◆14 夢のワールドだね。無料(タダ)で、テーマパークに来ちゃった!?
ボロアパートのような社屋の地下に、広大な地下空間が展開している。
しかも、そこは〈異世界〉からの来訪者たちが大勢集まって、食事を楽しむ大食堂だったーー。
そんな信じ難い光景を目にして、求職者たちにパニックにでもなられたらどうしたものかと星野兄妹は正直、思っていた。
とはいえ、わが社のありようを一発で理解するためには、この大食堂に案内するのが手っ取り早い。
だから、〈百聞は一見に如かず〉の精神で、東堂正宗と白鳥雛の二人を、地下の大食堂に招き入れた。
結果は上々。
彼らは素直に、食堂に集まった〈異世界〉からの来訪者たちの多様な姿を楽しんでいた。
求職者二人は、これで第一関門をクリアしたといえる。
二人にいくら性格的に難があったとしても、これからわが社で仕事をこなしていくための最低必要条件を満たしていることがわかった。
私たち兄妹は、ここぞとばかりに、異世界との交流状況を説明する。
「わが社はね、こっちから異世界へ人材を送り込むだけじゃない。
異世界からこっちの世界に来るのも、斡旋してるの。
こっちの世界で、異世界の方々がやる仕事ってのも結構あるのよ」
「そうなんだよ。
ほら、事故物件から幽霊を追い出すとか、都市伝説になるほどの禍々(まがまが)しい場所で、何者かと戦ってもらう、とか……」
「ほかにも、疫病対策にも一役買ってもらったり、戦場に戦力として投入したり……。
ああ、こういったのは、たいがいが国の依頼ね。
私たちには、あまり関係ないわ」
「うん。わが社は斡旋まではするけど、異世界の人たちの管理は、元いた異世界の人たちや組織がやってるから。
こっちの世界の私たちは、基本、ノータッチなんだ……」
自分たちの仕事を、色々と紹介しようとしたが、求職者の二人は、私たちの説明に興味を示さない。
彼らの目は、食物に群がる〈異世界の住人たち〉の姿に、釘づけであった。
「それにしても、すごい光景だな!」
東堂正宗は、リザードマンたちが肉を頬張るさまを、一心不乱に見つめていた。
リザードマンの尻尾が床を叩く音にあわせて、リズムをとって、足を踏み鳴らしている。
「あ! あの人、超カッコ良くね!?」
一方、女性求職者の白鳥雛さんは、ワイン・グラスを傾けるイケメン吸血鬼の紳士に、視線が釘づけのようだ。
やがてリズムを取るのをやめた正宗が、ポッケからスマホを取り出し、
「地下食堂、撮ってもいいスか?」
と、私、星野ひかりに訊いてきた。
なるほど。
たしかに、こんな非日常な世界を垣間見たら、記念に撮っておきたくもなるでしょう。
トカゲや鬼、吸血鬼みたいな化け物が、一緒に飲み食いしている現場なんだから。
ーーでも。
「無駄ですよ」
「なんで?」
食い気味に問いかける正宗くんに向かって、私は自らのスマホを手にして説明した。
「異世界から来た人々は、霊波をまとっているの。
別の世界での生体条件を維持するための働きね。
その霊波が邪魔して……ほら!」
スマホで写真を撮ってみせる。
覗き込むと、靄がかかった幽霊写真みたいな映りをしている。
異世界生物を撮影しようにも、どうしてもこうしたぼやけた映像しか撮れないのだ。
私は自分で映像確認をしたあと、画面を二人に見せた。
正宗は、スマホ画面を、食い入るように見つめる。
それから、自分のスマホをポッケから取り出し、彼自身の手で動画も撮ってみる。
そして、その成果を自分で確認してみた。
やはり、ボヤけて、なにも映らない。
それでも、彼は諦めの悪い性格をしているらしい。
スマホを片手に、敬礼するような仕草をした。
「映りが悪いのは、了解した。
でも、勝手に撮らせてもらう!」
私は、「どうぞ」と返答した。
「いずれ、画像処理して、よく見えるようにできるはず。
そしたら、宇宙レベルのスクープだ!」
ほんとうにしつこい性格のようで、正宗くんは陽気な声をあげていた。




