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◆50 大魔法使いヒナの智謀?

 男爵家子息アレックは、ターニャ王女の寝室に潜んで、寝込みを襲い、既成事実を作り上げて強引に婚約者になろうと(たくら)んでいた。

 だが、正当な婚約者である公爵家子息レオナルドに、その企みが露見し、王女からは嫌われてしまった。

 かくなるうえは、決闘によってレオナルドを討ち果たし、王女を()(さら)うまでーー。


 王女の寝室で、アレックは剣を構え、叫んだ。


「俺は、ドロレス王権代理を、味方に引きれてるんだ。

 レオナルド、貴様を殺しさえすれば、解決する。

 姫の寝室に入り込んだ悪漢を成敗した、という筋書きにしてもらう。

 そうすれば、俺様は晴れて王女の婚約者となって、いずれは王に即位してみせよう!」


 レオナルドは呆れて首を振ってから、低い声を出した。


「愚かな男だな。君は。

 そんなことをしても、ターニャ王女殿下の御心は奪えないぞ!」

「黙れ!

 こっちには、王妃ドロレス様と魔法使いヒナがついているんだ。

 貴様を殺して、二人に俺の潔白の証人になってもらうさ。

 誰も文句のつけようがないだろう」


 この発言には、レオナルドばかりでなく、ターニャ姫も顔色を変えた。

 ここでヒナの名前が出て来るとは、思いもしなかったからだ。


「王妃(義母)はあなたの味方でしょうけど、ヒナさんは違います。

 私はヒナさんのお言葉によって、レオナルド様と結ばれることになったのですから」

「なに!? そんな馬鹿な。

 あの魔法使いは、俺にメロメロだ。

 どうとでも操れる、俺の駒だ」


 レオナルドはしばらく思案した後、得心(とくしん)が入ったように、頭を縦に振った。


「今、わかったよ、アレック。

 君がこのような場所で、無様に身を(さら)すに至ったわけを。

 そうか。すべてヒナさんのおかげだったんだ。

 君のその口振りからすると、ヒナさんを信じてこの場にやって来たのだろう?

 残念だったな。

 彼女は君がーーいや、僕らが想像していたよりも、ずっと優秀なーー頭の切れる護衛役だったんだ。

 たんに敵からの襲撃を防ぐばかりではなく、水面下で(うごめ)く悪党を引き()り出して、白日の下に(さら)してしまうとはね」


「な、なんだと。あのバカ女が!?

 俺を引き摺り出しただと?

 違う。アレはすっかり俺にのぼせて、今も俺がやって来るのを居酒屋で待っているーー」


 ターニャ姫は真面目な顔で、話を引き継ぐ。


「異世界から父王様(おとうさま)がわざわざお招きくださった女性が、貴方のような男性に(なび)くと、本気でお思いになって?」


「そ、そんなーーあれが演技だというのか!?

 信じられぬ。いつからだ。

 いつから俺は、あのオンナに出し抜かれたんだ!?」


 アレックは、不意をつかれた思いがした。

 胸にキリを刺されたように痛んだ。


「この俺がずっと、あのバカ女に騙されていたというのか?」


 じつはアレックにも、思い当たることがあった。


(そういえば、俺の居場所がわかるとかいう魔法をかけていやがった……)


「これをご覧になって」


 ターニャ姫は、ヒナが預けた魔法の指輪を見せる。


「宝石商を名乗る貴方でも、おそらく初めて見るモノでしょう。

 魔力が込められた魔石が()められているのですけど、恐ろしいほど多機能なの。

 防御魔法のみならず、通信機能もついているんです」


「通信機能?」


「ヒナさんが耳にする音声と、目にした映像が、ことごとく〈ナノマシン〉という精霊によって、この指輪に伝えられてたの。

 この指輪を嵌めていた私には、すべてが筒抜けだったのよ。

 望めば好きな場面が、頭の中で音声と共に映し出されたわ。

 こうして、映像を空中に映し出すこともできるのよ」


 ターニャ姫が紫に光る指輪を掲げると、空中に様々な映像が映し出された。

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