表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

煽り女子と王子シリーズ

腹黒ドエス王子と別れたい 今から婚約破棄するんですね?大歓迎です

作者: リィズ・ブランディシュカ



 国の中心部。


 王宮で開かれたパーティーの中、私はわくわくしながらその時を待った。


 目の前にいるのは、私の婚約者である王子だ。


「俺は、君との婚約を」


 その婚約者は顔をまっすぐ私を見て、言葉を紡いでいく。


 きっと婚約破棄だ。婚約破棄してくれるのだ。


 思えばここまでくるのに長かった。


 乙女ゲーム世界の主人公、(しかも貴族)に転生した私は、親と家の都合で攻略対象の一人である腹黒ドエス王子と婚約してしまった。

 待っていたのは、性格の悪い彼にちくちく嫌味を言われる日常。

 そんな日々に辟易した私は、彼に婚約破棄してもらうために、色々頑張ってきたのだ。


 その努力が、今日実る。


 さぁ、早く続きを。


 今から婚約破棄するんですね? 大歓迎です。さぁ、さっさとやってください。


「この婚約を維持させてもらう。君がなんと思おうとも、ね」

「えっ?」


 あれ? どうして?







 ここに至るまで私は様々な事をやってきた。


 彼の靴に芋虫を入れておいたり、彼の背中に「私は馬鹿です。貼り紙されていることにも気づきません」と書いた紙を貼り付けたり、彼の持ってきたお菓子を勝手に食べたり、彼のカバンにごみを入れておいたりしてたのに。


 そのたびに彼が「芋虫が可愛そうですよ。あ、これ珍味の虫の佃煮ですけど食べますか?」とか、「紙を無駄にしないでください。執事に怒ってもらいましょうか」とか「おやつ抜きにしてもらうようにご両親にいっておきますね」とか「じゃあ貴方のカバンにもとっておきのゲジゲジ虫を詰めておきましょ「いやぁぁぁそれだけはやめて」」とかドエス顔で言ってきていたのに。


 嫌がられる事ばっかりして、彼のためになる事なんて何一つしてこなかったのに。


 しかもさっきは、彼の幼なじみである悪役令嬢に「私の婚約者に近づかないでっ。でもどうしても用事があったら、私の見てない所で会話しててちょうだい」と醜い嫌がらせもしたのに。


 何で婚約破棄してくれないの!?


 だって貴方、他のご令嬢達から、「あんな女とはさっさと婚約破棄しましょうよ」「その代わりに私と婚約を」って言われてたでしょう?


 なのにどうしてよ。


 おさまりきらないこの苛立ちをぶつけるように地団太を踏んでみた。







 僕の婚約者がまたおかしな事をしている。


 おおかた婚約破棄されなかった事に、イラついているのだろう。


 彼女が僕の事を嫌っているのは分かっていたけれど、僕はそうでもない。


 ずっと婚約者にいてほしいと思っている。


 たまにちょっと「私の婚約者のくせにそんな事もでいないんですのねやーい」「私より背が小さいんですから、貴方ってぜんぜん男らしくないですわね。おチビさんですわ」いやかなりむかつくけど、それでも大事な人である事は変わりない。


 僕は王子であるから、いつも周りには人がいる。


 退屈した事なんてないけれど、でもそれが疲れてしまう時もあるんだ。


 王子にふさわしい顔をして、王子にふさわしい言動で、人と接していなければならない。


 それはとても辛い事だった。


 けれど、婚約者である彼女と一緒にいる時は、無理をしなくてもいい。


 意地っ張りでイジワルで、性格悪くて、小さな事を気にしてしまう、ありのままの自分でいられるから、気持ちが楽なのだ。


 彼女は僕の事、性格悪いといつも言うけれど、そうなってしまうのは彼女のせいなんだけどな。


 僕だって本当は君に優しくしたいのに。


 まあ、そういうわけだから、これからも彼女の婚約者でいようと思う。


 この先何があっても、君の隣に立つ資格を、手放すつもりはない。


「(ぶるっ)なんだか寒気がしますわ。何か嫌な事考えてません?」

「何でもないよ、そういう事言ってると何かやましい事でもあるのかと勘繰りたくなるな」

「そんな事ありませんわよ! 貴方って本当に性格が悪いですわね!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 可愛いそうではなくて、可哀想では?? [一言] サクッと読めて、凄く面白かったです! この2人の日常生活を連載版とかで、読んでみたいです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ