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◆6 んなこと、どーだっていい! いったいぜんたい、どーなってんの!?

 ワタシ、白鳥雛しらとりひなは、本来、〈滅びの予言〉を回避するための〈聖女様〉として、この異世界に派遣されて来たはずだった。


 ところが、召喚された〈聖女様〉がバッティングして、もう一人、金髪の白人美少女が〈謁見の間〉に登場!


 そして、居並ぶ緑色のお偉方たちは、みなで白人美女ばかりを〈聖女様〉扱いでチヤホヤして、ワタシは無視。

 ワタシは〈聖女様〉とは認められなかった。


 結果、ワタシは、緑のイケメン騎士に先導されて〈謁見の間〉から出た。

 そして、廊下を渡り、玄関口近くの部屋に通された。


 緑騎士さんは部屋には入らず、扉の外で待ちぼうけになるらしい。


 部屋の中では、四人の侍女然とした女性たちが待ち受けていた。

 彼女たちはワタシを目にして一瞬、たじろいだようだったけど(たぶん、黄色い肌が珍しかったようだ)、なんとか平静を保ちつつ、数々の衣服を持ち出した。

 とりあえず、ユ◯クロ的な現代日本服から、異世界(コッチ)仕様の服装に着替えさせようということらしい。


 ワタシは素直に応じて、言われるがままに身体を動かした。

 袖の(はし)に白いヒラヒラが付いた、明るめの色合いをしたドレスを選び、着せてもらう。

 両手両足を広げたりして、なされるがままにしていたら、素っ裸に()かれたうえに、白い下着を履かされ、ギュウギュウに腰廻りを締め付けるコルセットみたいなのを付けられた。


「いたた……痛いっつーの!」


 口をへの字に曲げていると、眼前の空中に、いきなりステータス表が現れた。


「ええ!? 

 ワタシ、まだ『ステータス・オープン』って言ってないのに!」


 突然のステータス表示に驚いた。

 けれども、もっと驚かされたのは、そのステータス表の表記状態であった。


(なによ、これ。ちっとも読めないじゃない!?)


 名前:ヒ∂ 年齢:?★ 職業:※⭐︎∞

 レベル:%●⁂

 体力:▲〆@ 魔力量:⁂※§

 攻撃力:2Å※ 防御力:○♀※

 治癒力:※※○

 スキル:※※※、▲@※、★✳︎♬、※⚫︎★

 個性能力ユニーク・スキル:♬◇


 項目表記以外、完全に文字化けしていて、能力(スキル)内容や数値が読み取れない。


(〈個性能力〉が魅了(チャーム)だってことがわかってるだけで、あとはサッパリだわ。

〈聖魔法〉と〈治癒〉は使えるって聞いてたけどーー職業がちゃんと〈聖女様〉設定になってんのかしらね?

 マジで、ヤバくね!?)


 それでも、ステータス表が空中に浮かぶようになっただけ、通常仕様に復帰しつつあるようだ。

 雑音に(まぎ)れて、かすかに聴こえる言葉があった。

 コッチの人々の使う言葉じゃない。

 日本語だ!

 東京本社からの通信メッセージが、段々聴き取れるようになってきた。


 コルセットを付け終わり、ドレスをはおって、頭に帽子をかぶらされた頃ーー。

 ようやくワタシは、東京異世界派遣本部と、頭の中で交信ができるようになった。


「ああ、よかった。つながった」


 聞き慣れた、星野ひかり(ひかりちゃん)の声が、脳内に響き渡る。

 他人の声が無遠慮に頭の中でこだまするのを、ありがたく思うのは初めてのことだった。


「ーーソッチの世界の環境は、気温は9℃、湿度は10、一日の時間が18時間、現在のヒナさんの身長はーー」


 相変わらずのマニュアル的な説明を聞かされ、ワタシは閉口した。


「んなこと、どーだっていい!

 いったいぜんたい、どーなってんの!?」


 どんな数字を聞いたところで、派遣先の世界での標準に合わせているだけだから、実感が()かない。

 しかも、今現在の問題に対処するのに、役立たない情報だ。


 今現在の問題は、ワタシは〈聖女様〉として派遣されたはずのに、コッチのお偉いさんから聖女と認められなかったことだ。

 別の女の子を聖女扱いにして、ワタシは無視されてしまったことにある。

 まさに不測の事態なんですけど?


「モニターで観てたけど、ごめんなさい。

 事情はコッチでも、よくわからないのよ」


 星野ひかり(ひかりちゃん)が申し訳なさそうに謝る。


 不思議なことに、同時に二人の女性が〈聖女様〉として召喚されてしまったらしい。


「じゃあ、あの金髪の白いお人形さん、地球とは別の世界から来たってわけ?」


 ワタシの問いかけに、ひかりちゃんはアッサリと答える。


「いや、わかんないけどーー地球からだってのも、十分あり得ると思う」


 歯切れが悪いながらも、ひかりちゃんは認めている。

 あの白人さん、地球人なの?

 だったらーー。


「へ? アンタたち、ワタシだけじゃ物足りず、別の人もコッチに寄越したの?」


 異世界に人材派遣してるなんて妙な会社、東京異世界派遣会社(ウチ)だけかと思って()いてみたら、意外なことを彼女はサラリと口にした。


「その金髪さんを送ったのは、もちろん東京異世界派遣会社(ウチ)じゃないわよ。

 人種から見ても、外国の派遣会社じゃないかしら?」


 聞けば、海外の国々にも、異世界派遣会社があるらしい。


「異世界派遣って、日本だけの専売特許ってわけじゃない。

 だから〈東京〉異世界派遣会社と名乗ってるわけ」


 わざわざ「東京」っていう地名を冠してる。

 ってことは、日本国内の他の都市にも、異世界派遣業者(?)が存在する?

 それってスゴくね? と思っていると、東堂正宗マサムネが横合いから口を挟んできた。


「気になったんだけど。

 ソッチの異世界、キリスト教が入り込んでない?」


 おいおい、そんなこと、今、気にしてる場合かよ!?

〈聖女様〉とも認められず、王宮から追い出されようとしてるワタシを、少しは気遣え!

 マサムネのあまりのマイペースぶりに、ワタシは心底、ガッカリした。


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