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意地悪な神様

作者: 依依奇縁

 私は生まれつき、体の左半身に痣があった。頭の先から足の爪先にかけての大きな痣。この痣というのがあまりにも痛々しく見えるものだから、小さい頃から化け物だの悪魔だのと言われ続けた。その度に私は泣きじゃくり、自らの体を鏡で見てはそれを憎み、痣を掻き毟った。掻き毟る度、痣は酷くなっていく。もっと醜く、汚くなっていく。

 私はそれが面白かった。


 中学生の頃、水泳の授業があった。皆が私の体を見る、スクール水着でも隠し切れない私の体を凝視する。そして皆が同じ顔をする、憐れみの視線を私に向けて皆が私を避けた。

 それ以来、私は水泳の授業に出るのを辞めた。


「……なんで私はこんな体なんだろう」


 もしもこの世に生まれる子供の見た目を神様という存在が決めているとしたら、これが神様の気まぐれだとしたら、なんと意地悪な神様なんだろうか。そんな神様、私は嫌いだ。


 本来の肌の色と違う左手に目を向ける。私は色白なのに左半身は茶色い、日焼けだと思えば気は楽かもしれない。しかし私はこの体とはもう長い付き合いだ、そう思えるはずがない。



 高校生になった。そして私はここでメイクというものを覚えた。顔に様々なものをつけて、見た目を誤魔化す。左腕には包帯を巻き、足は真夏だろうとタイツを履いて隠した。こうして私のインパクトは左腕の包帯だけとなった。

 最初の頃はいろんな人に包帯のことを訊かれたが、リスカをしているという自虐で誤魔化した。今の時代、リスカをしている高校生は多いらしい。だからなのか私がそう言ってしまえば、だれも気にしなくなっていった。


 ___その感覚は新鮮で、妙に気持ちよかった。



 醜い私は綺麗になっていく。メイクの技術もどんどん上がって、メイクで見た目を隠していくと私の中の『本当の私』も仮面をかぶる。



 大人になった私の周りにいる人たちは本当の私を知らない。今の私は偽物。

 そんな私はいつしかモデルになっていた。様々な雑誌からオファーが来る人気モデルになった私は知らないうちに自分でも『自分自身』が分からなくなっていた。


 鏡に写る自分を見た。そこには痣なんてどこにもない綺麗な私が写っていた。でも、違和感。変。


「今の私は何なの?」


 メイクを覚えただけで有頂天になっていただけ?

 違う違う、今の私は本物?偽物?

 今の私は何なんだ。私は現状に満足しているはずなのに……。鏡に写る私は泣いていた。


「……」


 私は、私は……。


 

 私は、メイクを辞めた。腕の包帯も外して、タイツを履くのも辞めた。そうしたら皆が離れていった。ネットや週刊誌では罵詈雑言の嵐。皆が私に幻滅した。『本当の私』に幻滅した。

 でも不思議と嫌な気分じゃない。むしろ清々しい。これでよかった。もっともっと前からこうしていれば私は私を見失わずに済んだはずなのに……。


 この世に神様がいるとしたら、その神様は少しだけ私に意地悪をしたんだ。でもいい。もう神様を恨むのは辞めよう。


 『本当の私』をしっかり見てくれる人を探せばいいだけなんだ。

あとがき


はじめまして、依依奇縁です。このペンネームを使うのはこの作品が初になります(笑)

人によっては私の正体に早々に気付いているのではないでしょうか。

かなり久しぶりの作品投稿となりました。今まで書いていなかったのではなく、なんというか。ネタはあるのに書き出せない。うまく書けないということが多々ありましてそれのせいです。(適当)

まぁ、そんなことはさておき。

今作はリハビリで書いた即興ものなのでかなり短いものとなっています。文章も拙いですし、人によってはその拙さを不快に思ったかもしれません。これから精進していく所存ですので何卒ご勘弁くださいませ。


さてさて、これからも書きたい時に書いて、書いては投稿するという形になるとは思いますがよろしくお願いします。


連載で新作書きたい……。

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