表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/290

◆14 見てな、ガチで〈聖女様〉の地位をひっくり返してやんよ!

 東京異世界派遣会社のモニターには、信じられない光景が映し出されていた。

 派遣バイトの白鳥雛しらとりひなの視点から離れて、突然、王宮内の様子が上映された。

 しかも、そこでは、〈聖女様〉認定されて王宮に居残った、金髪の白い女の子が、王子様と濃厚な口付けを交わしていた。

 あまつさえ、キスを終えた王子様が、白い金髪美少女に(ひざまず)いたのである!


「おいおい、いくら聖女様が相手だからって、へりくだりすぎてないか!?

 仮にも王子様だろ?」


 声をあげて動揺するのは、東堂正宗とうどうまさむねだけではない。

 星野ひかりも、モニター画面を指差して指摘する。


「見て。王子だけじゃないわ。

 王子にお付きの者たちの態度も、おかしいわよ。

 この雰囲気ーー既視感がある……」


〈聖女様〉となった白い女の子を前にして、王子が(ひざまず)く。

 それだけではない。

 二人を中心にして、少なくとも五、六人の騎士や貴族たちが取り囲み、平伏していた。

 みなの目が、(あや)しく光っている。


 これに似た光景を、東京本社モニターで、三人は見たことがあった。


 今度は、星野新一が立ち上がって、声をあげた。


「そうだ。ヒナちゃんの個性能力(ユニーク•スキル)〈魅了(チャーム)〉だ!」


 以前、白鳥雛が〈魔法使い〉として派遣されたとき、〈魅了(チャーム)〉を使用した。

 その術中にかかった者たちが、あんなふうにーー〈魔法使いヒナ〉を、あたかもご主人様として、(あが)(たてまつ)るようになっていた。


 ということはーー。


 あの〈白い聖女様〉は、〈魅了〉の魔法で王子たちを操っている!?


「この映像ーーヒナに見せろよ。そうしたらーー」


 うわずった声を、正宗があげた、その瞬間ーー。


「ふん! 見てるわよ」


 と、いきなりモニターから、ヒナの声が響いてきた。

 ヒナの方から、通信してきたのだ。


「ようやく、交信する気になったのか!」


 正宗が安堵の吐息を漏らすと、ヒナは文句を言う。


「なに言ってんの?

 ワタシ、何度も連絡しよーとしたんだけど、つながらなかったじゃん?

 そっちでワタシのこと、無視したんじゃね!?」


 ヒナの言いがかりに、新一が、


「それはない。誤解だよ、ヒナちゃん」


 と、間髪入れず、フォローする。

 ヒナは(とが)った口調で、そのまま問いかける。


「でさぁ、これ、マジで王宮の映像よね。

 アンタたちが、送りつけてきたの?」


 正宗が当惑気味に、応える。


「いやーーなんだか、急に映像が切り替わっちゃって……ソッチでも映ってるのか?」


「ええ。ワタシの頭の中でね。

 音声はねーけどぉ……。

 でも、これで、フフフフ……」


 ヒナのほくそ笑む声が、モニターから流れる。


「これで、勝ちじゃね!?

 ワタシが、ガチの〈聖女様〉ってことよね!」


 ヒナの突然の宣言に、正宗が、


「なんでだよ!?」


 とツッコミを入れ、以降、二人の会話となった。


「だって、あんなの、マジで〈聖女様〉の振る舞いじゃなくね!?」


「バカ。なに、カマトトぶってるんだ!?」


「? かまととーー? なに、ソレ?」


「悪い。オヤジ世代の死語だ。

 ーーそれよりも、ウカウカ(これも死語)してらんないぞ。

 相手は悪どい魔法を使って、王子たちを取り込もうとしてるんだ。

 幸い、オマエも〈魅了(チャーム)〉が使える。

 魔法能力で、あの金髪少女に対抗しろよ。

 王子はすでにあの女の子に籠絡(ろうらく)されてるようだけど、まだ王様が残ってる。

〈魅了〉合戦なら、おまえも負けないはず!」


「嫌よ。ワタシ、〈魅了〉は使わないって言ってるでしょ!」


「悪かったよ、おまえをからかったりして。

 だからーー」


「心配なんか、いらねーし!

 あのお人形さんが、お偉いさんから手懐(てなず)けようってんなら、ワタシは街角から地道に『聖女伝説』ってのを作ってやるんだから!

 見てな、ガチで〈聖女様〉の地位をひっくり返してやんよ!」


 やはり、ヒナに聞く耳はなかった。

 東京本社にいる三人は、ほとんど同時に深い溜息をつくしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ