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5.男子大学生の僕、女子高校生と遭遇する

 大学の講義が終わり、時刻は大体午後四時ほど。特に帰っても用事はないため、少し町に遊びに行くことにした。田舎から上京してきたこともあり、まだまだ物珍しいものはたくさんある。そのためたまに観光と買い物がてら探検する。それに地元の友達が来た時に観光案内をできるようにしておきたいし。


「本当に都会は電車でどこでもいけるからいいな。それに何本も走っているし。地元は良い時間帯で三十分に一本だもんな」


 一応地元で車の免許は取得しているが、電車だけで十分だ。車は維持費がかかるし、特別運転が好きというわけではない僕には必要のないものだ。


「今日はどこ行こうかな」


 何か欲しいものがあったか考える。あ、そういえば集めている漫画の新刊が今日発売だった気がする。

 スマホで調べるとどうやら近くに大きな本屋があるみたいだ。


「そこに行ってみるか」


 スマホの地図を頼りに本屋まで向かう。

 下校の時間帯なのか制服姿の子たちが多くみられる。そういえば高校生の時は学校の帰りに友達とゲームセンターや服屋に行くのに憧れていたな。帰り道に遊び場なんて公園とかしかなかったからな。


「ここか。本屋だけで六階建てとかすごいな」


 店内にあった地図を確認すると一階はメジャーな本や雑誌が置かれており、二階は子供向けの絵本コーナー、三階は新書コーナー、四階は恋愛やミステリーなどの文庫本コーナー、五階は漫画コーナー、六階はライトノベルコーナーだ。

 僕の用事があるのは五階以上のようだ。エレベーターで五階に上がる。


「すごい品揃えだな」


 メジャーなものからマニアックのものまで揃えられている。これからもこの本屋さんにはお世話になりそうだ。


「あったあった」


 お目当てのバトル漫画を見つけることができた。ついでにライトノベルコーナーも見に行こうかな。


「なんだこの本は」


 新刊コーナーで一つの本が目に留まって手に取る。あらすじを見ると、お金持ちの年上女性と男子大学生のラブコメのようだ。本についてある挿絵を見た感じ、少しえっちなシーンがありそうだ。


「面白そうだし買ってみよう」


 一階に降りてレジに向かう。


「ブックカバーはつけられますか?」

「大丈夫です」


 中学生の時はエッチなタイトルのライトノベルを買うとき、恥ずかしくてブックカバーをつけてもらっていたな。今はもう買うことにもなれたし、どっちみち本棚に置くときは外すためもうつけない。


「さて、お目当てのものは買ったし早速部屋に戻って読もうかな」


 本をカバンにしまって店を出ようとしたときだった。


「あれ、香西さんですか?」

「え?」


 振り向くと制服姿の女子高生三人が立っていた。二人は知らないが最近よく見る人物が一人。


「井上さんどうしてここに?」

「学校が終わって友達と参考書を見に来てたんです。香西さんこそどうしてここに?」

「僕は漫画を買いに来たんだ。今日が新刊の発売日で」

「ああ、そういえば漫画が好きって言ってましたね。今度また読ませてください!」

「いいけど、また僕の部屋に来る気満々だね…」

「はいもちろん!また作りすぎちゃう気がするので」

「あはは…」


「作りすぎちゃう気がする」ってなんだよと苦笑いする。ふと井上さんの後ろにいる二人の女子高生のほうを見ると首をかしげていた。


「ねえ琴美知り合い?」

「うん!私が住んでいるマンションの隣に住んでるんだ」

「ことっちどういう関係なの?さっきの会話を聞いた感じただのお隣さんじゃないでしょ」

「いやえっとそれは…」


 二人に詰められて井上さんが「あわわわ」と混乱してしまっている。だいぶ井上さんからの陽キャなんだろなというオーラにも慣れてきていたが、こう三人も集まるとクラスにいる陽キャグループ感がすごい。どちらかというと陰な学生生活を過ごして僕にはまぶしすぎる。


「お兄さんって大学生ですか?」

「う、うん大学一年生」

「やっぱり年上だ。もしかして琴美の彼氏ですかー?」

「ちょ(りん)、何言ってるの!?」


 やべえ怖い。中学校・高校の六年間を通してクラスの陽キャ女子たちに何回も絡まれたことがある。それは同学年に限らず学年が下の人からもあった。その体験が脳に刻まれており、フラッシュバックしてくる。

 だがもう僕は大学生だ。こういう時でも冷静に対処できてこそ大人というものだ。


「はは、彼氏じゃないよ。ただ隣の部屋っていうだけだよ。この前料理をおすそ分けしていただいたんだ」

「なんだーことっちと付き合ってないのか」

「じゃあお兄さん大学とかに彼女いないの?」


 うわーこの質問も何回も言われてきた。これで毎回彼女がいないって言ったら笑ってくるんだ。いいじゃん別に彼女いなくて。

 正直に言うと答えたくないが三人とも目をキラキラさせながらみてくる。せめて井上さんは僕の身方についてほしかった。


「生憎そう言った出会いはありませんね」

「えー嘘、お兄さんイケメンなのに。じゃあ私とつ―――」


 女の子が何か言おうとしたが井上さんが後ろから片手で口を塞いだ。


「じゃあ私が彼女にり―――」


 もう一人の女の子も何か言おうとしたが井上さんが逆の手で口を塞いだ。井上さんのほうを見ると心なしか顔が怖く見える。目に光が無いというかなんというか。


「香西さんごめんなさい。この二人に急な用事ができたので先に帰りますね」

「え、あ、うん」


 二人の口を塞いで引きずりながら井上さんは帰っていった。二人は僕に向かって叫んでいるが口を塞がれているため何を言っているのかわからない。手を伸ばしてくるか井上さんが怖いので無視した。


 



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