空母と軽巡なぜかエンタープライズ
タカマガハラ基地を離れ、友軍と会合し辺境の海賊討伐に出発する。合衆国の空母USSエンタープライズを旗艦とする機動部隊と、連合王国の軽巡HMSエンタープライズを旗艦とする、掃討艦隊が今回の相棒になる。
護衛艦という名の軽巡を主幹とする第1護衛艦隊に打撃戦力として、打撃艦するがと航空護衛艦とね、ちくまを加えた臨時編成:辺境方面派遣艦隊が俺たちの部隊名だ。
俺は第1護衛艦隊旗艦の護衛艦ゆきかぜの機関長を務めている。合流し次第エンタープライズ機動群と辺境艦隊第1機動群エンタープライズ戦隊の幹部が集まって作戦を打合せするらしい。
俺は巣に籠っているから関係ないけどな。……ん?誰か来たようだ。
「機関長~相場二等宙佐~艦長がお呼びですよ~」
掌機関長の権藤だな、宙兵曹長の職務にありながらシャバっ気にまみれてやがる。今度、精神注入する必要があるな。
へいへいっと…親分のお呼びに逆らえませんってね。
「あ~なんだ…相場二佐も話し合いに参加するように。ちゃんと制服でだぞ?煙管服で来るんじゃないぞ?」
どうやら、逃げられないようだ。エンタープライズの随伴艦ニューオリンズのハインライン中佐と波動理論で口論して結果飲み屋を壊した件かな?ヨークシャーのドイル中佐の制帽に落書きした件かも?
連合王国や合衆国の宙軍の奴らは、いつも自分たちだけ偉いと俺たちを見下しているからな。
重営倉なんざくそくらえ!俺がやらないとかわいい子分が暴れちまう。部下がやらかすと命令不服従も加わって不名誉処分になるから仕方がない。
つかれた~…連合王国と合衆国がどちらが「エンタープライズ」と呼ばれるかだけで会議を開くとはな。多国籍軍なんだから同じ艦名があっても不思議じゃないはず。
第一、同格の国籍が違う指揮官が集まっているから指揮継承順位を決めるのが先だろ!!って突っ込みたいけど、機関室の暗闇に住み着く俺には無理…目立ちたくない。
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連絡艇に乗って空母エンタープライズに向かう。どうやらうちの司令官が向こうで殴られてけがをしたらしい。
ベタ金のくせになんというか…下士官でもやらないようなもめ事を同盟国の船で起こすのかねぇ?
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合流したポイントで無意味な会合を繰り広げた連合掃討艦隊の打ち合わせが何とか落ち着いていざ出陣
移民開始から300年、目標の星は15年前に発見された居住可能型。
相手の言い分は建国以来5000年、不当に地位を追われ流刑された賠償と謝罪が話し合いの条件だとよ。
全員凶悪事件の指名手配を受けているのにな。…自分たちの犯罪をすべてなかったことにしたうえ軽うざい援助する義務があると言い出しやがった。
居住可能惑星は惜しいが、15年間移民が集まらず放置されてた星だし…むしろ、人口流出で各惑星が移民を必要としている状況だし…惑星ごと吹き飛ばそうって雰囲気になるのは仕方がないだろう。
艦隊は殲滅戦に移る。そう、生きた犯人を一人も残すなという指令と共に。
機関出力が跳ね上がる、どうやら砲雷撃戦が始まったようだ。ジェネレーターが明滅しエネルギーを要求する。機関を調整しつつエネルギーを配分する一味の手下過負荷ではじけ飛ぶ機器の破片で戦列離脱していく。
あと5%でいい、障壁へエネルギーを回せ!…主機出力、現状維持!…96式近接防御火器への供給をとぎらせるな!
ブザーが鳴り響く、総員待機の合図だ。何日続いたんだろう?時計を見上げると戦闘開始からたった45分だ。俺は兵員に加熱したジェネレーターの冷却と、過負荷で破損した部位の修理を命じ…崩れ落ちるように座り込んだ。今度の会議で機関部へ、状況表示盤を設置するよう要求するかな。
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「超空間からの復帰を確認、各部不具合を調査せよ!なお、タカマガカラからの航路指示が出るまで現在地点で待機せよ」
帰ってきたんだな、ひーふーみーよーっと…俺の満期退役日が過ぎてるな。孫と遊べる費がやっと来たのか。