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◆48 こ、コイツ、禁断の魔法を……!?

 東京異世界派遣本部では、星野兄妹が、モニター前で慌てふためいていた。


「ど、どうすんのよ!?」


「わ、わからないけど……マサムネくん、絶対にここは機転を利かせて逃げて欲しい」


 星野新一は、一縷(いちる)の望みに期待をかけた。


「そうだ、マサムネくんは、幾度もピンチを切り抜けて来た。

 たった二回、派遣しただけだけど、内容的には何度も修羅場を潜り抜けてきたようなベテラン派遣員の風格がある。

 今度だって……」


「お兄ちゃん、無理よ。今回は……。

 マサムネくん、死んじゃうよ」


 ひかりの目から、涙が(あふ)れた。


「ごめんなさい。私のせいだわ」


 星野兄妹は絶望の声をあげる。

 とてもモニターを観ていられなかった。

 が、そんな彼らの顔を見て、笑う女性がいた。

 白鳥雛しらとりひなだ。


 (ひな)は爪の手入れを終えるやいなや、ティーカップを片手にポテチを頬張(ほおば)りながら、モニター観戦に興じていた。

 彼女はモニターから視線を外すことなく、星野兄妹に向かって語りかけた。


「二人とも、超ウケるーー。

 ガチで大丈夫よ、あのオトコは。

 マジで、見てな?

 チート気取りの俺様キャラ、全開すっから!」


 雛がそう語った瞬間、モニター全面が白く光り輝いた。

 閃光(せんこう)(ほとばし)ったのだ。

 

「なっ!?」


「どうしたの!?」


 星野兄弟が身を乗り出して画面に目を()らす。

 すると、ついさっきまで、マサムネに迫ってきていた敵が一瞬で消し炭となっていた。


◇◇◇


 辺り一面に、閃光が走った。


 と思ったら、いきなり俺、〈魔術師マサムネ〉に迫ってきていた敵が、真っ赤に燃えあがった。


「ぎゃああああ!!」


 炎は赤々と、勢いよく燃え上がった。

 俺の昂揚(こうよう)した気分を表わすかのようだ。

 思わず鼻歌を口ずさんでいた。


「焚き火だ、焚き火だ、落ち葉たきーーってか?

 この後、焼き芋でも出来てれば良いんだけどね」


 あっという間に、副団長サイファスをはじめ、八人の騎士どもが消し炭になっていた。

 おっと、よく見ると、炎の向こう側に、まだ幾人か、騎士団員がいる。

 ああ、スカイムーン相手に嘲弄(ちょうろう)してた連中だ。

 ガタガタ、身体を震わせてる。

 怖いか? そうだろう、そうだろう。

 一介の冒険者にして、弱小魔術師設定の俺様に、これから殺されるんだからなあ。


 俺はゆっくりと歩を進め、目の前で(おび)えている騎士に語りかけた。

 スカイムーンを嘲笑(ちょうしょう)していた一人だ。

 良かった。まだ、消し炭になってなくて。

 コイツには言ってやりたいことがある。


「ーーああ、それはそうと、貴様は言ってはいけないことを口走った」


「い……言ってはいけないこと?」


 問い返す騎士を相手に、俺は手にした黄金杖を輝かせた。


「スカイムーン相手に、おまえ、言ったよな!?

『頭が切れるってんなら、弟に家督を奪われて、家から追い出されたりしねえよ』ってな!

 悪いな。

 俺もスカイムーンと一緒でな、家から追い出されたクチなんだよ。

 もっとも、俺は兄によってだがーーそれでも気に入らねえ。

 貴様はスカイムーンのみまらず、俺様までをも愚弄(ぐろう)した」


「い、いえ……そのようなことはーー初対面ですし……」


「うるせえ。俺様は宇宙一、頭が切れるんだァーー!!」


 俺様は害虫駆除するように一気に片付けることにした。


「〈雷炎〉!」


〈雷炎〉とは、俺様の個性能力(ユニーク・スキル)混合(カクテル)〉で〈雷撃〉と〈火炎〉を合体させたもの。

 前回、俺様が〈勇者〉として派遣された時に使用した、お気に入りの攻撃魔法だ。


 ドオオオオン!


 派手な爆音とともに、俺様の周囲が一瞬で焼け野原となった。

 あの無礼千万な騎士どものみならず、得意げに冒険者たちに首輪を嵌めて回っていた奴隷商人たちも、十人近く、一気に火葬にしてやった。


 俺様は肩を揺らして豪快に笑った。


「うわー、よく燃えてる!

 悪い奴らを退治するのって気持ちいいな。

 この仕事、好きだわ。

 俺、向いてるかも」


 そのさまを、冒険者たちは声もなく凝視していた。

 自分たちに首輪をつけようとした連中が黒焦げになっていく。

 それは、じつにありがたい。

 だがしかし、今、一面に広がる業火が、自分にいつ降りかかるかもわからない。

 そう思うと、気が気ではなかった。


 信じられない光景に目を見張っていたのは、彼ら冒険者たちだけではなかった。

 燃えさかる奴隷商人たちの背後にあって、地縛魔法を広域展開させていた魔術師団の連中たちも同様であった。


「な……い、一瞬で!」


「ほ、炎を……雷撃と同時に発射するだと!?」


「こ、コイツ、禁断の魔法を……!?」


 彼らは専門家だけあって、俺様の魔法の凄まじさを瞬時に見抜いた。


 だが、彼らは諦めなかった。

 ここで、押し負けたら、魔術師として終わりだ。

 相手は、冒険者の魔術師職にすぎない。

 宮廷魔術師団として、退()くわけにはいかない。


 魔術師団のリーダー格の女が甲高い声をあげた。


(ひる)むな!

 仕掛ける隙を与えるな!」


 騎士団には魔法杖が現在、二本ある。

 銀色の杖と黒色の杖だ。

 この二本の魔法杖で、俺様の攻撃魔法を防御して、即座に騎士団、魔術師団のメンバーを治癒・回復させるーー。

 そうい腹づもりなのだろう。

 ーーああ、そう言えば、あの二本の杖も攻撃魔法を使えるんだっけ?

 たしか、スカイムーンが言ってたな。

 あの二本は黄金杖の劣化版だって。


 だが、さすがの魔法杖も、使う隙を与えなければ、単なる棒切れだ。

 俺様は黄金杖を掲げ、さらに大声を張り上げた。


「吹き荒れろ、〈雷炎〉! 〈火炎〉! 〈雷撃〉! 〈暴風〉!」


 稲妻が轟き、炎が渦巻く。

 一瞬で、目前の騎士どもや魔術師どもが消し飛んでいく。


 禁断の攻撃魔法のオンパレードだ。


 見たか! 俺様の魔法能力を。


(ようやくだ!)


 俺は興奮して、全身を震わせる。


 罠の全貌が明らかとなって、ようやく黒幕どもが正面から姿を現わしてきた。

 ここに至って、ようやく、俺様、〈魔術師マサムネ〉に秘められていた真の大魔力を見せつけることができるぜ!

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