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東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!  作者: 大濠泉
第二章 白鳥雛派遣:魔法使い編

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◆6 女は男なんかより、生まれながらにして、ずうっと人間関係に揉まれて生きてんだから!

 今回は、白鳥雛しらとりひなさんが、〈魔法使い〉として、異世界に派遣されている。

 だけど、前回、〈勇者〉として派遣バイトを務めた東堂正宗とうどうまさむねくんよりも、緊張感がないような気がする。

 真面目に依頼を果たすつもりがあるのかすら、不安になってきた。

 私、星野ひかりは、語気を強めて念押しした。


「今回の依頼は、ホンモノのお姫様の護衛任務なの。

 そこらへん、良く理解してる?」


 ヒナさんは、澄まし顔で返答する。


「バカにしてんの? 聞いたから、知ってるに決まってんじゃん。

 ま、ワタシもね、歌舞伎町ではガチの〈姫様〉なんだけどぉ。

 ーーでもぉ、ホンモノのお姫様って、どんな女性(ヒト)なんだろうねぇ?

 あ、そうか。

 護衛がお仕事だから、マジで、こんなスキルがあるんだ……」


 ヒナさんは、ステータス表に表示された〈印貼付マーキング〉の項目に目を付けた。

 これは特定の人物や動物が移動しても、何処(どこ)にいても、居場所がわかる能力だ。


 あと、お約束の〈転移〉魔法も、付与されていた。

 一度行ったことがある場所なら、すぐに移動できる能力である。


「〈転移〉ーーって、あっという間に、遠くに行っちゃう能力(ちから)のことだよね?

 なんか、ヤバくね?

 異世界へ行くってときは、分解だの、再構成だのと、ゴチャゴチャ言ってたのに……」


 と、誰に聴かせるともなく、ヒナさんは言葉を漏らした。

 すると、兄の星野新一が、私に代わって、交信に横入りしてきた。

 以降、兄とヒナさんの問答が始まった。


「ヒナちゃん、それはね、魔法が使える異世界では、魔法因子が素粒子レベルで充満しているから、普通に魔法が使えちゃうからなんだよ。

 地球空間と異世界の空間をつなげるのとは、事情がまるで違うんだ」


「あれ? それもチガくね?

 コッチの世界には魔素が少ししかないから、〈魔法使い〉は珍しいんだって聞いたけど」


「そうなんだけど、ソッチの世界では、地球に比べたら、充分に魔素が充満してるんだよ。

 同空間内を転移できる程度にはね。

 それに、体内の血液中に魔素と特定の能力を(つかさど)る因子がたっぷりあれば、その魔法力を発揮する条件はーー」


 でも、二人の問答は長続きしない。

 自分から疑問を投げかけておきながら、ヒナには話を最後まで聞くつもりはない。


「ーーふうん。ま、マジ、どうでもいいけどぉ。

 ワタシ、そういった込み入った理屈は、相手にしない主義なんで」


「……そう。そうだよね、うん」


「そういえば、ワタシにもーーたしか〈個性能力〉っていうの?

 ーーそう、ワタシならではの能力スキルってあるわけぇ?」


 ここで再び、私、星野ひかりが発言した。


「あるわよ。よく見てみなさい」


 私に促されて、ヒナさんは再びステータス表に目を()らす。


「ああ、コイツかぁ……」


魅了チャーム〉ーー!


 ヒナさんは、上機嫌になった。


「人をたらし込める力だよね、たしか。

 マジ、ヤバくね?

 ーーでも、すっごくワタシの個性っての? 表してね?

 ほら、ガチでワタシ、魔性の女だからさぁ。

 今までだって、たくさんのオトコの人生を狂わせてきたしぃ。

 ワタシのメンタル、これでもっとツヨツヨになる?」


 と、ここで東堂正宗くんの揶揄(からか)う声が響く。


「なに言ってやがる。

 たくさんのオトコに人生を狂わされてきたーーの間違いだろ」


 私の隣に座っていた正宗くんが、会話に横槍を入れたのだ。


「シーッ! 余計なこと言わないで」


 私は正宗くんを(にら)みつける。


 幸い、今、浮かれ調子になってるヒナさんには、私と彼のやりとりは聞こえなかった。

〈魔法使いヒナ〉は、口を大きく開けて、陽気な声をあげた。


「ふんふんーー。

 マジでいろんな能力があるけど、ワタシの個性能力って〈魅了(チャーム)〉なんだぁ。

 ヤベエわ、これ。いかにもで、サイコーだわ。

 コイツで、どんなイケメンも、イチコロじゃね?

 嬉しい!」


 もう、ヒナさんの瞳がハート型になっている(ような気がする)。

 彼女の口から漏れた歓喜の声を耳にして、正宗くんは「ホラみろ!」とばかりに膝を打ち、私たち兄妹は、肩を(すく)める。


 夢みがちなヒナさんの思念が、ダダ漏れで東京(コチラ)に伝わってくる。

 満足そうな彼女の顔をモニター越しに観て、私たち兄妹は溜息をつくばかり。


 一方で、正宗くんは、よりいっそう、彼女を小馬鹿にする態度になった。

 交信状態が継続されていたため、彼の声を私のマイクが拾い、ヒナさんの脳内に響く。


「おいおい、ヒナ。

 甘いんじゃねえのか、そういった自分の欲望全開で仕事に入るってのは。

 いくら〈魅了〉を使えたって、ソッチの王国は、かなり文化的な世界だ。

 文化的な世界ってことは、それだけ人間社会が成熟しているってことだぞ。

 つまり、しきたりや契約を混ぜ合わせた〈社交〉が必須となる世界ってわけだ。

 ましてや主な活動の舞台が、王宮とかの貴族社会ときた。

 そんな中で、お前がうまくやっていけるのかよ?」


 さすがに、非難めいた言葉には、彼女も敏感になる。

 ヒナさんは彼の言葉を耳にして、頬を膨らませた。


「っせぇな。まじ、ウザイんですけどぉ。

 ワタシは、学歴を鼻に掛けるアンタみたいな、プライドだけのクズとは、違うっての。

 この際だから、教えてやっけど、女は男なんかより、生まれながらにして、ずうっと人間関係に揉まれて生きてんだから!」


 そうした彼女のキレ気味の声を最後に、通信が遮断されてしまった。

 ツーツーといった機械音のみが、私たち兄妹がつけているヘッドフォンに流れてくる。


 私は隣の正宗くんに向け、非難がましい視線をぶつけた。


「もう! だから、黙っててって言ってるじゃないの!」


 が、正宗くんはまるで気にする様子はなく、椅子の背もたれに身を預け、伸びをする。


「ま、お手並み拝見だな。

 結局、仕事ってのは、現場に任せるしかないんだよ。

 交信が出来なくたって、モニターで観ることはできるんだろ?」


 兄の新一もうなずきつつ、妹である私を(なだ)める。


「ヒナさんなら大丈夫だよ。

 通信を切ったのも、派遣先の世界に、一刻も早く没入(ぼつにゅう)して馴染むためなんだろうし。

 ほら、観なよ。ヒナさん、いつになく真剣な表情になってる」


 兄に(うなが)されて、視線をモニターに移す。

 たしかに、真面目に周囲を(うかが)う〈魔法使いヒナ〉の姿が映し出されていた。

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