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2.男子大学生の僕、女子高校生にお礼を言われる

「本当に娘を救っていただきありがとうございました」

「そんな、あたまを上げてください!」


 今日はゴールデンウイーク明けで講義が始まるのだが、僕はいろいろとしないといけないことができたため大学を休んでいる。教授に事情を説明したメールを送ると、特別措置として出席扱いにしてくれた。

 そんな僕は改めて事件の説明などをしてほしいと言われて警察署にきていた。そしたらあの女の子の両親が来ており頭を下げられている。


「あなたが駆けつけてくださってなかったら娘はどうなっていたか」

「偶然ですよ。それより娘さんが無事で何よりです」

「心が広いお方なんですね。娘の方からもお礼を言わせたいのですが少し気を病んでおりまして…」


 一人暮らしでいきなり知らない男が部屋に入ってきて押し倒されたのだ。気が病んでしまうのも仕方がない。


「改めてお礼に参らせるので…」

「いえいえお気遣いなさらず。はやく元気になるといいですね」


 それから僕はやらないといけないことをすべて終わらして部屋に戻ることにした。


「あ、あの!」

「はい?」


 警察署から出ると横から声をかけられた。声がした方へ視線を向けると女の子が立っていた。

 髪は肩にかからないぐらいのボブで、少しだけ茶色っぽい。身長は僕より二回りぐらい小さい百五十五センチぐらい。アイドルや女優顔負けの容姿をしている。

 少しこわばっておりどこか緊張している気がする。


「どうしましたか?」

「その…昨日は助けていただいてありがとうございました!」

「あっ」


 どこか見覚えのある顔だが誰だろうと考えていたが、女の子の言葉で思い出した。昨日助けた隣の部屋の女の子だ。「娘の方からも改めてお礼に参らせる」と言っていたがこんなに早くとは想像していなかった。


「やっぱりどうしてもお礼を言いたくて…」

「いえいえ。もう大丈夫なんですか?」

「はい、助けてくださったおかげで怪我などはしていません」

「それは良かった」


 年頃の女の子だし、一生残ってしまうような傷がついてしまっていたらどうしようと思っていたが一安心だ。心の傷は今も残っているだろうが、時間が解決してくれることを祈る。


「それより今は私じゃなくてあなたの方です。その鼻につけているガーゼって…」

「ああ、こんなの大したことありませんよ」


 昨日、男と取っ組み合いになったときに顔の鼻らへんを殴られた。そのとき怪我してしまったらしい。しかし病院でも特に大きな問題はないと診断されたし大丈夫だ。

 ふと女の子の表情を見ると涙を浮かべていた。そんな顔しないでよ、本当に大丈夫だから。

 

「泣かないでください。自分がやろうと決めて行ったことでついた怪我なんだからあなたの責任じゃないですよ。それに悪いのはあの男なんだから。君は僕の怪我を自分のせいだと思っちゃだめです」

「…本当にありがとうございます」


 浮かべた涙があふれて流れてしまっている。僕はハンカチを取り出して渡す。


「そういえば自己紹介がまだでしたね。僕の名前は香西陽人です。あなたの名前は?」

「井上琴美です。このご恩はいつかお返しします」


 井上さんは僕から受け取ったハンカチで涙を拭きながらそう言った。


「ご恩って、はは」

「なんで笑うんですか?」

「ごめんさない。「このご恩はいつかお返しします」って言われること現実であるんだなと思って」

「私は真剣に言ったのに…」


 なんだか和んでお互いに笑いあった。そのあと車で待機していたご両親が迎えに来てお別れした。井上さんの笑顔を見て、心からあのとき男に立ち向かって良かったと思った。

 

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