18
明るい天井。見慣れた光景。
「コーラル?」
「気が付きましたか?」
その光景に、同じ顔が覗き込む。
首は繋がっていた。
触れたいと伸ばす手に力は入らず諦めれば、握り返された手が互いの首へ触れさせられる。
「生きています」「生きてるよ」
今にも泣きそうな顔で、手に触れる双子は、小さく息を吸う私の言葉を聞き逃さないように、じっと見降ろしていた。
でも、言葉は何も思い浮かばなくて、頭を巡らせるものの、思い当たるものなんてなかった。
「―― 疲れた」
結果的に、吐く息と共に漏れ出した囁くような本音を聞いた彼らは、驚いたように目を丸くすると、笑った。
「起きて一番がそれぇ?」
「怠惰の象徴みたいな方ですね」
「なら、寒い。お前たちのせいね」
「ひどい人だ。僕らがその言葉に弱いことを知っていて言うんですから」
おずおずと大きな体を丸めて、コーラルにくっつくアレクに、クリソも捲れた布団を掛け直すと、少しだけ傍に寄り横になる。
その様子に、おもしろそうに少し目尻を下げたコーラルに、本当に少しだけ唸るともう一歩だけ擦り寄る。
「少し、疲れました」
不貞腐れたように口にしたクリソに、喉の奥で笑えば、抗議の代わりだと脇辺りで押し付けてくる頭を掴み撫でる。
「コーラル、倒れて、怖かったんだよ?」
あの時、精霊の気配がした。魔法に手を貸す生易しいものではなく、星祭に現れたような巨大な精霊の気配。
そいつが、コーラルを連れて行こうとしていることだけはわかった。
息をしているのに、目を開けなくて、こうして目を開けて、会話をするまで、生きた心地もしなかった。
「ちゃんと生きてるでしょ」
「ぅん」
いまだ体温を確かめるように触れるアレクとクリソを拒まず、指で遊ぶように触れ返す。
「それにしても、さすがにふたりの死の否定は、厳しかった……」
時間として数分かもしれない。
目に見えているふたつの光、ただそれだけを、途切れさせてはいけない。見失ってはいけない。
ただそれだけ。
それ以外は、覚えていない。
「あの後、どうなったの?」
「フフ、ようやくですか。普通、最初に聞くものですよ」
「目の前でお前たちが生きてれば、答えでしょ」
今起きたというのに、もうすっかり瞼が重くなっていた。
「俺らも、首切られて死んでるんだけどー」
頬を膨らませ、不貞腐れるような声を上げるアレクと、その頬を突いているコーラルに、クリソは小さく笑う。
「では、僕が寝物語に聞かせますね」
後で、礼を言わなければいけない人物たちを思いながら、その温度と心地よい声に徐々に瞼も落ちて行った。




