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エンド・コンテンツ  作者: 裏駅の住人
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6話



「お、いたいた」

「クラゲー」


料理を待っているとヴェイグとフィーが店に入ってきた。

フィーは俺の頭の上に乗って来た。

そして正面に座っている人物に気付いたのだろう。


「おはようございます、ネリザ教官」

「あぁ、おはよう」

「珍しいっすね、案内ですか?」

「そうだ」


不思議と昨日の様な緊張感は無かった。

昨日一緒の時はあんなにガチガチだったのに。


「昨日は仕事中だったからな」

「査定もあったからね」


ヴェイグが苦笑しながら隣の席に座る。

フィーは相変わらず俺の頭の上に乗っている。

随分懐かれたもんだ。


「今日の探索だが、北の遺跡を探索する」

「北っすか?」

「あぁ、これまでの調査で周辺の魔物の量が多くなっていることが分かっている。以前のスタンピードの資料を見てみたが、スタンピードが起こる前にも同じような現象が見られている」

「ってことは…」

「もうすぐスタンピードが起きちゃうの?」


話についていけていないが、2人とも真剣な顔つきになっているから、深刻な事態なのかもしれない。


「あくまで可能性の話だ。まだ確定ではない」

「じゃあ今回の探索はそれを?」

「あぁ、はっきりさせておきたい」

「他の場所の方はどうするの?」

「他の連中に依頼出す」

「ま、それしかないよねー」


のんびり話を聞きながら料理を待つ。

今目の前でリザードマンとエルフと妖精が話し合っているわけだが、本当に異世界に来ているんだなと実感する。


「はーい、お待ちー」


うん、ついに来たか。

あえて意識しない様にしていたが、もう無理なようだ。

まぁ、ネリザさんはさっき量も多くて味もいいといってたしな。


「はい、サンドイッチとコーヒーだよー」


相変わらず不自然なバランスで皿を重ねて持ってくる。

机に並べられた料理は、先ほどまでの心配がなくなるぐらい美味そうに見えた。

コーヒーの芳しい香りを楽しみながらサンドイッチを眺める。

見た目は普通のサンドイッチだが油断できない。

何しろここは異世界。

何処に罠があるかも分からないからな。


「2人はサンドイッチかぁ、じゃあ僕も」

「んじゃ俺も。ナフォーさん、サンドイッチとコーヒー2つ」

「あ、僕はコーヒーいらない!」

「サンドイッチ2つとコーヒー1つ、後水で」

「はいはーい、待っててねー」


ナフォさんはメモも取らずに戻って行く。

机に並べられたサンドイッチは実に美味そうな香りが漂っていた。

程よい焼き目のついたブレットに、野菜、肉、チーズ、そして赤いソース。

うん、美味そうではある。

赤いソースが気になりはするが。

結構ボリュームがあるので、一気にかぶりつく。


(うんめ〜)


ふっわふわのブレットにしゃきしゃきの野菜、肉もかぶりついた途端肉汁が溢れて、それがチーズと甘辛いソースが良いアクセントになっている。

コーヒーも深い香りと程よい酸味、ガツンとくる苦味が実に美味い。

昨日は結局何も食べていなかったので、それも相まって物凄く美味しく感じる。

ゆっくり食べながら先程の話で気になった事を質問する。


「さっき話してたスタンピードって?」

「そうか、知らないか」

「えー、スタンピードも知らないって、本当何処から来たのさ」

「彼は異世界の住人だ、知らないのも無理はない」

「異世界ねぇ。ってことは魔物なんかも見たことはねぇのか」

「あぁ、ないな」


そんなに当たり前の常識なんだろうか。

「スタンピードは簡単に言うと、魔物の大群がこの街に向かって襲いくる事だ」

「…それって大丈夫なんですか?」

「全く」


おいおい、結構やばいんじゃないのか?

イソギンさん、初期のイベントにしてはヘビーじゃないですか。


「今すぐスタンピードが起こるわけではない。そこまで心配する必要もない。魔物も冒険者に依頼出して間引いてもらっているしな」

「そうなんですか」

「それにスタンピードは悪いことばかりではない。メリットもある」

「メリット?」

「資源が豊富に採れる。魔素も循環するから大地も活性化する」

「魔素?」


おっと、新しいワードだ。

魔法は分かるが魔素ってのはなんだ。

魔法と違うんだろうが、循環して大地も活性化?


「順番に説明するか。既にクラゲも知っての通りこの世界には魔法が存在する」

「ええ」

「その魔法を扱うために必要な要素がいくつかあるのだが、その一つに魔素と呼ばれる元素がある」

「魔素、ですか」


おいおい、ファンタジーな話かと思っていたが、何処か化学じみた話だな。

元素とか、ひたすら暗記した苦い記憶しかない。


「魔素は体の中のものと、外に存在しているもの、2種類あると思っておいてくれ。それを利用して現象を起こしているものが魔法だ」

「はぁ」

「さて、この魔素だが一説では魔物が発生する要因として考えられている。魔素の濃い場所では魔物が発生しやすい。特にダンジョンなんかは魔素が集まりやすく、魔物が大量発生しやすい、といった感じにな」

「もしかしてその大量発生でスタンピードが?」

「そうだ、ダンジョンも無限に魔物を収容出来るわけではない。大量発生すればダンジョンで溢れた魔物が外に出てくる。魔物は魔素の多い場所を好む。そして、ダンジョンの次に魔素の多い場所は」

「この街って事ですか」

「そうなる」


なるほどねぇ。

だから冒険者に間引いてもらうのか。

でないと魔物が溢れてしまうから。


「まぁ一ヶ所魔物が溢れる程度なら問題ないんだがな」

「フリーランってダンジョンに囲まれてるからねぇ」

「囲まれてるって」

「北のノヴェル遺跡、西のバーボン湿地林、東のウルドの森、南のミトス古戦場跡地、これら4ヶ所それぞれにダンジョンが存在している」

「もしかして4ヶ所一斉に?」

「以前のスタンピードではそうだった。何とか守り抜いたが、それでも相当の被害が出てしまった。だからこそ今回はなるべく被害が出ない様事前に調査している訳だ」

「成る程」


そんな状態でよく守り抜いたものだ。

東西南北全てから魔物の大群とか、どんな悪夢だよ。

冗談じゃない。


「そういう訳でこの後2人には調査に向かってもらう。クラゲは私と一緒に魔法の練習だ」

「分かりました」


やれやれ、のんびり異世界を楽しむ余裕はなさそうだ。


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