『金の鳥』
【作品情報】
製作:1987年/52分/日本
監督:平田敏夫
出演:三輪勝恵/藤田淑子/木ノ葉のこ
ジャンル:動くファンシーグッズなグリム童話アニメ
(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)
【ざっくりあらすじ】
カイゼル国を治める国王は、世界に二本とない金のリンゴが成る木を育てていた。
しかしここ最近、毎晩誰かがリンゴを盗んでいる模様。
辛抱たまらなくなった国王は、三人の息子にリンゴを見張るように言いつける。夜勤の兵士にお願いしろよ。
長兄・次兄もそう思ったのか、普通に居眠りをかました。
しかし人の好い末っ子のハンスだけは頑張って不寝番を続け――全身が金色に輝く鳥が、リンゴをもいで行くところを目撃した。
ハンスは慌てて弓を構えるも、矢は金の鳥の尾羽を一本かすめただけだった。
そして犯人ってか犯鳥の遺留品である金の羽根を見た国王は、閃いた。
「ワシ、この鳥欲しい!」
強欲すぎん……?
しかもまた兵士に頼まず、息子三人に金の鳥探しを命じて城から放り出すことに。
一方のリンゴをくすねた金の鳥は、カネマッチ王というイカれ暴君が治める城へと戻って来ていた。
鳥の飼い主は、カネマッチ王と手を組んで周辺諸国を攻める悪い魔女。
とにかく金製品に目がない魔女は、金の鳥もそれはそれは大事に可愛がっており――
「あー! 尾羽が一本足りない!」
速攻で気づいた。さてはこの女、飼い猫のヒゲも集めるタイプだな?
知らぬ間に魔女から恨みを買っているとは夢にも思わず、金の鳥探しを続けるハンスたち。
そんな彼らのところに、二足歩行で人の言葉を話すキツネのルルが現れた。
「金の鳥は魔女が飼ってるよ。案内してあげる」
……これ、このキツネに騙されて魔法少女にされるパターンけ?
【登場人物】
ハンス:
常に半分オフショルダー状態で、申し訳ないが顔から覇気や凄みが一切感じられないおとぼけ王子。
しかし弓の腕は立つし、クラウドまたはガッツみたいにクソデカい大剣を軽々と振り回す謎フィジカル保持者。
あと崖下に落ちた時も「どうせ最期は飢え死にするんだし」という返答しづらいコメント付きで、残っていた食料をルルに与えるという優しいんだか悟ってんだか分からない少年。たぶん適職は王族でなく、修行僧。
ルル:
ピンク色のクッソ可愛い男の子のキツネ。私のケモナーの萌芽です。
基本は物腰柔らかで丁寧だけど、たまにクソガキイズムが顔を出す。可愛いね。
原作でのキツネの正体ならびに、人語を解して服を着ている点からもお察しの通り、正体は人間なんだけども。
ディズニーの『美女と野獣』より先駆けること数年――当時「人に戻んなやァ!」とブチギレた思い出があります。ずっとキツネであれ。
ローランド:
ホストではないし、ピアノメーカーでもない。
白薔薇国という国の、とっても可憐で美少女なお姫様。しかしとんでもなく気が強く、ツンデレというか「暴」の化身。この傍若無人さ、80年代のヒロインって感じ。
でも可愛いし、そもそも勝手に寝室に侵入して来たハンスが全面的に悪いので、なんか許しちゃう。
魔女:
恐ろしく細長い、そして顔色が悪すぎる魔女。パッと見で「ああ、悪いヤツだな」と分かる顔色の悪さ。
魔女だが呪文は唱えず、もっぱら魔法薬?錬金術?的なもので戦って来る。
ちなみにニトログリセリンも持っているっぽいのに、そんなものがある所で派手なドンパチを始める。あらゆる意味で危険人物過ぎるだろ。
大とり:
鳥と名乗るのが若干おこがましいビジュアルの鳥。しかもアルコール依存症の気がある。
全身地肌っぽいピンク色のため、飲酒のせいで羽毛が抜け落ちたのでは?と子供の頃から気になっている。
【感想など】
子供の頃、気に入った本やアニメまたは映画を、アホのように繰り返して観た経験はありませんか?私はあります。
ちなみに大学時代の友人は就活で病みまくった結果、一晩中エンドレスで『となりのトロロ』を観ていたそうです。
ただこれは悲し過ぎるので、例外とします。
話を自分のアホガキ時代に戻しまして。当時何度も観ていた内の1作が、こちらの『金の鳥』でした。ビデオテープがベロベロになるまで観倒して、もう出会えないと思っていたら……サブスク配信されていただなんて。いい時代になったものです。
なお他には『ビートルジュース』と、『Return to OZ』というカルト映画をエンドレス視聴していた記憶があります。
どうやらこの頃から、ちょっと変な映画が好きだったようで。それこそ『となりのトトロ』とかにしとけばいいものを。
そんなアレなメンツの中でも本作だけは、純然たる子供向けアニメとなっています。
ウン十年ぶりに観たら、子供向けならではのフリーダムさ(と八奈見乗児さんのアドリブ全開っぷり)に脳が溶けるかと思いました。
脈絡なく、そして話の流れすらぶった切ってミュージカルがねじ込まれるし、魔女の部屋に何故かSEIKOの時計があるし、子供向けとはいえ遊び過ぎ。
あと改めて観ると、ハンスたちの親父があまりにも能天気で害悪。
跡取り息子に、ワケ分からんお使いばっか押し付けるな!お前はかぐや姫か!
――ですが、その一方で。
美術には大人の本気が迸っています。
キャラクターはデフォルメが効いてパキッとした色調の、ザ・80年代なビジュアルなのに。
背景は挿絵画家カイ・ニールセンさんを彷彿とさせる、水彩とパステルで描いたような柔らかさに包まれており、溢れるメルヘン力!
どのシーンを切り取っても、美しすぎる……ハンスとルルが出会う森なんて、葉っぱが1枚1枚描かれてるんですよ。もちろん手描きです。どうかしてるよ。
ローランド姫が住む白薔薇城にも、名前通りところ狭しと白薔薇が咲き誇ってて……美し過ぎて、狂気すら感じました。
それでいて魔女の住むカネマッチ城は黒基調でパースも無茶苦茶で、シュールレアリスムっぽさも漂わせるという極端さ。クール。
たしかに内容は、妙にテンションが高くてご都合主義だし(52分しかないですからね)、理屈よりもテンポ優先の子供向け作品です。
でも前述の通り、映像には一切の妥協がありません。
「子供だましにはしないぞ!」という大人たちの覚悟があって……とてもいい。
変な映画好きキッズだった自分が、偏愛していただけあります。
本作も立派な、ちょっと変な映画でした。
こういう尖った映画がこれからも、沢山作られますように。




