プロローグ
入院中の息抜きに書くので不定期更新かつ退院後にエタる可能性があります。それでも構わないと言う方はどうぞ。
思えば、その日は何かと想定外続きだった。親友が珍しく遅れて来たり、予報外の雨が降ったり、下駄箱に手紙が入っていたり……。イレギュラーが続いていた時点で気付くべきだったのだろうか。何か良くないことが起こるだろうと。
私たちの前で両膝をつき、祈るように俯く聖職者らしき女性。
「お願いです、どうかこの世界をお救いください……」
こうして私たち星華高校3年1組、総勢32名のいつも通りの日常は、儚くも脆く崩れ去ったのであった。
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私は星野優香。どこにでもいる一般家庭の娘……とは言えないが、ごく普通の高校生生活を送っていた。
私の家は古くから伝わる刀鍛冶の家系であり、そこの一人娘として両親も祖父母も、そして何より私自身が家業を継ぐつもりで修行をしていた。
刀鍛冶とはいえ、最近は包丁や鋏などの家庭で使う刃物の修理や研ぎ直しがメインだが、祖父の「良い刀鍛冶であるためには良い刀の使い手であれ」という教えの下、刀の使い方についても厳しく稽古をつけてもらっていた。
厳しい指導のおかげか、高校生3年生に上がる頃には鍛治仕事だけでなく、様々な刃物の扱いに関しても祖父のお墨付きを貰えるほどにまで成長することができた。
このまま卒業して、親友と静かに地元で暮らしていこう……そう思っていた矢先の出来事だった。
いつも遅刻ギリギリの翔太が珍しく時間に余裕を持って登校していて、珍しく私の下駄箱に手紙が入っていて、親友の有希が珍しく遅刻ギリギリで、「なんだか今日は珍しいことが起こるなぁ」と思っていたら。
教室の床を埋める程の巨大な魔法陣?のようなものが現れ、強い光を放ったかと思うと、私たちは見たこともない豪華絢爛な大広間の中心に放り出されていた。