音彩
ドの音は赤色。赤熱燃えし炎の色。絶えず流るる血液の色。優しく照らす夕陽の色。
レの音は黄色。黄熟成りし稲の色。天に在す月の色。頂点示す金の色。
ミの音は緑色。緑風戦ぐ野辺の色。草木萌えし山の色。命煌めく田畑の色。
ファの音は褐色。褐炭合する土の色。真直に伸びし幹の色。漬けて鞣した革の色。
ソの音は青色。青天高い空の色。波打ち返す海の色。静かに振りゆく雨の色。
ラの音は紫色。紫微星瞬く夜の色。生命損なう毒の色。見るのも稀な貴き色。
シの音は銀色。銀嶺臨む雪の色。空高く浮かぶ雲の色。鈍く輝く鋼の色。
音は混ざりて音色となりて、世界を満たし彩った。音の彩り、音の色。色は音で、音は色。
歌が楽器が全ての音が、色鮮やかに絵を描く。楽譜はスケッチ、色彩を奏で、演奏されると絵画となった。
高い音なら白に近く、低い音なら黒に近い。全ての音が違う色。一つも同じ色はなく、一つも同じ音はない。
美しいのは音か色か。どちらもきっと変わりはない。音は色で、色は音。意識漂うここが全て。美しいのは全ての世界。生まれる全てが美しい。