白いワンピース
見た目はそっくりで、性格は正反対らしい姉妹に拾われた、身長は姉の方が頭一個分高いが体型はぼぼ同じ、髪型も2人ともポニーテール、おまけに顔がそっくりで双子かと初めは思ってしまった。
知らない私を家に一人にさせるあたり不用心すぎる。金目の物でも取られるとは思わないのか、それともこの見た目(子供の姿)だからだろうか?人は見かけによらないとは知らないのか、一様自分はこれでも200年は生きている。
それにしても、あの姉妹は何かがとても引っかかる。このままどちらかにこの力を渡すのは無理そうだ…
「ねぇ、抱っこ」
「ねぇ、本読んで」
「ねぇ、お歌歌って」
「おいで」っと彼女は笑う
燃える炎
「ここを真っ直ぐに歩くのよ、大丈夫いつでもお姉ちゃんがついてるから」
「いや、ねぇ一緒」
「見えなくても、いつでもお姉ちゃんはあなたのそばにいるから、絶対約束するから。早く行きなさい!」
言い終えた姉は炎の中へと消えていった。そして炎を背に歩き出した。
いつのまにか寝ていたらしい、時計が4時を指している。
姉との最後の記憶、もう随分と昔の事だが今も鮮明に覚えている。
窓から見える夕焼けはあの時の炎のように赤い、
「ただいま、さくらちゃんお留守番ありがとう。はいこれ、おやつだよ」
そう言って彼女はアイスをくれた
「おかえりなさい、ありがとう」
夕方になっても親は帰ってこない、やはり小姫が一人で家事をしているみたいだ。
アイスを急いで食べ終わる。
「小姫 手伝う」
洗濯物を畳んでいる小姫の横に座る
「え、大丈夫だよ。いつも一人でやってるから。それにお客さんに手伝っていただくなんて、申し訳ないよ。」
「私も今日からここで暮らす、家事手伝う、お客さんじゃない。」
そう言って洗濯物に手を伸ばす。
「ありがとう」
小姫が小さく呟いた
「ただいまー!小姫夜はなにー?」
制服を着た小雪がキッチンに入ってくる
「お姉ちゃんおかえり、今日は魚だよ。制服着替えて、臭い着いちゃうよ」
「はーい」
小雪が二階に上がって行く
「お姉ちゃんはバスケットをしてるんだよ、次の大会までにレギュラー取るのが目標なの」
「小姫は?」
「私は家の事があるから、そんな時間はないんだ、それに部費とか意外とお金がかかるんだよ。」
小姫の笑顔が曇ることはなかった。
その笑顔は心から笑ってるようには見えなかった。
「うぅー」
小雪が低い声で唸っている
「宿題終わらないー」
「ほら、唸ってても終わらないよ。頑張るよ」
向かいに座る妹に励まされると頑張ろうと思うのは単純だろうか?横でさくらが見てるぶん諦めるわけにはいかない。
「よし!頑張ろう!」
「終わった!!」
両腕を上にあげ大きく伸びをする。
時刻は9時半になろうとしていた。
早めに終われたのはさくらがいる手前怠けるわけにはいかないからだ。いつも小姫の前では甘えてしまう。
「話がある。私のこと、聞いてほしい。」
静かな声がリビングに響く
「こーひーめ、コーコーアー」
静かな空気を破るように小雪の抜けた声が響く
「だめです。お茶入れるから、ゆっくり話を聞かせて」
小姫がお茶の準備を始める
湯気立つお茶が3つ
「全部話す」
「いいよ、話したいことだけで。無理はだめ」
優しい声主は小姫ではなく、小雪だった。小雪もこんな優しい声が出せるのかと少し驚く。
少し肩の力が抜けた気がする。
「私は人とは違う、妖怪と言われる存在。雪女のさくら。私を見える人を探してた。この力を渡すために。」
さくらは全てを話した。
2人の反応が少し怖い、追い出されるだろうか?
いきなりこんな話をして信じる人はいない。「面白い作り話し」と笑うだろうか?まぁ、その時はその時だ。継承は諦めるしかない。
「その力私が継承する」
「あつい」
「雪女はやっぱり夏はだめなんだ」
扇風機の前さくらと小雪は並んで座っている
「お姉ちゃん荷物の準備できたの?」
キッチンからお昼の洗い物が終わった小姫がエプロンを外す。
今は7月28日夏休み真っ只中
「荷物?どこか行くのか?」
さくらが小姫を見る
「うん、8月は本家で過ごすんだよ。村をあげての夏祭りもあるよ。小さいけどね」
「今日宿題終わったばかりなんだよー!!明日するー」
「そう言って去年も私がしたよね。」
小姫が笑顔で近付いてくる、目が全く笑っていない。
「わかった、明日絶対するから。ね、今日はゆっくりしていいでしょう?明日小姫さんの前で絶対するから。」
必死に顔の前で手を合わせながらお願いをする。
こうゆう時の小姫は凄く怖い。
「はぁ、絶対明日だからね!!」
多分今回も小姫が小雪を甘やかすだろう。小姫はとことん小雪に甘い。そんなことを思いながらふと思った。
「私も行くの?」
「そうだよ、さくらちゃんの荷造りはもうできてるから。」
「無理矢理でも連れて行く!さくらと初めての夏だもん、楽しい思い出作らないと!」
愚問だったようだ、だがもう少し早く知っておきたかった。
「さくらと夏祭り行きたいなー」
小雪が奇妙な鼻歌を歌いながら、扇風機を占領しようとするのをなんとか阻止した。
電車、バス、徒歩の道のりで約半日。朝家を出てもうすぐ夕方になろうとしている。周りは山、山、山どこ見ても山。360度山に囲まれた田舎だ。
「遠い」
バス停から徒歩で40分
「もう少しですよ」
さっきも同じ台詞を聞いた気がする。小姫は全く疲れを見せない。見かけによらず体力はかなりあるようだ。
「この橋を渡って、すぐ右そこが村の入り口なの」
小姫の説明に、もう少しっと思うと元気が出てくる。が、一つ気になることがあった。
3歩後ろを歩く小雪の姿を見る。
腰まである髪を下ろし、麦わら帽子に緑のリボンが付いており、真っ白なワンピースの丈は膝下まであり、普段のジャージにジーンズ姿からは全く想像がつかない格好をしている。
昨日の夜と今日の朝、本家に行きたくないと駄々をこねていた姿はどこにもない。
それに今日は口数も少なくとても大人しい。少し、いやだいぶ心配になる。そんなことを考えていると、
「着いたよ、ここが村の入り口」
入り口には「ようこそ」っと書かれており右上に蛇の絵が描いてある。
少し遅れてさくらの隣に小雪が並ぶ、2人とも進む様子がない。
「小姫、荷物」
小雪が小姫に荷物を渡す。
小姫が3人分っと言っても最小限の物しか入ってないバックを一人で持つ。
「私一個持つ」
小姫とさくらの荷物が入ったバックを小姫から貰う。
これで手が空いてるのは小雪だけだ。
「はぁ、行きたくない。帰ってココア飲みたい。さくらはいつも通りでいいからね。私の癒し…」
暗い声で小雪が訳の分からないことを言っている。ここまで来て何を言っているのか。
「あと10分歩けば、本家に着くよ。頑張ろう!お姉ちゃん!!」
いつもより「お姉ちゃん」の声が大きかったような気がする。さくらはそんなことを感じていた。
そうして3人は村への一歩を踏み出した。
誰も読んでいないだろうと、思って一話、二話書き直ししてます。
次のお話はいろんな人が登場するよ(๑╹ω╹๑ )