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東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!  作者: 大濠泉
第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

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◆11 お姫様の婚姻なんだし、めでたいことじゃないの? 

 ドミニク=スフォルト王国の王女、ターニャ・テラ・ドミニク・ランブルトに仕える侍女たちはみな、我慢していた。自分たちの主人が、政治的な争いに巻き込まれ、身動きが取れなくなっている状況に、今まで耐えてきた。

 が、事情を知らない〈魔法使いヒナ(ワタシ)〉に説明するという形で、憂さ晴らしがしたかったのかもしれない。


「姫様、お可哀想なんですよ。道具にされてるんです。結婚の」


「王位継承者第一位の姫様だというのに、政略結婚から逃れられないなんて……」


「姫様のお気持ちもございますのに」


「女って損ですよね。

 領地経営も見事になさっておいでなのに、男性代官の成果にされる。

 姫様にだって、魔法の力は誰にも負けないくらいあるのに。

 どうにかならないのかしら」


 自分の状況のせいで、侍女たちが想像以上に憤懣(ふんまん)を募らせていたことを知り、ターニャ王女は驚いて両手を広げた。


「言わないで頂戴。これも王家の女の務めですよ。

 国を守るためですもの……」


 首を(かし)げるワタシに対し、侍女長クレアが話の内容をまとめてくれた。


「王権代理の王妃ドロレス様が、隣国デミアス公国から、ターニャ王女殿下のお婿さんを呼び寄せようと、それはそれは執拗になさっておいででした。

 それをなんとかお断りできたと思ったら、今度は病床にあられる父王様が、いきなり仰せになられたのです。急いで国内貴族から、お相手を探しなさい、とーー。

 現在、わが国は、お隣の国と険悪な関係になっておりましてね。

 特に、外交関係が不自由になっておりまして……」

 

 結果、王女殿下としては初めて、外国の王族や高位貴族から婿を取らない方針となりそうだという。


 王国始まって以来の慣例破りなため、口さがない貴族連中は、


「諸外国に示しがつかない」


「王国の権威が失墜する」


 などと、大袈裟に騒ぎ立てることが、侍女たちには我慢ならないらしい。


 もっとも、国内貴族から婿を取るということ自体は、侍女たち全員が賛成している。

 とにかく、隣国デミアス公国からの干渉を(いと)うているようだった。


 彼女たちが、銘々に主人を(おもんぱか)って、発言を重ねていく。


「あら。でも、国内でお婿さんをお探しになるのは、姫様本来のお望み通りではなくて?」


「それは誰もが承知しておりますわ。

 でも、長年の慣例を破るのは問題あるって、王妃様が色々と……」


「そうそう。

 それに、ターニャ姫様が婚姻を結ぶのは、少々早すぎませんこと?」


 婚約を交わすだけなら幼少時からよくあることだけど、今回の婚約は諸所の政治事情から、事実上の結婚を意味するため、政局を睨む連中たちが水面下で色々と動いているらしい。


 それでも、そうした事情を承知の上で、ターニャ姫はみなの議論を打ち切った。


「私はこれでも王家唯一の血筋ですもの。

 王国のためなら、いかなる婚姻も拒みませんわ。

 それに、王様(おとうさま)のお願いなんですもの。

 見事、叶えてみせます」


 瞬時に議論は停止し、侍女長クレアは急に話題を変えた。


「たしかに、王様が王妃様を抑え、意向をお示しになったのは、久しぶりですわね」


「ええ。王様がご健在で、安心しました」


「ほんとうに……」


 でも、みなの表情は、そこまで明るいものではない。

 姫様の父王サローニア三世が、本当に健在かどうかは疑わしいーーそれが正直なところらしい。

 侍女長クレアは厳しい顔つきでつぶやいた。


「切羽詰まった、厳しい状況です。

 婚姻のお相手は国内貴族に限る、と厳命されましたので……」


 それが不満な外国勢力ーー特に隣国デミアス公国ーーは、お姫様の婚礼に対して横槍を入れてくる可能性が高い、と誰もが思っていた。


 何事も一筋縄ではいかないのが、政治である。


(お姫様の婚姻なんだし、めでたいことじゃないの?

 ーーなんだか複雑で、可哀想。まじ、ヘコむわ)


 ワタシは頬に手を当てて、どうすればお姫様が自由恋愛できるかを思案する。

 が、なにも良いアイデアは浮かばない。


 そんなとき、侍女長の許に下級侍女が駆け寄せて、連絡が入った。

 その内容を、クレアは姫様の耳元で(ささや)いた。


「レオナルド様が、応接室にいらしゃっております」


 ターニャ姫は、パアッと明るい表情になった。


「あら。お早いお着きね。

 彼もきっと、異世界からの来訪者に興味があるのね」


 姫様は立ち上がると、対面に座るワタシに向かって、誘いかけた。


「さあ、一緒に来てくださいますね、ヒナ様。

 私の幼馴染を紹介させてください」

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