産
どこか地球とは違う星
世界には五つの大陸があり、それぞれの地で国同士の戦いが繰り広げられている、群雄割拠の時代である。
その大陸の一つでは
火、水、風、地、雷の五つの国があった。
日本の戦国時代の様な国々である。
火の国の中の更に地方領主家での出来事
ドタドタドタドタ!
「お館様!」
「慌ただしいな小助、どうした」
「男の子です!欄様が男の子をご出産なされましたっ!」
「遂に産まれたか」
すっとお館様と呼ばれた男が筆を置き立ち上がる。
身体は大きく鍛えられており、眼光は鋭い。
戦場で生死をかけて戦ってきた事により醸し出されている強者の雰囲気には、相対する事すら出来ない者もいるだろう。
「欄の元へ向かう」
「ははぁ!」
長い廊下を歩き、ある部屋の前で止まる。
ザザッ
男が障子を開くと、中には侍女三人に囲まれた、赤子を抱いた女がいる。
少し疲れた表情ながら、男を見て微笑み口を開いた。
「あなた、来て下さったのですね。男の子ですよ、少しあなたに似ているかも」
「よく頑張ってくれた。ふむ、俺からすれば欄に似ている気がするが…」
「ふふっ、私達二人の子ですから。出来れば目つきは私に似ていた方が良いわ」
「ほう、言ってくれるな」
今の男からは強者の雰囲気は薄れている。
和かに微笑みながら女と話し、幸せなオーラが滲み出ている。
周りの侍女達も皆笑顔だ。
「男の子ですから、名付けはあなたね。名は何としましょうか」
「決めていた。この子の名は『鄰人』、龍園 鄰人。将来龍園家を背負う男の名だ。」
これはこの暖かい地方領主の息子として産まれた、一人の男の物語である。