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◆48 こんな時こそ、お酒をガブ飲みできたらいいのに……

 魔法使いヒナは、再び魔法を駆使した。

 今度は〈転移〉魔法を使って、ナイトクラブに舞い戻ったのである。


 彼女の推しであるアレックの要望に従い、ひとまずは身を退いて、時間を潰した後、再びターニャ王女の居室へと向かうためであった。


 数分後ーー。


 いきなり店内にヒナが現れたので、ブラックウルフの店長をはじめ、居合わせた客と店員すべてが、顎を(はず)さんばかりに驚いた。


「こ、これはヒナ様。

 先程は空を飛んだかと思いましたら、今度は突然ーー」


 店長は驚愕の態で喉を震わせ、恐る恐るメニューを差し出す。

 そんな店長に対し、ヒナはカウンター席に腰を下ろすと、上機嫌な声をあげた。


「店長、(ナマ)一本!

 ーーって、ここは居酒屋かよ!(独りボケに、独りツッコミ)

 もう、なんでもいいから、お酒をジャンジャン持ってきて。

 ワタシの()しが、オトコになろうってんだから、祝杯をあげなきゃ!」


「はぁ……」


 当惑とともに立ち去る店長を見送ることなく、ヒナは木製の杯を高々と掲げ、エールをガブガブと豪快に飲み干していく。


 アレックが護衛対象であるターニャ王女殿下を待ち伏せして襲おうとしているーー。

 それをなかば承知の上で、ヒナは彼を放置したのであった。


◇◇◇


 一方、〈魔法使いヒナ〉の行動を、モニターで監視していた東京異世界派遣本部ではーー。


 星野ひかりが、モニターを見据えて絶叫していた。


「なんでよ!?

 なんでオトコを追い払わないで、自分が身を退くのよ。

 お姫様が危ないんだよ!?

 アンタは護衛役の魔法使いなんじゃないの!?」


 彼女の両隣で、兄の新一と東堂正宗が、げんなりしていた。


 ナノマシンからのモニター映像は見られるものの、向こう側で通信を切られては、交信できない。一切手出しできなくなる。


「これ、一歩間違えれば犯罪だよね」


 新一が呆れた声で言った。


「一歩間違えなくても、明らかに、確実に犯罪だ」


 正宗は断言した。

 以降、それぞれが、思っている不安を口にした。


「賠償金は覚悟しないと……」


「賠償金で済めばいいけど……」


「一国のお姫様の貞操だぞ」


「……まさか、ヒナちゃんが、マサムネ君よりも危険な人物だとは思わなかった」


 新一の正直な内心の吐露を耳にして、正宗は憤慨した。


「なに言ってんの!?

 そんなの、はじめっから、わかってるだろ。

 アレは俺様と違って、バカなんだぞ!

 すぐに、オトコの言いなりになるホスト狂いだ」


 ひかりが()りなすように、男二人の間に割り込んだ。


「ヒナさん、それさえなければ、悪い人じゃないんだけどね。

 本当に、困ったわ……」


 今後のことを考えると、後味の悪い展開しか、思い浮かばない。

 それでも、三人は暗い表情で、モニターを眺めるしかない。

 こんな時こそ、ヒナのように、お酒をガブ飲みできたらいいのにと、星野兄妹も、正宗も思っていた。

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