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フリーターだった俺でも異世界でやっていける!  作者: 宵月八尺
第二章『仲間を従え迷宮に』
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第八話

 前回までのあらすじ


 迷宮の魔物はそんなに強くなくて少し残念です。

 あと、セレナの照れた姿は可愛いと思います。

 この迷宮がどれくらいの階層まであるのかは聞いてない。

 だから、今日の目標は10階までだ。

 それより少なければそれで終わりだし、多くても終わりだ。


 現在の位置は6階に来てすぐの所だ。

 少なくとも手こずる敵もいないしセレナに怪我もない。

 しかも、セレナが魔術を使えることも確認ができた。


 いい買い物をしたなと考えながら進み、弱い魔物をバッサバッサと斬り捨てて行く。

 と、そこに一個の箱が落ちていた。


「なんだ、あれ」

「宝箱ですね」


 宝箱と言われたが、その大きさはとても小さい。

 気持ち的には小さなジュエリーボックスくらいのサイズだろうか?


「そうか、拾うべきか?」

「そうですね、拾っても大丈夫だと思います」


 俺は恐る恐る箱を手に取り、中身を確認した。

 中に入っていたのは短剣だった。


「え、短剣?」

「ご主人様、きっと魔物が食べて排出されたものでしょう」

「そうなのか」

「はい」


 てことは、これは人が持ってた物ってことになるのか。

 それは残念なことだ。

 ん?排出?


「まぁ、いいか。そろそろ次の階に行くか」

「はい、ご主人様」


 内心うわぁっと思いながら顔に出さない様に誤魔化しつつ次の階に目指した。


 7階に到達して少し進んだら魔物が何体か固まっていた。

 固まっていたといってもせいぜい7体だ。

 しかも、その全てが俺に一撃で倒せることができる。


「なんか、さっきまでより数が多くなったか?」

「ご主人様、7階からは数が多くなりますので、気をつけてください」


 それ、早く言おうぜ。

 問題はないけどさ。


「ご主人様、お待ちください」

「ん?」


 そう思いながらも魔物を狩りつつ前進していると、セレナが俺を呼び止めた。

 どうやら、魔物の気配でも察知したようだ。


「敵がいたか?」

「はい、奥の空間に。ただ先程よりも妙に多いです」

「多い? そんなにか」

「10体はいると思います」

「まぁ、行くだけ行ってダメなら逃げよう」

「わかりました」


 奥に進むと誰かが戦っていた。


「あれ、先客いるし」


 俺はそう呟いてしまっていたがどう見てもヤバイ状況ということだけはわかった。

 前で14体のサヴラードと戦っている女の子はボロボロでも懸命に攻撃を受け流している。

 女が2人と男が1人のパーティーだった様だが男はやられてしまった様だった。

 もう1人の女はというと、倒れた男の元でなにかしている様子だったが単に泣いているだけのようにも見えた。


「ご主人様、どうされますか?」

「え、助ける義理はない気がするけど。ここで、スルーしたら初っ端の迷宮探索で汚名が注がれそうだな」

「一応、冒険者ですし自己責任ですので責められることはないかと思います」

「どうせ、この状況だし、アレを片付けないと逃げるのも大変だろうよ」

「確かにそうですね」

「さっさと救援に向かった方がいいだろうが、セレナは俺からもう少し血を吸っとけ、一分以内で」

「わかりました」


 そう言ってセレナは血を吸い始める。

 あんだけ頑張ってるしあと一分くらいは耐えるでしょ。

 頑張れとか思うけどどうせ後処理は俺らだろう。


「吸い終わりました」

「じゃあ行くか」

「ご主人様、その前に1つよろしいですか?」

「なんだ?」

「はい、基本魔術の使用許可を頂きたく」

「魔術つかえたのか!?」

「一応でも魔族ですので」

「わ、わかった、許可する。というか最初から使ってくれよ」

「申し訳ありあません。許可なく使うのはよろしくないので」


 奴隷法は面倒だなと思ったが、下手に主を巻き込んで死に至らしめる者もいるから仕方ないという感じなのだろう。

 そんな事よりも今は前だ。


「じゃあ、さっきと同じで右から頼む」

「わかりました」

「行くぞ」


 俺の合図で飛び出し俺は左からサヴラードを斬り伏せていく。

 頑張って戦っていた女の子は当然「え?」とびっくりしたがそれよりも目の前の敵に忙しくてそれどころではなかった様だ。

 一声掛けた方が良かったかな? とか思ったけど別に良いだろう。

 助けてるんだし。


 サヴラードも突然の乱入に驚いて同様したみたいでこちらに俺の剣撃に対応できずさらに2体サヴラードを切り伏せた。

 セレナはというと、魔術を使っているようなのだが何を使ってるかわからない。

 ただ、近づかれる前にサヴラードの首が落とされていく。

 因みにその俺がちらっと見た時には既に5体目であった。


 俺も俺だがかなりえげつない攻撃だと思う。

 てか、短剣いらないじゃん。


 サヴラードは勝てないと悟ったのか一気に8体の仲間がやられると逃げていった。

 戦ってた女の子は緊張が取れたからなのかその場に座り込んでしまった。

 後ろで泣いていた女の子はやっぱりただ泣いていただけみたいだ。


「ご主人様、ご無事ですか?」

「あぁ、問題なしだ。それよりこいつらはどうする?」

「えっと、治療しますか?」

「頼めるか?」

「……かしこまりました」


 ワンテンポ遅れてセレナから返事が返ってきた。

 セレナは戦っていた方の女の子に近づいていった。

 なんかちょっと不服そうだな。


「貴女、怪我を見せてください」

「ひっ魔族!?」


 そういうと、カタカタと震えながら剣を握ろうとするが緊張が解けてしまったせいもあってか力が入らないようだった。


「取って食ったりしません。ご主人様のご命令です。早く傷を見せないさい」

「え……あ、はい」


 彼女は俺をちらっとみると納得したのか受け入れて治療を受けた。

 すぐに傷は治ったようで、立って男の元に駆け寄った。


「あ、息が……お願いです助けてください!」


 戦っていた女の子は男の状態が悪いのをみるとすぐにこちらに助けを求めた。

 泣いてた女の子はというと、依然として泣いたままである。

 いつまで泣いているのだろうか。


 セレナは俺の方を見てどうしますか?という表情をしたから「診てやれ」と一言だけ言った。

 それに従って、セレナは男の元へと歩み寄り状態を診ていた。

 少ししたらセレナは首を振って「もう死んでる」と伝えた。


「すごい魔術も治療もできるんだからできないんですか!」

「流石にそこまで高度な治療魔術はできません」

「そんな……」

「天級や神級で蘇生ができる魔術もありましょうが、私は王級までですので」


 なんか、すごい会話してるな。

 なんだよ天級と神級てあとで細かくセレナに教えて貰おう。

 っと、そんな事よりこっちが先か。 


「えっと、君らはその男との関係は?」

「冒険者、アールグ様の奴隷になります。私は前衛のイリスと言います。そっちで泣いてるのがカルミアです」

「セレナ、どうすればいいかな?」

「ご主人様、そちらの方が冒険者なのでしたらそちら2人の奴隷の所有者はご主人様になりますが?」

「え?」

「えっと、知らなかったのですか?」


 え、なにそれ聞いてない。

 どうしたものか。


「えっとですね……」


 セレナは知らないと思わなかったのか少し呆れたような感じで説明された。

 要するに貴族の奴隷と違って冒険者の奴隷はドロップ品扱いになるそうだ。

 ただ、拾ったら一度奴隷商の方で登録をしなきゃらしい。

 しかもその死んだ主人のカードも回収してだ。


 登録しないと後々面倒になるからちゃんとしたほうが良いと言われた。

 予想外に奴隷が増えたけど、この子達のケアってどうするの。


「とりあえず、迷宮にでて手続きをしなきゃいけないのはわかった。それで、この男の死体はどうする?」

「焼いて灰にします」

「遺品とかは?」

「欲しいものがあれば取っても平気ですが、魔物の餌にさせない為焼きます。あと身分証になるカードだけはちゃんと回収してください」


 俺は言われた通りにカードを回収した。

 ちらっと詳細を見てみるとでかでかと『死亡』と出ていた。

 うわぁと思いながらポケットにしまった。


「それで、セレナはなんで怒ってるんだ?」


 そう、さっきからセレナはなんかちょっと怒っている。

 理由はわからないがちょっと怒っているのはわかるくらいには怒っている。


「いえ、ご主人様に助けていただいたのにお礼の一つもないのです。怒っていないご主人様が少し不思議なくらいです」

「あぁ、そういうことね」


 まったく気にしてなかったと言えば嘘っぽいが、どうでもいいと思ってた分そこまで気にすることでもないと思ってはいたから別にお礼を言われてもな。


 近くで言っているので流石に聞こえたみたいでイリスは立ち上がり


「助けて頂きありがとうございます。ほら、カルミアも」

「はい、ありがとう……ございます……」

「よろしい」


 セレナは2人がお礼を言ったこと満足した様だ。


「じゃあ、逃げた奴らが戻ってくる前に地上に戻ろう」

「はい、ご主人様」

「わかりました」

「はい……」


 セレナが魔術を使ったのか男は燃えて灰になった。

 カルミアは灰になったかつての男であった物を見つめながらその場をあとにして俺について来た。

 戻る途中でも当然いくらか魔物が出てきたが6階より上であるため割合少ない数なので苦労せずに戻ることができた。

 外に出ると、まだ男がいて出てきた俺らに気がついた。


「あれ? なんか人数増えてないか?」

「あぁ、なんか中で奴隷を拾っちまった」

「そういうことか、ちゃんと奴隷商で手続きしとけよ」

「おぅ、ありがとう」


 そんな会話をして、迷宮を後にした。

 時間的には昼はとうに過ぎた辺りのようであった。


 都まで戻るとセレナにも迷宮前の男にも言われたので奴隷商にさっさと行くことにした。


 奴隷商に到着するなり受付嬢に迷宮で拾ってきた奴隷について伝えた。

 受付嬢はすぐに奥の部屋で手続きをするからと案内された。

 待っていると店主が現れた。


「いや~、また奴隷を見に来てくれたんですか?」

「いや、迷宮でこの子達を拾って来ちまったからここに来たんだ」

「それは更新ということでいいんだよな? それとも、彼女達を売るのか?」

「売ることもできるのか」


 二人共売られると思ったのか、顔が少し青ざめた様だった。


「それは、当然だよ。迷宮で拾った奴隷はドロップだからな。それを売りに来る連中も少なくないぞ」

「てことは結構奴隷の主が死んじゃうケースってあるだな」

「そりゃ勿論。大抵は奴隷を盾にしちまう事のほうが多いがな。主を失った奴隷はそのまま主死亡奴隷になるんだよ。」


 その辺りはさっきセレナが言っていた話の続きなのか。


「あぁ、その辺はわかる」

「そうか、説明が省けていいや。それじゃあ、手続きをするが嬢ちゃん達と主人のカードはあるか?」

「それなら回収してきた」

「なら楽でいい。あと、念の為にお前さんのカードも出してくれ」


 俺は言われた通りにさっき拾ったカードと俺のカードを出した。

 彼女達は自分でカードを持っていたので自分で提出した。 


「無いとは思うんだが一応主を殺して奴隷を奪い取るって奴がいるせいで一々確認しなきゃいけなくて面倒だよ。問題なしだ。すぐに更新するからまた待っててくれ」

「わかった」


 それからすぐに戻ってくると、やることはさっきと同じらしく指を押さえて終わった。


「にしても、1日で奴隷を3人って凄いな。しかも迷宮で二人も拾うなんて運がいいな」

「運がいいで済むのか?」

「そりゃ主がクエスト死んだ所に出くわすのは少なくはないが、迷宮の場合は生存率が低いからな」

「そうなのか」


 今のところ、生存性に危機は感じてないんだよな。


「そう考えると嬢ちゃん達の方が運が良かったな」

「……っ!」


 カルミアが店主の言葉を聞いてただジッと見つめていた。


「更新に金はかからないんだな」

「本当は金を取りたいが所有権を移すだけだからな。取るに取れないってわけだ」

「じゃあ、帰るわ」

「おう、また機会がってこのペースだと明日も来るかもな」

「それはないだろう」


 そう言い残し奴隷商を後にした。

 店を出たときには夕暮れだったので宿屋に向かった。


「あら、お帰りなさい。出て行った時に比べてすごく人数が増えてないですか?」


 宿屋に着いて早々に声をかけてたのは宿屋の看板娘だ。

 そして俺は、今現在名前を知らない。 

 どうも人の名前に興味が無いからか、そもそも名前を尋ねるという行為が億劫だ。

 人見知りじゃないぞ?ただ、話すネタが無いから話そうとしないだけだ!


「あぁ、奴隷を買って迷宮に行ったらなんか更に拾っちまって俺を含めて4人になっちまったよ。部屋を変えるかダメでもそのままの部屋でとかできるか?」

「そうですね、この宿では奴隷に対して決まりはないのですが、お部屋はどこも大きさは変わらないので他の部屋を借りて頂くか、今のお部屋で寝ていただくかになりますね。ただ、今現在部屋は満員ですので申し訳ありませんが今のお部屋で寝ていただく形になりますが」

「じゃあ同じ部屋にするしかないか。それでお代は?」

「最初と同じで銅貨60枚先払いです」

「そこの値段は変わらないのね」

「そうなりますね」

「さっき奴隷に対して決まりとかあったりするとか言ってたけど?」


 俺はお金を出しながら気になったので質問をした。


「それは宿によって変わりますが、王国や貴族が多い所での宿の場合は奴隷を宿泊を禁止してることがあります。その代わりの部屋は用意されているようですが」

「そうなのか、それなら奴隷も大丈夫な宿を探すのって面倒そうだな」

「王国や貴族がいるような所でもなければ大丈夫ですよ」


 宿探しが面倒かなとは思ったがそうでもなさそうでなによりだ。


「じゃあお金だな」 

「はい、しっかりと受け取りました。では鍵になります。あと、ご夕食はお部屋で摂りますか?」

「ありがと、いや今日は下で食べさせてもらうつもりだ」

「でしたら後でキッチンに声をかけてくださいね」

「そうさせてもらう」


 俺はそう答えると部屋に戻る。

 セレナ達は何も言わずについて来ていた。


 部屋に戻ったのはいいが、一人部屋に四人は中々に多い。

 狭すぎて動けない程ではないが、ちときついくらいだ。


 が、セレナ達は床に座るわけでもなく部屋に入ってから立ったままだ。


「座らないのか?」

「ご主人様がお許しを頂かなければ……」


 俺の質問に静かに答えるセレナ。

 なにそのちょっと面倒臭い感じ。


「あぁ、座っていいぞ?と言っても椅子も無いしベッドにでも腰を掛けとけ」

「ベ、ベッドですか!? そんな、ご主人様が寝るベッドを汚してしまいます」

「いやいいよ、汚れたくらいで寝れないって喚いてたら野宿なんてできないぞ。気にするな座れ」

「はい、かしこまりました」


 と、セレナは素直に従ったのだが……。


「え~っと? イリスとカルミアだっけか、どうした? 座らないのか?」

「だ、大丈夫です」

「……」


 イリスはそう答えたがカルミアは何やら警戒している様子だな。


「そうか? そんなに気にしなくてもいいんだが」

「い、いえ! 大丈夫です」

「そうか……」


 言い争うのも面倒になったのでここで止めた。 



「さてと、お腹も空いたし荷物をおいてそろそろ飯にしよう。」

「かしこまりました」

「わかりました」

「……はい」


 俺達は飯にするために下に降りて行った。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字は気をつけていますがそれ以前に文が大丈夫かな?と思い始めてたりします。


今回でやっと『魔術を使う』ことができました!

とは言ってもまだまだ序の口ではあるんですけどね。

自分で作った細かな設定に首を絞められても尚も楽しんで作ってます。

設定作るのって楽しいよね。あとTRPGって楽しいよね。


次回は5月28日土曜日か29に日曜日くらいになると思います。

進行が遅くならなければきっとできるはず!

では、お楽しみに

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