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【完結】人魚は地上で星を見る  作者: 廿楽 亜久
4章 星探し編

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18

 明るい天井。見慣れた光景。


「コーラル?」

「気が付きましたか?」


 その光景に、同じ顔が覗き込む。

 首は繋がっていた。

 触れたいと伸ばす手に力は入らず諦めれば、握り返された手が互いの首へ触れさせられる。


「生きています」「生きてるよ」


 今にも泣きそうな顔で、手に触れる双子は、小さく息を吸う私の言葉を聞き逃さないように、じっと見降ろしていた。

 でも、言葉は何も思い浮かばなくて、頭を巡らせるものの、思い当たるものなんてなかった。


「―― 疲れた」


 結果的に、吐く息と共に漏れ出した囁くような本音を聞いた彼らは、驚いたように目を丸くすると、笑った。


「起きて一番がそれぇ?」

「怠惰の象徴みたいな方ですね」

「なら、寒い。お前たちのせいね」

「ひどい人だ。僕らがその言葉に弱いことを知っていて言うんですから」


 おずおずと大きな体を丸めて、コーラルにくっつくアレクに、クリソも捲れた布団を掛け直すと、少しだけ傍に寄り横になる。

 その様子に、おもしろそうに少し目尻を下げたコーラルに、本当に少しだけ唸るともう一歩だけ擦り寄る。


「少し、疲れました」


 不貞腐れたように口にしたクリソに、喉の奥で笑えば、抗議の代わりだと脇辺りで押し付けてくる頭を掴み撫でる。


「コーラル、倒れて、怖かったんだよ?」


 あの時、精霊の気配がした。魔法に手を貸す生易しいものではなく、星祭に現れたような巨大な精霊の気配。

 そいつが、コーラルを連れて行こうとしていることだけはわかった。

 息をしているのに、目を開けなくて、こうして目を開けて、会話をするまで、生きた心地もしなかった。


「ちゃんと生きてるでしょ」

「ぅん」


 いまだ体温を確かめるように触れるアレクとクリソを拒まず、指で遊ぶように触れ返す。


「それにしても、さすがにふたりの死の否定は、厳しかった……」


 時間として数分かもしれない。

 目に見えているふたつの光、ただそれだけを、途切れさせてはいけない。見失ってはいけない。

 ただそれだけ。

 それ以外は、覚えていない。


「あの後、どうなったの?」

「フフ、ようやくですか。普通、最初に聞くものですよ」

「目の前でお前たちが生きてれば、答えでしょ」


 今起きたというのに、もうすっかり瞼が重くなっていた。


「俺らも、首切られて死んでるんだけどー」


 頬を膨らませ、不貞腐れるような声を上げるアレクと、その頬を突いているコーラルに、クリソは小さく笑う。


「では、僕が寝物語に聞かせますね」


 後で、礼を言わなければいけない人物たちを思いながら、その温度と心地よい声に徐々に瞼も落ちて行った。

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