第2話「2つの秘密!」クレア回
クレアはミラ家のお邸でお嬢様たちにお仕えする召使い(使用人)。
クレアには誰にも言っていない秘密が2つある。
1つはユニークスキルを持っていること。嘘を見破れる能力(見破り)
たぶんこのスキル性能は高く、スキルハンターに狙われる恐れがあるので、誰にも言っていない。
もう1つはマル秘ノートを書いている。ノートは2つあって、1つはお出ししたお料理に関するお嬢様たちの反応。あたしの心の声とイラストを添えている。
もう一つのノートはラブノートと言って、まだ白紙のままだ。
朝食をお出しして、クレアはお嬢様二人とバートンさん(執事)の反応を観察しています。
「クレア、今度からわたくしのスープはカボチャやめてください。苦手なんです」
サーシア様は眉間にしわを寄せながら、スプーンを持った手を止める。
ミラ家には美人3姉妹がいて、サーシア様が一番上のお嬢様。その下にマアニャ様とミイニャさという双子の姉妹がいる。
サーシア様は長髪の青髪をカールしていて、気品が溢れるお人。
「はい、今後気を付けます」
頭を下げ、ノートに書いておかなければと記憶する。
「せっかく作ってくれたお料理に文句言わなくてもいいでしょ。すっごい美味しいわよ、このスープ」
マアニャ様がクレアを庇ってくれます。
マアニャ様は赤い髪をツーサイドアップした髪型で、少し気が強いけど、お優しく、いつもクレアを気にかけてくれるすっごい綺麗な人です。いつも9時3分に下へと降りてきますが、その理由をクレアはまだ知りません。
「だったら、あなた牛乳ちゃんと飲みなさい。大きくなれませんよ」
「もう大きくならなくていいもん。牛乳苦手……」
「将来旦那様が牛乳好きだったらどう思うでしょうね? ねえ、ミイニャは元気?」
ミイニャ様はマアニャ様の双子の妹です。今はこの家を出て行っているんです。
「気になるんなら様子見に行けばいいでしょ。カフェ行けばいいじゃん」
「あのカフェはあんまり評判がよくありませんね。あの子1人で商売を始めること自体が無謀じゃなくて」
「色々やってみたいんでしょ。迷惑掛かってないんだから、別にいいじゃない」
「よくはありません。ミラ家を出たとはいえ、あの子はミラ家なんです」
「言いたいことはわかるけど、お姉ちゃんがしきたりだなんだ厳しくするから、ミイニャ出て行ったんじゃないの」
「わたくしのせいだと! どれだけ2人のことを想っているか、あなたにはわからないでしょ」
「愛情は必要だけど、捻じ曲がるようなそんなものなら、あたしもミイニャも要らないのよ。パパやママが居なくなって、お姉ちゃんが気を張ってるのはわかってる。でも、あたしたちもう子供じゃない。やりたいことは自分で決められる」
「わかったような口、聞かないで」
「責めてるわけじゃないわよ。ただお姉ちゃんも自由にしたいことしたほうがいいって言いたいの」
「妹が何言ってるの!」
「お嬢様、紅茶はいかがでしょう? 感情的になられては解決できる問題もかえって大きくなるものです」
見かねたバートンさんは珍しく声を掛けた。
「バートン……あなた、食事中喋らないのに……ごめんなさい。食事の席なのに雰囲気を壊したわ。クレア、紅茶をくださる」
「はい!」
お湯は沸かして、台所に用意してある。頭を下げて扉を出てすぐの台所へ。
「クレア、手伝いましょう」
「バートンさん、お願いします」
カップを用意して紅茶をポットに入れ、レモンを何枚か素早く切る。
「手際がいい。仕事上手だ」
「そんな、ほめ過ぎですよ」
「お嬢さんたちはみなお優しい方です。だが時に感情的になられるときがある。そんなときは話を聞いてあげてください。そこに主と使用人の関係はいらないよ」
「はい!」
執事のバートンさんは65歳を超えた今もミラ家に仕えている。優しく良く気が付き、お嬢様たちの良き理解者。この家にはご両親が不在なので、お嬢様たちにとってバートンさんは大切な家族なのかもしれないな。
仕事を終え、大きな大きなお風呂を使わせてもらい、クレアは1人で使わせて貰っている部屋へと戻ると、反省も兼ねて今日のマル秘ノートに料理のこと、バートンさんのこと、あと日記風に数百文字書き添える。
もう1つ作ったノートは、ただ表紙にだけLOVEノートと赤とピンクのペンでタイトルを記して、その下に猫が顔を真っ赤にして照れているアニメ風のイラストを描いている。
ミラ家は騎士団を有していて、副団長さんはイケメンだ。女の子は訓練をよく見学に来ている。
「けどクレアには合わないかなあ」
印象は悪くないし、確かにかっこいいがぐぐぐっと来るものにかけていた。だからこそノートは白紙。
それから少ししてクレアのLOVEノートは白紙ではなくなる。
同じ召使いの子にクレアは恋をしました。
優君の良妻にクレアはなる!