで十分でございます」


「こ、こんな化け物相手にか?」


「はい。これでも部隊最強の剣士を自負しておりますので。むしろこのような者に遅れを取っているようでは街を守る衛兵として立つ瀬がございません」


「隊長、私もです。部隊準最強の剣士を自負している私が、このような野蛮な者に負けるはずがありません」


「そうか、分かった。そこまで言うならやってこい。絶対に死ぬんじゃないぞ」



 そんな話し合いをしたのち、側近二人がクレーターを降りてこちらに近づいてくる。

 腰に剣を差した、男と女だった。


「ふっ、あなたも運がありませんね。何者かは知りませんが、まさか私の練習台として散っていく羽目になるとは」


「本当についてないわ。私はあのお方を超えるために剣を磨くと誓った。あのかたを斬るまで私は負けない。よってあなたはここで敗れる運命」


 男と女が剣を抜く。

 はぁ、マジか。もううんざりすぎてマジかとしか言えないわ。


「はぁ、本当に言ってんのか。あんたらには失望したわ」


「なんだと?」


「なんでサッカーだって言ってんのに、剣なんか取り出してんの? そんなの明らかにルール違反だろ、ちょっと考えればわかるだろ? レッドーカードがあれば開示してるところだわ」


「何を頭のおかしいことを! レザナ、お前は見ていろ、こんなもの私一人で……!」



 ぼこーん!



 俺は斬り掛かってきた男の頭部を蹴り飛ばした。

 場外ホームランばりに遠くに吹っ飛んでいった。

 おっと、サッカー中に野球のたとえはエヌジーだな。



「な?!」



 ばこーん!



 さらに驚いている女の頭部も特大しゅぅううっ!


 凄い速度でどこかに吹っ飛んだ。


 サッカーしようぜ!

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