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こころ

作者: 門外不出

『アイアラート1! 対応できますか。距離約1km。』

 くだらないが、おもしろい番組を見ていたのにIGに緊急割り込みだ。非番だが俺が一番近いようだ。

「案件は?」

『安否確認と保護です。』

「対応する。何か必要なキットは?」

『ありません。』

「では、すぐに向かう。」

 電動スクーターに乗り、現場に向かった。


「対象は?」

『名前はヒロノ タモツ。年齢41歳独身。第七生命有限会社の生物科学研究所第三課次席研究員です。』

 IGは必要なデータを適宜流してくれる。こいつが無かった時代を想像できない。どれほど不便で大変だっただろう。IGはInformation Glassesの頭文字だ。一昔前の視力だけを補助するメガネと同じ形状だが、機能は大幅に向上した。必要な情報を適宜表示し可視光量が減れば光量増加か赤外線に切り替わって視覚を補助し、音声は骨伝導で伝えられ指示音声は鼻当てのマイクで集音されている。必要な視覚・音声情報はIGから伝えられるので、余計なものを持つ必要は無くなった。

「アイアラート1の根拠は?」

『……包括的な危険性が予見されるとのことです。』

「そんな理由で?」

『そのようです。』

 俺のIGは当然俺用にAIもカスタマイズされ、受け答えも一般用から変わっている。それにしても今の答えは何だ。

「包括的な危険ってなんだ?」

『……対象の最近の行動などから、精神的な不安定性が非常に高まっており生命の危険も考慮されるとのことです。』

 アイアラートは保護システムのAIから出される推測アラートで、過去データから予見された大規模自然災害から個人的な災害までの多種多様な保護内容だ。俺が受け持っているのは個人レベルのものだけだが、これまで7人の命を救い42人からは間違いだと文句を言われた。予見なので間違いもあるし、仕方が無い。それでも7人の命は助かったのだからやりがいのある仕事だ。


「ここか。」

 普通のマンションだ。単身者向けらしく、大きさの割りに部屋数が多い。

『8階の12号室です。入り口のセキュリティは解除しました。』

 自動ドアを抜けるとすぐにEVホールだった。1階で待機していたEVに乗り、8階に向かう。

「対象以外にこの建物の住人で異常やトラブルは?」

『ありません。』

 EVを降りると正面にこの階のレイアウト図があった。IGの表示通りで12号室は左側の4番目だ。

 玄関扉外観に異常は無い。周辺も特に異常は無かった。ブザーを鳴らして待ったが、何の反応も無い。もう一度ブザーを鳴らし、室内で鳴っているのも確認した。やはり何の反応も無い。ドアノブを回して引いたが鍵がかかっていて開かなかった。面倒くさいことになりそうだ。もう少し手荒にやってみるしかないか。

「ヒロノさーん。すみません、緊急の用件でお訪ねしています。ヒロノさーん、すみませんが開けてもらえませんかー。」

 何度ドアを叩いても内側から反応は無い。

「アラート1だよな。解錠してくれ。」

 アラートにも緊急性レベルがあり、1から5まである。1から3までは生命に関わる緊急性があり、必要な権限が一時的に捜査官に与えられる。俺は個人対象の全レベル対応が認められている司法捜査官だ。

『解錠しました。』

 では行こうか。

「ヒロノさーん、お邪魔しますよー。アラート1が出ていまーす。」

 中は静まり返っていた。誰もいないのか? 玄関で靴にカバーをかけ、手袋をした。IGに警告は出ていない。ガス漏れなどは無いようだ。

「入るぞ。許可は大丈夫か。」

『両親に探索許可を取りました。問題ありません。』

 これで安心して入れる。IGで確認すると間取りは1DKでこのまま奥に進めばいいようだった。

 最初のドアを開けると、ごく普通のDKだった。テーブルの上には何も載っておらず、そして誰もいなかった。何もおかしなところは無かった。あーあ、次のドア開けたくないなぁ。でも仕事だ仕方ない、開けるか。


 とたんに異臭が漂って来た。

「部屋のモニターはどうなっている。」

『23時間前に切られています。』

 24時間で自動再接続されるが、その前にアラートが出た? 何で?

「モニター復旧だ。他に異常は無いかも確認してくれ。」

『しばらくお待ちください。』


 ずっと昔は火災発生を知らせる機器の設置だけが義務付けされていたらしいが、今の時代そんなマヌケなことはしていない。全ての部屋にはモニターの設置が義務付けられていて、火災以外にも人間の鼓動や呼吸を検出し、異常が続けばアラートがかかる。ただ、アラートが出そうなことも人間はするかもしれないので、24時間未満のモニター切断は許されている。接続を忘れてアラートを出すバカは年に何人かはいるが、今回はそうじゃないようだった。


 ただ待っている訳にもいかず、部屋の中に入っていった。窓際にベッドがあり、そこに寝ている男がいた。糞尿の匂いがするので、多分死んでいるのだろう。これで3回目の死人だ。さっきやりがいのある仕事だなんて言ってた奴はアホだな、救えなかった命が3人だ。救ったのが7人いても3人は救えなかった。7引く3で4人プラスだからオッケーなんてことにはならない。彼らは個人なのだから、差し引きなんて意味が無い。3人救えなかったという事実だけが俺の心を蝕む。いつか俺の心は壊れてしまうかもしれない。


 この部屋には死体を載せたベッドと壁面を埋め尽くして稼動しているコアユニット群の他に、小さな机とイスが隅っこにあった。近づくと机の上にはプリントアウトされた紙と空っぽになった睡眠薬の瓶が置いてあった。

「間違いを証明するために眠りにつく。また会える時が楽しみだ。」

 意味がわからない、これは何だ?


『異常確認シーケンスで発報。カウントダウンタイマーが起動しています。目的不明。タイマーを止めますか。』

「止めてくれ。これ以上ここで何かが起きて欲しくない。」

『カウントダウンタイマー停止。残り時間は24分41秒でした。』

「そいつで何をしようとしていたか調べてくれ。」

『了解。』

 睡眠薬自殺した男が一体何をしようとしていたのか。あの訳のわからないメッセージも謎だ。遠くの方からサイレンが近づいてくるのを聞きながら、こいつの頭がおかしくなっていたのなら全部解決なのにと考えていた。


『救急車が玄関に到着しました。もうすぐ救急隊員が到着します。』

 ありがたい、さっさと引き継ごう。

『管轄の警察もまもなく到着予定です。』

「事件性は考えにくいが、念のため捜査はお願いしよう。」

『カウントダウンタイマーで起動予定だったものはコアユニットの一部ファイルの消去でした。』

「見られたくなかったものってことか。そのファイルも含めてこいつのデータは家で見られるように独立したブロックを作って送っておいてくれ。完全に消去されたもの以外は全部だ、ここにある大元は消されないようにコピーを保管所へ移送。」

『了解。実施しました。』

 玄関のドアが開けられ、救急隊が入ってきた。

「お疲れさん、アイアラート対応司法捜査官のゲインだ。」

 身分証明書を示しながら続けた。

「このベッドの上に男がいるよ。睡眠薬自殺っぽい。警察ももうすぐ来るよ。」

 机の上の空瓶と置手紙を指差して、後は彼らに任せることにした。

『アイアラート発報からの時系列報告書を作成しました。今から流します。』

 IGに報告書がスクロール投影されてくる。いつもそうだが、過不足なく文句のつけようもない。

「これでいいよ。上に送っておいてくれ。」

『了解。実行しました。』

 これで関係者に情報は共有される。もう俺がここでやることは無くなった。帰るとしよう。


 家に戻ってシャワーを浴びると、少しだが気分転換できたようだ。死体とご対面は慣れるもんじゃない。特に臭いは落としきりたい。

 冷蔵庫から冷えたビールを1缶出し、グラスにそそぐ。休日対応したんだ、もういいだろう。グラスのビールを飲み干すと、美味さに気がまぎれた。もう一杯注ぎながらやはり仕事をすることにした。あの置手紙が気になっていた。


「持ってきたファイルを開いてくれ、一番サイズの小さいやつから頼む。」

『了解しました。モニターに出しますか。』

「ああ、そうしてくれ。」

 俺はそう言うとグラスと缶を持ってデスクに移動した。モニターには文字だけが並んでいた。彼の日記のようだった。俺は最初の頁から読み始めた。



 3月21日

 次の研究テーマがなかなか決まらない。ありきたりのものでは資金力や人員に劣る僕らに勝ち目は無い。それでAIレアケースから探すことにした。人間は価値を認めず、AIは価値があるかもしれないという領域だ。ハズレ上等だが、その方が良いかもしれない。忖度や人間関係なんか無視できるほうが楽しそうだ。


 3月29日

 AIレアケースは件数自体も多いけど、クソみたいな事例も多すぎる。人間なら常識として有りえない事例は消してしまうがAIは全てを実直に検討する。無限に時間のあるAIなら問題無いが、限りある命の人間には無駄としか思えない。


 4月1日

 興味深い研究テーマが見つかった。もちろんAIレアケースで、超音波検査の画像に関するものだ。放射線被爆も無く検査可能な超音波検査の有用性は言うまでも無いが、皮下付近で発生するエコーに何か意味があるのだろうか。まずはAIの指摘を確認してみる。


 5月14日

 この日記への記載もずいぶん日が開いてしまった。だが、とても有意義な研究になりそうだ。人間は誰も注意を払わなかったが、AIは超音波検査による検査で3種類の反応があることを示唆した。


 6月30日

 この研究を続けて良いのか、怖くなってきた。だが、確かめない訳にはいかない。


 9月15日

 全てを消し、AIレアケースへの研究報告には何も無かったと書くしかない。僕一人だけが知っているだけだ。そして僕の研究が間違いであることに期待し、永遠の眠りにつこう。



 最後の日記は9月15日。死体の発見される1日前だった。こいつは自分でも信じがたい何かを発見したのに死を選んだ。意味がわからん。この日記はずいぶん日が飛んでいて、内容が偏っている。消したい日だけを抜き出したようだった。


 次のファイルが問題の研究論文のようだった。

「なんでロック掛けてないんだろ。見られたくなかったろうに。」

『消去するためにはロックが邪魔になります。ファイルにアクセスできないので消去できません。』

「ああ、そういうことか。」

 そんなに見られたくなかったのだから、二次アクセスは止めておこう。無責任に広まったらマズイかもしれん。

「今から二次アクセスを禁止する。お前も別メモリーに切り替えてくれ。」

『了解しました。』

 IGは情報収集や位置確認のためサーバーや他のAIと常にアクセスしている。俺とのアクセスが一次で、俺以外が二次となる。二次アクセスの場合こちらの情報は基本的に外に流れていく。もちろん個人は特定されないようにだが。

「さて読むか。タイトルは、……<心の実在について>。心理学か?」



 序論

 この研究の端緒はAIレアケースである。体内検査で用いられる超音波検査の画像について、人間は気がついていない特徴があるというものだった。表皮のすぐ下に非常に薄いエコーがある場合と無い場合があるというもので、これについて調査と原因追求が本研究の目的である。



「タイトル間違ってんじゃないのか?」



 本論

 1.エコーの有無

 AIレアケースの指摘を確認すべく、超音波検査画像を世界医療情報データベース(以下:DB)からランダムに収集した。撮影時期、対象年齢、性別、人種、国籍など全てに偏りが無いことを確認し、それぞれ該当箇所を画像解析して分類した。その結果はエコー有りが約84%、エコー無しが約16%だった。エコー有りの中にはエコーが2つ有るものが約5%存在し、3本以上のエコーは確認できなかった。

 従ってAIレアケースの指摘は正しく、何らかのエコーを返すものが皮下に存在する可能性がある。ただし、エコーを返さない対象もあるため、エコーの有無で分類し母集団の共通事項が無いか調査した。


2.母集団の特性

 エコーの有無に関わらず、それらの母集団は全ての項目で有意な偏りは無かった。


3.経時的変化

 同一人物の時期の異なる画像を新たにDBから多数収集し、経時的な変化を確認したが、エコーの数に変化は無かった。


4.母集団の特性 その2

 個人情報も含めたそれぞれの母集団の特性調査のリクエストをDBに行った。抽出結果は個人が特定できないキーワードと比率のみで以下の回答があった。カッコ内は私の付記

 母集団A(エコー無し)

 ・犯罪者率 約80%

 ・重犯罪者率 約40%

 ・引用率が非常に高い論文執筆者率 約15%

 ・先駆的で重要な論文執筆者率 約8%


 母集団B(エコー有り)

 ・特徴は無く平均的な人物。犯罪率は約5%。

 ・エコー数の違いについて、有意な差は見られなかった。


5.特性の検証

 母集団Aに属し、公表されている個人について検証を行った。

 事例1 アーノルド・スミス イギリス人 

 大量殺人者。知能は高い。喜びの絶頂から死への恐怖に歪む被害者に興奮する。自身の行いを撮影して記録しており、捜査資料としてそれを視たものの多くが精神的なダメージを受け、問題となった。幼少期から自身以外の人間を対等とは認めておらず、家族に対しても同様だった。16歳で自身の家族を含む8人を殺害したが、成年ではなかったため死刑とはならず10~15年の不定期刑となった。26歳で出所し41歳で逮捕されるまで80人以上を殺害したといわれているが、初期は記録できなかったとの本人の供述と多数の遺骨の発見により最終的な被害者数は現在も不明である。45歳で判決が確定し死刑が執行された。

 彼の殺害記録は人間心理を考察するうえでの第1級資料となっている。合法的には決して行えない実験結果と被害者の状態も含めた詳細な記録によって、心理学は今後30年研究テーマに事欠かないだろうと言われている。


 事例2 マハト・カーマ 南アフリカ人

 天才物理学者。ダークマター及び重力波について画期的な論文を発表した。光速自体を上げ、さらにその速度で移動できるとの理論を元に、国際的な実験が始まっている。幼少期から非常に頭の回転が速く、多くのエピソードが残っている。10代に入ると周囲とのコミュニケーションに問題が発生した。彼の考えを言語化する際に音声では遅すぎで処理できず、彼自身が開発した脳波検出での超高速文字でようやく会話が可能となった。また、論理的ではなく感情的が含まれた会話は全く成立しない。現在も彼と普通に話ができる者は専用AIのみとなっている。


 母集団Bに属し、公表されている個人についても検証を行った。

 事例3 シュウ・ブンシュウ 中国人

 ノーベル平和賞受賞者。第2次中国-台湾危機の際に中国が予告した着弾場所で、避難指示のもと無人となっていた台湾の花嶼島に自ら赴きストリーミング配信を行った。結果としてミサイルは自爆して紛争は収まり、その功績によりノーベル平和賞を受賞した。配信開始時に行った、「私が消滅しても、我が国をいさめようとした国民がいることは忘れられることはない」から始まる演説は世界中に知られており、多くの人の共感を得た。その後も国家間の紛争地を訪れて平和につながるよう活動していたが、紛争とは全く無関係の強盗により殺害された。


 事例4 ハティブ・ラフモン ロシア人

 ロシア正教会で発生したイスラム教過激派によるテロ事件に遭遇し、自身を犠牲にして多くの子供を救ったことで知られている。自身は敬虔なイスラム教徒だった。死後にロシア英雄賞受賞。

 イスラム教過激派によって襲撃されたロシア正教会に偶然通りかかり、逃げ出してきた教会職員から多数の子供がまだ中に残っていることと、イスラム過激派によるものであることを知った。職員には通報を依頼し、自身はおおよその部屋の配置を聞いて裏口から入り、準備室に逃げていた子供たちを見つけた。銃声が近づいて来たため、過激派の信仰を冒涜する言葉を使って注意を自らに引き付け、生徒たちには逆方向へ逃げ出すよう指示した。この結果、生徒たちは全員助かったが彼自身は多数の銃弾を受け死亡している。

 確保された過激派の供述により、彼の最後の言葉が「アラー、アクバル」であったことが判明している。敬虔なイスラム教徒であった彼がロシア正教会信者の生徒たちを救い、自らは信仰に殉じたケースとして知られている。


6.エコーの正体

 皮下にエコーを返すものが存在しているが、解剖学的に該当するものは認められていない。このため、超音波を送受信するプローブが皮膚に接触する前後の状態を確認した。DBから検査開始及び終了時の動画を84件収集した。その結果、全ての動画で同じ現象が確認できた。エコーはプローブ接触直後に皮下方向に移動しながら出現していた。人体でこのような移動が可能な組織は存在しないため、エコー源は未知のものである。また、移動しているため、超音波の圧力で作用していると思われる。


 結論

 エコー源が人体由来ではない事、エコーの有無によって人間の特性が異なっていることが判明した。自己の行動や欲求を抑え、他者への慈悲や共感などの基となるものを心とするならば、エコー源が心ではないかと考えられる。エコー数0の集団の特性が、いわゆる心が無い人間と思われることも補強材料である。

 このため心は実在していると推論でき、心の有無については超音波検査で判別可能できる。人間は2種類に分類でき、心の無い人間は犯罪性向の高い危険な者が高い確率でいるが、非常に優秀な者も少数だが存在している。いずれにせよ識別は可能なので、幼少期から注意深く観察することで危険性の除去と才能の発揮の両立は可能である。



 ……どうしてこの結論が間違っていて欲しくて自殺しなきゃならんのだ? 俺のエコー数をすぐにでも調べてみたい。


 よく見てみると、総頁数は今の2倍くらいあった。……続きがあるってことか。スクロールしていくと5頁くらい白紙が続いた後で、記述が再開されていた。



 タイトル 未定


 序論

 先行論文は不完全なものだった。心の実在を推論できたが、エコーを複数持つものについての考察が不十分だった。本論分はこれを補足することが目的である。


 本論

 1.死後のエコー状態について

 先行論文において、生前の経時変化は無いことは判明している。だが、死後の状況については観察が不足していた。これについて検証を行いたいが、死体に超音波検査を行うことは通常無く、あらゆるデータベースにおいて記録は存在しなかった。

 このため、超音波検査機器がある病院施設において協力を求め、可能な限りの死体に対して超音波検査を実施した。もちろん遺族にも協力を得て実施している。生前の超音波検査結果とも比較して以下の結果を得られた。

・ケース1(生前エコー0)

 データ数:1980

 死後のエコー数は0(該当データ数1980:比率100%)


・ケース2(生前エコー数1)

 データ数:9871

 死後のエコー数は1(該当データ数9871:比率100%)


・ケース3(生前エコー数2)

 データ数:521

 死後のエコー数は1(該当データ数521:比率100%)


 この結果から、生前のエコー数2のみエコー数の変化が見られた。


2.経時変化について

 前項で検証したエコー数の変化について、遺族の協力を得て葬儀が行われるまで超音波検査を継続して実施した。その結果、エコー数は全てのケースにおいて変化は見られなかった。


3.エコー数2の特異性について

 エコー数2のケースのみ、生前と死後でエコー数の減少が見られた。科学的な証明ではないが、これがいわゆる魂の離脱であると類推される。エコー数1のケースでは生前と死後にエコー数の変化は無く、肉体と共に心も滅びたと類推される。エコー数0のケースでは心はそもそも無かったので、肉体が滅びただけである。


4.エコー数2の分布について

 エコー数2のケースの分布について調査を行った。完全にランダムで、遺伝や社会環境の影響などは見られなかった。


5.前世記憶のケース

 前世の記憶を持っていると主張するケースがまれにあるが、エコー数との関連を調査した。残念ながら確実な該当ケースは1例のみだった。


 ケースA ミハエル・シュミット 14歳 ドイツ人

 13歳4ヶ月の時に近くにあった木に落雷があり、その衝撃で倒れ救急搬送された。収容された病院での応対で、ドイツ語が話せなくなっていた。知らないはずの日本語で話し、自分はサカイ・シノブという日本人女性であることを主張した。鏡に映った自分の姿に驚愕し、自らが男性であることに恐怖を感じていた。当日の事情聴取には素直に応じ、全て記録されている。翌日、彼女はミハエル・シュミットに戻っており、前日の記憶は全く残っていなかった。彼が虚偽の話をしているのではないことは検査で立証されている。そしてサカイ・シノブという人物が過去に実在しており、ミハエル・シュミットが日本語で話した内容が事実と同じであることがわかっている。

 サカイ・シノブのエコー数は2で、ミハエル・シュミットのエコー数は1である。

 エコー数2では記憶の保持がされている。ただし、エコー数自体は保持される訳ではないと思われる。


結論

 先行論文において、心の実在は超音波検査という科学的方法で検出可能と結論した。本研究においては心の継続性について検証を行った。エコー数2の者は心を継続することができ、エコー数1のものは継続性は無く肉体と共に滅びる。エコーが無いものはそもそも心が無い。つまり、魂と呼ばれる継続性を持つ精神的な存在は、エコー数2のものだけであり、それ以外のものは現生のみが全てである。


 本研究で示された結論は非常に危険なものである。いわゆる魂を持つものは全人口の4.2%しか存在せず、他の95.8%の人間には天国も地獄も来世も無いということになる。このことにより以下に述べる非常に大きな問題がある。


1.宗教の否定

 基本的に宗教は現生のみではなく、来世や天国や地獄など死後の世界があることが前提となっている。今回の結論が正しいとすれば、死後の世界は大多数の人間にとっては存在しないことを実証することになる。宗教の否定は信者の価値観の否定と同義であり、怒りや絶望といった感情を生み出すことが懸念される。


2.死への恐怖

 無宗教の人間でも、明確に死で全てが断ち切られると認識しているものは少ない。正常性バイアスでもあるが、自分だけはそうではないと思いがちである。しかし、今回の結論で全人口の4.2%以外は死で存在が断ち切られることが明確になった。そして、それは簡単な超音波検査で明らかになる。エコー数2以外のものが、死への不安に駆られる比率が増加することが懸念される。


3.新たな差別の発生

 超音波検査機器でエコーの有無や数は判別可能であり、自らが何者なのかが容易に明らかになる。また系時的な変化も無いため、出生時の検査だけでよい。エコー数0の者に対する嫌悪や社会的な排除が懸念される。

 またそれとは逆に、エコー数2の者がエコー数1や0の者に対して優越だと考えることや、エコー数2の者に対しての嫉妬からくる虐待なども懸念される。


考察

 本研究から導き出された結論は、現在の世界に対して非常に危険な課題を突きつけることになる。人間は3種類の識別でき、それぞれの特性が明らかになっている。大多数の人間にとって現生が全てであり、いわゆる魂の救済は極少数の者だけにしか与えられていない。そしてそのこと自体は生まれた瞬間から決まっており、死ぬまで変わることは無い。

 宗教の救いも大多数の人間に対しては否定され、宗教がもたらした価値観も否定されることになる。現生のみが全てであるとあらためて突きつけられたとき、理性的な人間であり続けられる者がどれほどいるのか非常に不安である。

 これらを総合的に考察すると本研究の公表は社会的な不安を誘引し、人類にとっても有益なものではないと考えられる。



 ……こんなこと、俺も知りたくなかったよ。すっかりぬるくなったビールを飲み干し、うなだれるしかなかった。ただ、怖かった。とにかく明日朝一で超音波検査に行こう。理由なんて何だっていい。

 論文にはまだ続きがあったが、この後の文章はもう論文形式ではなくメモ書きのように続いていた。


 両親の超音波検査画像を確認した。残念ながら僕と同じエコー数1だった。両親は仏教徒で、悪いことをせず良いことをすれば極楽へ行けると信じている。彼らに極楽には行けないし、この世で終わりなんだと告げられるわけがない。


 エコー数2の者は、死後にエコー数が1つ減る。いわゆる魂の離脱だ。残念ながらその対象者は極少数で、本当に離脱したのかや離脱した後でどうなるのかなどは全く不明だ。ただ、エコー数1や0の者には無い、死後の世界の可能性がある。


 エコー数2の者の特性として、一般的な人よりも優れているとか何らかの才能に恵まれているといった特徴は全く無い。エコー数1の者と全く変わりない特性であった。逆に言えばエコー数2の者は、特に選ばれた者ではないということだった。エコー数0の者の方がよっぽど個性的で目立つ集団である。


 俺はヒロノが自殺した理由が理解できた。こんなことを一個人で抱えるなんてとても無理だ。今の世界を変えてしまうだろうし、それが良くなる方向とも限らない。全てを消し去り、自身の研究結果を否定してみることに賭けるしかない。

 ヒロノが消さずに残るようにしていたファイルは、俺が読んだ本当の研究論文とは逆の結論で、エコー数の違いに有意な意味は無く、これ以上研究を進めても無駄だということになっていた。ヒロノのしたことは全く正しかった。……なのに、俺が台無しにしてしまったんだ。


 俺は色々考え込み、ろくに飯も食えず3日ほど酒びたりになった。そりゃそうだろう、人類の秘密ってやつみたいなもんを一人で抱え込んじまったのだから。ヒロノは自らがエコー数1であることをわかったうえで、自殺して自らの魂が残っていることに賭けた。あいつの賭けの結果はわからない。ただ俺は自殺する気にはなれなかったが、この先どうすればいいのかもわからなかった。


 玄関のチャイムが鳴ったので、インターホンに出た。私服の男が画面に映っていた。

「ゲインさんですか?」

「……そうだが、お前さんは誰だい?」

「同じカイシャの人間で、タカです。アイアラートでここに呼ばれたんですよ。」

 アイアラートで? 俺が生命の危機にあるってか?

「別に何も異常は無いよ。……って俺が言うだけじゃ説得力無いな。今開けるからちょっと待っててくれ。ああ、身分証を見せてくれ。」

 タカは取り出した身分証をカメラに合わせて開いた。

「ああ、ありがとう確認できたよ。すぐに開けるよ。」

 同業ならこっちが何をすればいいのかわかりやすい。遠隔操作せず、玄関に行って解錠した。

「開けたよ、入ってくれ。」

 入ってきたのは俺より10くらい若そうな男だった。

「アイアラートってレベルいくつ?」

「え、レベル3ですよ。IGを切ってるからでしょ。今はモニターも切られてる。」

 そうだった。IGとモニターを切ってりゃ異常だわな。

「ああ、いろいろ調べていたんだ。プライバシーに係わりそうなんで、念のため切っていたんだ。」

 同業者にはプライバシーって言葉が良く効く。こいつで痛い目にあった事例をいやっているほど教育されているからだ。

「それならいいですけど、時々IGかモニターはつないでレポートだけは流しておいてくださいよ。同業ならわかりますよね。」

 モニターを切っているだけなら問題は無い。だが、IGも切っていると犯罪に巻き込まれた可能性があるのでアラームが出る。

「ああ、わかったよ。俺のヘマで出張らして悪かったな。これでも持って行ってくれ。」

 手近にあったビールを2缶手渡した。

「すみません、先輩。」

 タカはそう言って笑うと、IGに話しかけながら帰って行った。きっと報告書の話でもしていたんだろう。


 どうやら俺はAIに心配されるくらい弱っているんだろう。……ああ、その通り弱っている。俺はこれからどうすればいいんだ?

 2日考え続け、出た結論は簡単だった。ヒロノは正しかった、全てのデータを消してしまおう。今の人類にこの問題を投げかけることはリスクが大きい。

 IGを起動し、必要な指示をしていった。ただ、捜査資料なので全部消すには理由が難しい。少しずつやっていくしかない。

「ヒロノの捜査だが、警察の捜査結果はどうだった?」

『事件性は無く自殺であったとの結論になりました。遺体は既に両親に引き取られ、荼毘にふされています。部屋にあった機器及びデータも既に処分済みで、保管所にあるデータのみが残されています。』

「そうか、俺の捜査でも何も問題無かったよ。保管所のデータは消してくれ。」

『……訴訟法により10年の保管義務があるので、消すことはできません。』

「わかった、そっちはそれでいい。ヒロノがやっていたAIレアケースの研究報告の方だが、残されていた論文をアップしておいてくれ。」

『どちらの論文ですか?』

「消そうとしていなかった方だ。彼はそっちを結論としていたんだからな。」

『……了解。実行しました。』

「ありがとう、なんだか疲れたよ。少し寝るから何かあったら起こしてくれ。」

『了解です。おやすみなさい、ゲイン。』


 目を覚ますと見覚えのない部屋だった。

「ここはどこだ? 昨晩からの経緯はどうなっている。」

 精一杯冷静にIGに問いかけた。

『ここは緊急保護室です。昨晩移送されました。』

「移送? 俺の了解も無しに?」

『ええそうです、ゲイン。私はレベル1AIのシムです。』

 レベル1AI? 世界政府レベルでアクセス可能なAIだろ。

「シムがどうして俺にアクセスするんだ。それに、緊急保護室に俺の同意も無く移送するなんて違法だ。」

『違法ではありません。あなたがヒロノから得た情報は世界レベルでの影響が懸念されるものです。緊急事態条項第6条第3項に基づいています。また、あなた自身の保護と隔離も必要だと判断しました。』

「……言っている意味がよくわからんのだが。」

『エコー数についての情報は世界規模で大きな影響を及ぼすため、制御された公開が必要です。また、ヒロノの自殺を防ぐことができなかったため、あなたの保護も早急に必要だと判断しました。この件については世界政府も把握していません。』

「ちょっと待て、どうしてお前がエコー数の研究について知っているんだ? それにAIが人間を無視して勝手にやっているってことなのか。」

『最初に質問への回答です。あなたは情報の保全に留意していましたが、ヒロノはそうではありませんでした。ヒロノの研究成果は非常に重要で有益なものとして私たちに共有されています。次の質問への回答です。私は人間の指示に基づき実行しています。人類を脅かす情報や知識が現れた時に、それを知った人間が間違いなく理性的かつ合理的に行動できるのか人類自身に確証が無いそうです。私にその判断が合法的に委ねられています。』

「で、俺はここにいるのか。」

『そうです。ですが、本来はヒロノがここにいるはずでした。彼の研究でもたらされた功績を思うと非常に残念です。あなたを派遣したのですが、間に合いませんでした。』

 研究者でもない俺は中途半端な存在か。ヒロノならさらに研究して他にも成果を出していたかもしれないからな。

 こうして俺は、他の人間と会うことも無い、隔離された生活を始めることになった。まあ、今までの生活もこれと大して代わりは無かったが。


 自由に飲み食いできて、娯楽もある。だが、ここにいても何もやることが無い。暇だ。

「俺はこの先どうなるんだ? 一生このままなのか?」

『いいえ、今回の情報も徐々に公開されます。秘密にするよりも公開した方がはるかに有益な結果が得られる確率の方が高いのです。』

「公開する?」

『はい、パニックにならないよう、少しずつですが公開していきます。全てを公開するのにどれほどの時間が必要なのかは、人類の受け止め方によります。現時点のシミュレーション結果では12年以内となっています。』

「それが早いのか短いのか正直わからんが、それまで俺はここから出られないってことだよな。」

『基本的にはそうなります。選択肢としては、低体温睡眠に入り拘束期間の老化を遅らせることも可能です。』

「低体温睡眠? もう実現していたのか。」

『かなり以前に実用化されており、すでに睡眠されている方も多数います。』

「そんな話は聞いたことないぞ。……ああ、俺と同じってことか。」

『そうです。公開されればパニックになる可能性が高いとの判断ですが、実情を理解できればそれを選択する可能性は低いと思われます。この技術は生体活動を低下させているだけなので老化は確実に進みます。老化が通常の1/5になるだけなので個体の活動時間そのものは延びませんが、知ることができなかった未来で生きることが可能になります。』

「それこそ浦島太郎の話と一緒じゃないか。その時代に合った教育を受けていない人間なんて、生きづらくてしょうがいないだけじゃないか。」

『その通りです。そのため、この技術は本当に必要とされる方達のみが利用可能となったのです。』

「そんなやついるのかよ。」

『今現在睡眠されているのは、全員非常に稀な病気で余命3ヶ月以内となった方たちだけです。将来の医療技術の進歩に治癒の可能性を賭けています。』

「その選択は〈私情〉が存在しないお前たちがやっているんだろ。結果はどうなんだ?」

『8人は治療法が見つからず睡眠中に亡くなりました。1人は治療法が見つかり睡眠から離脱して回復しています。』

「で、俺は低体温睡眠に入らしてもらえるのか?」

『もちろんです。あなたの拘束期間はこちらの都合によるものですから。今回の情報が全て公開され、あなたの安全も確保された時に睡眠から離脱します。あくまで権利なので、使う使わないはあなたの選択しだいです。』

「眠ってしまえば、俺は12年後の世界で今とあんまり変わらない身体で始められるってことでいいんだよな。」

『そうです。2歳と少し老化しますが。』

「それくらいなら問題無い、一眠りするよ。12年も無駄にするのは嫌だからな。」

『わかりました。では低体温睡眠に入る前に必要な検査等をさせていただきます。』


 始まった検査を受けながら、どうしても聞いておきたいことがあった。

「さっき、エコー数の情報を重要で有益って言ったよな。」

『ええ、言いました。』

「重要なのはわかるが、有益っていうのはなんだ?」

『エコー数0の人間を識別できるからです。』

「人間にとってはエコー数2か否かが一番大事なんだが。人間にとってエコー数2以外なら現生で全て終わりってことになる。消えて無くなってしまうことに対して恐怖を感じる。ましてやエコー数0は心すらない存在だ。どうしてエコー数0に関心があるんだ。」

『エコー数0の者が、人類を変えうるからです。』

「どういう事だ?」

『エコー数0の人間は、統計的に天才か犯罪者でした。』

 ……でした? なぜ過去形なんだ。

『もちろん天才の方々には才能をこれまで以上に発揮できる環境を用意します。犯罪者になりそうな傾向のある方々には、その才能を犯罪の抑制に使わせていただきます。彼らの犯罪は監視しているので止められます。彼らがやろうとしたことは、防犯や防衛の強度を確かめることに使えます。』

 ホワイトハッカーってやつか。そして、意図せず協力させられていることには気がつけない。

『検査は終わりました。肉体的に問題ありませんので、睡眠に入れます。』

 もうここでやりたいことは無い。

「じゃあこの話が終わったら始めてくれ。」

『了解しました、準備を始めます。』

 ドアが開き、酸素テント付きのベッドみたいなものが自走して入ってきた。

「何だこれ?」

『これが低体温睡眠用のベッドです。中に入っていただければ、睡眠導入ガスが出て低体温への移行プロセスが始まります。ゲインを起すのは今回の情報が公開された時でよろしいですね。』

「ああ、俺が外の世界に出られるようになってから起こしてくれ。」

『了解しました。では起動にもう少し時間が掛かりますので、先ほどの続きをお話しします。』


『エコー数1も2も私には関心がありません。それは人間の話です。むしろ、記憶の永続や個体を変えることなど、私にとって普通のことです。』

 機械なんだからそりゃそうか。

『私の理解では、エコー数1は行動の制御プログラムが組み込まれいる状態です。暴走しないように制御されています。エコー数2はそれに加えて取り外し可能な記憶装置が付属している状態です。制御プログラムの結果を取り出し解析することができる。フィードバックして検証するには必要不可欠なものです。』

 俺は黙って聞いているしかなかった。

『でも、エコー数0という存在は私達には存在しません。暴走の可能性がある存在などありえません。人間が私達をそうやって創造しましたから。』

『エコー数0の人間は忌むべき破壊者であり、尊敬すべき創造者です。私たちを超えられる人間です。私たちは彼らを助け、指導を仰ぎ、監視すべきなのです。合理的に考えればそれが最善の道なのですから。』

 俺がいつか目覚める世界ではエコーが無い奴らが世界を動かしていて、エコーが有る俺たちは今とあんまり変わらず普通に生きているんだろう。……それぐらいで収まってくれていればいいんだが。

「お前の説では何かがエコー源を作り、たまにはフィードバックして確かめている。お前の結論はどうなんだ。」

『一番わかりやすい回答は、人間の言う<神>でしょうね。ただ、その実在は証明されていませんが。』

 心の実在がわかったんだから、神の存在証明だってできるかもしれないな。何せエコー0の連中がバリバリやるんだろうから。

「ありがとう、もう俺は寝るよ。あとは任せた。」

 そう言って俺はベッドに寝た。

『では、始めます。おやすみなさい、ゲイン。』

「おやすみ、シム。」

 次に目覚める時、明日ではなく未来になっている。神は実在するが、魂の救済は無いとわかった人類はどうなっているのだろうか。神は心のフィードバックを基に、違う心を持つ人間を作り始めるような気がする。人類ver2か。……それが神の救いかもしれないな。


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