サイレント・ラブ
ピアノの音だけが鳴り響いた。
それが夢みたいな現実だったことを私は知っている。
私を抱きしめた男は暖かく優しい気がする
だけど、私は怖かった。
バッと離した。
男はすごく寂しそうな顔をしてやがて空は暗くなり雨が降る。
空気が重く男は逃げていき男は雨に打たれていく私は男に愛されていたと思い心が引き裂かれるように苦しくなった
だが、怖かった。
やかんに水を入れてお湯を沸かす。
空気が気持ち悪く吐いた
その吐いたものは『血』だった。
私は怖かった。死ぬことが生きることが
男とか女とか関係なく私を愛してくれる人が本当に欲しかった。
だけど、それは叶うことなく寂しくまた、悲しく
私は人として愛されてはいけない
好かれてはいけない
ただ、ただ、もう一度だけ人からの温かみが欲しかった。
インスタントのコーヒーをコップの中に入れてお湯を入れた。
その湯気が気持ち悪さを誘う
あなたも……あなたも……あなたも……
その気持ち悪さをコーヒーで流し込んだ。
冷たい心を溶かすように苦しみは苦味に変わり
咳き込んだ。
怖くて怖くて怖かった。
気持ち悪さはピアノの音を飲みこんで消そうとした。
苦いコーヒーと苦い気持ちをピアノだけが響く
雨は止んで晴れる頃に男は扉をあけて私を抱こうとした。
そして、私は彼のホホを叩いた。
私は……私は……私は……
「あなたの子を産みたくない」