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◆25 疑ってばかりじゃなく、感謝しなくちゃ!

 俺、東堂正宗とうどうまさむねは、今、異世界で冒険者として野党狩りに参加させられている。

 ほとんど味方に嵌められた状況での戦闘行為であったが、野盗を叩かないことには、自分の生命が危うい。

 幸い、攻撃魔法を駆使するグループに属しているので、リーダーが手にする魔法杖の力で攻撃系魔法を使うことができた。


 そして、今ーー。


 リーダーであるスカイムーンの掛け声とともに、攻撃組は散開した。

 それぞれ、目についた敵を迎撃するために動き出したのだ。


 馬を与えられた冒険者は、当然、手綱を握り、馬上から迎撃する。

 反対に、野盗は近距離まで接近すると下馬し、地を駆け、低い位置から襲ってきた。


 野盗どもは、鎌のような武器や、鎖のような武具を使ってくる。

 馬の脚を(から)め取って、冒険者を馬上から落馬させようという狙いだ。

 いかにも野盗っぽい戦い方である。


「ええい、鬱陶しい!」


「降りるぞ、俺は!」


「おおっ!」


 自ら下馬して剣を振るう冒険者が続出した。

 冒険者は、騎士のように騎乗での戦いに慣れていない。

 そもそも武器が馬上で使うには適してない仕様ばかりだった。


 馬を支給された結果、かえって陣形が乱れ、混戦状態になってしまった。

 俺も当然の如く下馬して、舌打ちする。


「このメチャクチャさーー。

 まさか、騎士団のヤツら、わざと野盗相手に苦戦するように、冒険者(俺たち)を仕向けたんじゃねえのか?」


 俺の苛立った声を聞き取ったのだろう。

 俺のすぐ間近で、スカイムーンが騎馬したまま野盗を蹴散らしつつ笑った。


「さすがに、それはないよ。

 騎士団にしてみれば、騎馬で存分に戦えるよう、サービスしてやったつもりだろうよ、きっと。

 ーーもっとも、貴族だろうと平民だろうと、男だったら誰もが乗馬したがるものと、騎士団のお偉方は勘違いしてるけどね。

 彼らは冒険者の普段の生活ってのを知らないのさ」


 魔物や魔獣の討伐だけじゃない。

 商隊の護衛や、大店の用心棒、果ては失せ物探しやドブさらいまでーー依頼があれば何でもこなすのが冒険者である。

 爵位を持つ貴族にとっては、ほとんどが下男下女、もしくは執事や侍女にやらせることを生業(なりわい)としているのだから、冒険者の実態を知らなくて当然だ。


 だから、貴族位である騎士からすれば、平民が主体の冒険者たちに馬を貸し与えるのは褒賞とすらいえる。

 さらには魔法杖を貸し与え、魔法の使用許可まで出したのだ。


 スカイムーンは駒を寄せ、馬上から俺に語りかける。


「騎士団のおかげで、冒険者たちでも、こうして魔法が使えるんだ。

 疑ってばかりじゃなく、感謝しなくちゃ!」


 スカイムーンは俺や他の冒険者たちと違い、馬から降りるつもりはないらしい。

 実際、慣れた手綱捌きをしている。

 そんな彼の姿を見上げながら、俺は不貞腐れた。


「そりゃあ、そうだけどな。

 わかっちゃいるんだ、そんなこたぁ……」


 バレッタ王国では本来、魔法を自由に使えるのは、能力以前に身分が関係する。

 騎士団に所属する魔術師団員の他は、高位貴族に限定される(らしい)。

 だから、平民が大半である冒険者パーティーに魔法杖を貸し与え、潜在能力を引き出して魔法を使って良いと許可することは、破格の扱いといえた。


(日本で言えば、警察に捜査協力した報奨として、拳銃を撃たせてもらえる、みたいなことかな? そんなこと、あり得ないんだけど……)


 実際、魔法の使用許可によって、冒険者たちは活気付いていた。


 周囲を見渡せば、冒険者たちは嬉々として魔法を駆使している。

 戦い慣れた野盗どもを相手に苦戦してはいるが、善戦している。


(おお、リーリアもやるじゃねえか!)


 彼女はいまだ馬上にあって、両手から炎を発していた。

 威力はかなりのもの。

 一回火が放たれるたびに、二、三人は焼き殺している。

 さすがに〈殺人〉の前歴があるだけある。

 殺しにためらいがない。


 だが、彼女の炎は、俺が放つ稲妻攻撃の威力には及ばない。

 攻撃魔法の威力は、各人が持つ魔力量によって決定しているからだ。


 唯一、俺に対抗できるほどの魔力を持つのはーー。


 ゴオオオオ!


 身体が浮き立つほどの熱気と爆風。

 その只中にいるのは、黄金杖を持つ男ーースカイムーンであった。

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