『一瞬の煌めき』
誰かの目に触れて、何かの意味をもてたら
ヒュ~~と音を出しながら勢い良く昇って行く花火の玉。
後に咲く大輪の花。頭上で咲いたその花は、煌々と輝き一瞬の命を咲かせ、やがて散ってゆく。
「学校で打ち上げる花火でも意外と綺麗なもんだね」
そう言ったのは平塚沙紀。彼女は、俺、佐々木隼人と同じ一年生で、文芸部に入っているのは俺と彼女だけだった。
まっ、部員が二人しか居ないから正確には文芸部ではなく、文芸同好会なんだけどな。
けれど、いつの日か同好会から部に昇格することを信じて、俺たち二人は同好会ではなく文芸部と呼んでいる。
あと一人部員が入れば部活動になるのだがなぁ……。
「確かにそうだな。体育祭の最後に学校で打ち上げるって言うからクオリティは期待してなかったんだが、見てみると意外と綺麗だな」
「佐々木くん、前半分は先生たちに言わないようにね……。あ~あ、けど花火の打ち上げが終わったら体育祭も終わりかぁ……。なんか悲しいね」
「はやいもんだな、もう俺たちが入学してから五ヶ月ぐらいになるな」
そう言っている間にも続々と打ちあがって行く花火。
「部活動編成の時に文芸部が去年で無くなったって聞いて、どうしようって思ったよ。ほんと佐々木くんが作り直してくれて助かったな」
「作り直したって言っても、同好会だけどね。けど、俺も平塚さんが入ってくれて助かったよ。さすがに一人だけの部活だとさびしいしね……」
「そうだね。私が居なかったら佐々木くんは、さびしい学園ライフを送っていた事に違いないね!」
「調子にのるな」
二人して笑いながら言う。部活でもいつもこんな感じでふざけ合って喋っている。
「それにしても、私さっきから気になってる事があるんだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
「なんか、沢山降ってきてるよね!」
「ああ、なんか降ってきてるな……」
空から黒い物がはらはらと降ってきている……。花火の燃えカスだろうか?
「それに、火薬くさいね……」
「かなりな……」
火薬独特のにおいが辺り一面に漂っている。頭上で綺麗に咲いてるあの花はの香りは結構くさいようで……。
そんな事を話していると、今までよりもひときわ大きなヒュ~~という音がして、綺麗な線を描いて夜空を昇って行った。そして満開の花を咲かせた。
一瞬の光と共に、僕らを儚く彩って。
暫しの静寂が、周りを包む。
すると周りの先輩たちが急いで荷物をまとめて、帰りだした。
「どうしたんだろうね?」
「さぁ? なんか、みんな急いでるけど……」
「ねぇ。もしかして帰りのバスじゃない?」
周りを見てみると、もうかなりの人数が動き出している。
「俺らも急ごう!」
急いだけど無駄だった……。
すでに、バス亭には今まで見たことが無いぐらいに人が並んでいた。
「多いな……」
「こんなに沢山並んでいるのは初めて見たね……」
そう言ってから、彼女は僕の方を見て
「私、歩いて町まで下る道知ってるんだけど、良かったら一緒に歩いて行かない?」
「確かに、これを待つ気にはなれないね……」
彼女との帰り道は、バスで音楽を聴きながら帰るのと違い、楽しくて。
本当に些細な事でお互い笑い合った。
やがて帰り道も俺が見知った場所に出てきて、彼女との帰宅がもう少しだという事に気付く。
「なぁ、俺の家は直ぐそこだから。またな」
と言うと。彼女は
「ちょっと待って!」
と言って、暫し空を見上げてから数秒の後。
「ねぇ……。『月が綺麗ですね』」
と言った。
「うん? そうだね?」
僕がよくわからずにそう返すと、彼女は、少しムッとした、けれど少しほっとした表情になって。
「むう。やっぱ何でもなぁい!」
と言って、恥ずかしそうに笑った。
僕がこの言葉の意味を知るのは、もう少し後。彼女との別の物語で。
しかし、夏目漱石も案外ロマンチストだよなぁ……。
『I love you.』を『月が綺麗ですね』と訳すなんて……。
そして、このまま二人きりで居れるのなら、もう少し同好会のままでも良いかもしれないなんて思う様になってきた。それを言うと彼女は照れながら怒るのだけれども。
何気なく高校の時の部誌を懐かしく思ってみていたら
自分が書いたことすらわすれていた小説を発掘致しました…
ちなみに花火の時の気持ちや、終わっあとのアレコレは高校の時の実体験です(笑)
違いはリア充っぽい雰囲気が皆無だということです!!!!
コホン…。失礼いたしました…
しかし、若いなぁ…。よくこんな恥ずかしいこと書けるなぁ…と思うのですが、多分今載せているものをみても、後になったらそう思うのでしょうね
でも、こんな青臭さが自分でも大好きなのは変わらないのかも