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フリーターだった俺でも異世界でやっていける!  作者: 宵月八尺
第二章『仲間を従え迷宮に』
8/51

第七話

 前回までのあらすじ


 破格の値段で奴隷を一人購入できました。

 どうやら、売れ残りでしかも条件付きだったからさっさと売り払いたかったようです。

 適当な服と短剣を持たせたから迷宮に行ってもいいよね?


 俺たちは迷宮に向かうために都の外にでた。

 迷宮は何処だと周囲を見渡してみたが当然見える距離にはなかった。


「さて、都から出たのはいいけど迷宮はどこにあるかな?」


 なんてことはない、場所は聞いている。

 都をでて北東らしい。

 因みに今出てきた位置は一応東門なのだとか。

 衛兵とか検問みたいなのがないが、一応そうらしい。


「迷宮でしたら、あちらの方にあると思います」

「セレナは迷宮の位置はわかるのか?」

「い、いえ、先ほど血を分けて頂けたので少し気配を辿れるだけです」

「気配か、因みにそこに迷宮があると思う理由は?」

「えっと、人が少ないけど魔物が沢山いるようなので……」

「まぁ、行くだけ行ってみるか。最悪ただの魔物狩りでも問題はないしな」


 と言っても、セレナが指さした方は東門を背に西だとして綺麗に北東を指してる。

 血ってすげーな。


 指をさした方向、大体北東に30分程歩いた。

 一人男が立っていて、その隣には迷宮の入口の様なものがあった。

 いや、どうせあれが迷宮の入口だろう。


「ん? お前たち、冒険者か?」


 男はこちらに気がつくと声をかけてきた。


「あぁ、迷宮探索しに来た」

「そうか、気をつけろとだけ言っておくぞ」

「なんかあったのか?」

「別に何かあったって事はないが、迷宮はそこらのクエストなんかよりよっぽど死ぬからな」

「そうか、気をつけるよ」


 そんな会話をして俺とセレナは迷宮に入る。

 セレナは入る手前でペコリと男にお辞儀をしていた。


「なんか、チェックとかされるのかと思ったけどないんだな」

「はい、そういったことを冒険者にするのは失礼に当たりますので」

「失礼なのか?」

「えっと、商人と同じで冒険者にも商売道具となる装備があったりするそうなので……」

「そうなのか、俺は見られても困るものは持ってないけどな」


 そういうとセレナは「え?」と呟いた。

 なんだろうと思って振り返る、そしてセレナの視線を追ってみると俺の左手にその視線が注がれている。

 そう、俺の商売道具はこの刀だ。

 商売というか、獲物だけど。


「これは珍しいか?」

「珍しいと思います。少なくともそのような武器は見たことがありません」


 そんなことを話しながら角を曲がった。

 なにも考えずに角を曲がるとそこに魔物が一匹いた。


 《キシャアアアア》


 犬の様な見た目だが、立ってるし棒きれを持ってる。

 なんだこれ。


「ねぇ、セレナこれなに?」

「え、え? ご主人様、コボルブです」


 コボルブ? あれか、コボルド的なあれか


「魔物だよね?」

「ここは迷宮です。魔物か人しかいないです」

「そっか、じゃあ狩ってもいいんだな」


 俺は初めての迷宮で迷宮の魔物と対峙した。

 すっごく楽しい。

 そう思ったら笑顔になっていた。


「あ、セレナ危ないからちょっと下がってて」

「えっと、ご主人様。戦うのでしたら私が」

「邪魔になるから後ろでいい」

「は、はい」


 俺はセレナの言葉を遮る様に命令をして下がらせた。

 とは言っても所詮は犬畜生一匹だ。

 迷宮の魔物だからウリンコと同等ではないだろうから油断せずに首を狙おう。


 《キシャア!》


 コボルブは一言叫ぶとこちらに飛びかかってきた。


「なんだ、期待したけどそんなものか」


 俺は残念な気持ちで居合い斬りを放ち、コボルブの首を落とした。

 戦闘は一瞬で終わる。


「うーん、もう少し捻るのある戦闘がしてみたいな」

「ご、ご主人様は本当に冒険者になったばかりなのですか?」

「え? そうだよ?」


 とても、この世界に来たのが数日前とは言えないけど。


「戦闘センスや魔術のセンスがある人でもそんな一瞬で魔物を退けるなんて……」


 セレナは驚愕している。

 なんだろう、会う人の殆どが驚愕してるな。


「こいつが、弱かっただけだろ」

「ご主人様が強いだけかと」


 なんか、セレナの視線が痛い。


「これ、素材とか回収したら売れる?」

「魔物でしたら核を落としますのでそれを回収してギルドに持っていけば換金してもらえるはずです」

「そうか、ありがとう」

「いえ、そんな、お礼を言われるようなことではありません」

「それで……核ってどれ?」


 セレナは再び「え?」っといいながら、こちらに近づいてきた。


「魔物の屍は素材を剥いだらすぐに消えてなくなります。その後で核が残りますのでそれを回収という形になりますね。素材は回収しなくても数分で核を残して消えます」

「ほぅ、便利だな」

「便利なのでしょうか?」


 セレナの疑問は放置でセレナから核を受け取る。

 宝石の様に綺麗だ。


「青色の宝石?」

「これはランクDの魔物が落とす核ですね」

「あれ、地上での生物は核落とさないよね?」

「はい、これは迷宮の魔物のみ落としていますね。理由は不明です」


 俺が理由を尋ねる前に言われてしまった。


「まぁいいや、奥に進もうか」

「はい、ご主人様」


 とりあえず、奥に進まにゃなにもみつからない。

 適当に進んだ。

 迷宮なだけあって迷路っぽいというか、入り組んでる様だ。


「ご主人様、奥の部屋に魔物の気配があります」

「何体かわかる?」

「すみません、そこまで正確には」

「そっか、まぁ行こうか」


 奥に進むとコボルブが3体いた。


「あ、セレナ、悪いけど右のコボルブを一体お願いしていい?」

「はい! 頑張って倒してみせます!」


 なんか、元気になったよこの子


「じゃあお願い。左二体は俺が狩るから」

「わかりました」


 タイミングを合わせて突撃した。


 俺はさっさと一体のコボルブの首を落とした。

 次に二体目だ。

 居合い斬りの面倒なところはちゃんと納刀しないといけない。

 となると不意打ちも兼ねて基本的に一回くらいで決めてダメなら別の技が欲しい


 要するに、このコボルブは練習台だ。


「さて、どうやってお前を狩ろうか」

 《キシャアア!》


 返事をするかの如くコボルブはこちらを威嚇している。

 どうしようかな、普通に斬り殺せる気がする。

 俺はジリジリと近づいて行った。


 コボルブはキシャア!と叫んで棒きれを大きく振りかぶった。

 それを見た俺は一歩大きく踏み込み懐に入り、斜めに斬り上げた。


 また一撃で仕留めてしまった。

 ちょっと骨がなさすぎる気がするぞ。

 セレナはというと、もう決着がつくところだ。

 コボルブの首に短剣を刺して止めだ。


「苦戦してたみたいだけど、大丈夫か?」

「あ、すみませんご主人様」

「いや、別に怒ってないし、無理そうなら下がってていいんだけど」

「い、いえ! 戦わせてください! ご主人様の役にたたないと買ってもらった意味がありません」


 ぼっちで寂しかったからって理由じゃ納得してくれなさそうだな。


「それにしても、辛そうだな。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です。少し……」


 そう言って、セレナは口を閉ざした。

 俺の頭の上にははてなが沢山だ。

 少しってなんだと考えてすぐに思い至った。

 この子は吸血鬼なんだから、血でも欲しいんじゃね?と


「血が欲しいなら飲むか?」

「いいんですか! あ……」


 セレナはパァっと笑顔になったあとすぐに自分の失言に気づいてやってしまったと顔が青ざめた。

 何を気にしてるんだろうか?


「気にするな、戦うのにセレナが万全じゃないと背中を預けられない」

「で、ですが」

「じゃあ、吸血しろ。俺に支障が出ない程度で」

「は、はい」


 俺の命令にセレナはチロチロと俺の首を舐めたあとカプリと牙を立てて血を吸い始めた。

 3分程吸ったくらいで口を離してこちらを見つめてきた。

 その瞳は薄く紅い色が揺らめいていた。


「なんだ、もういいのか?」

「えっと、はい。ありがとうございます」

「なら、行こうか。忘れかけてたけどここ迷宮だし」


 そう、ここは迷宮だ。 

 死と隣り合わせである迷宮だが、死の危険は感じてない。

 セレナも元気になったみたいだ。


 それから何体かコボルブを狩っていたが俺にも支障はなかった。

 それに加えて吸血後はセレナの動きも格段に良くなった。

 さすが吸血鬼、いや今更だけど女の子だから吸血姫かな?

 さっきまでコボルブ一体に苦戦していたのに今じゃ一体は余裕で狩れている。


 俺とセレナは苦労をすることなく5階まで到達した。

 ランク付けはあってもレベルの概念はやっぱりないみたいで然程強敵になりえそうな魔物はいなかった。

 と、いうかコボルブしかいない。

 コボルブ以外にも魔物はいるようだが、浅い階には魔物の種類が偏り安いとセレナは言った。

 加えて低階層の魔物達は共食いもよくあるとか。


 俺は一応としか言えない程度で警戒しながら歩いているとセレナが呼び止めた。

 どうやら、セレナが魔物の気配を察知した様だ


「ご主人様、魔物がいます」

「ん? コボルブか」

「いえ、違う気配です」

「違うならそれはそれでいい。狩るだけだ」


 セレナが危険です。と言っているが気にせず進んだ。

 奥には魔物が一体いた。

 それはコボルブではなく、ウロコの様な身体にワニの様な頭をした人型の魔物だった。


「何これ、リザードマンかよ」

「ご主人様、サヴラードです」


 ごめん、どう見てもリザードマンとしか言えない。

 だってどう見てもトカゲとかそういう爬虫類っぽいんだよ?

 しかも二本の足で立ってて手には剣と盾。

 俺の想像してたリザードマンはこれなんじゃないかってくらいリザードマンしてるよコレ!


「サヴラードはランクCの魔物です。こんな低階層にいるはずがないのですが」

「そこにいるんだから、いるんだろ」

「ご主人様、気をつけてください。サヴラードは並みの兵士では歯が立たない強さです」


 ほんとに? それちょっと期待しちゃうよ?


「やるだけやるさ、セレナは下がってろ」

「わかりました」


 とりあえずセレナを下がらせた。

 サヴラードは俺とセレナの会話が終わるのを待っていた。


「なんだお前、一体一でもお望みだったか?」

 《グルゥ》


 予想外の反応。

 こちらの言葉を理解してるのか、タイミングよく鳴いただけか。

 俺は居合い斬りをする為の構えをしつつ近づく。

 サヴラードも盾を構えながら距離をとりつつ間合いを計っているような動きをしている。

 並みの兵士じゃ敵わないってのはそうなんだろう。

 他の魔物や冒険者を見たわけじゃないが、戦士なんだろうとは思わせられる。


 俺は一気に踏み込み、居合い斬りを放つ。

 サヴラードは踊りたようだがそれでも冷静に盾で受けた。

 キンッと音と共に俺のカタナが弾かれ無防備な状態になる。


 その隙を逃すまいとサヴラードは切り込んでくる。

 俺は少し無理な体勢で一歩後ろに飛ぶ。

 が、避けきれなかった。

 僅かに左の肩を切られ、服が血で滲む。

 俺は転ばないように気をつけながらさらに距離をとる。


 セレナはなんか慌てているが、大したことじゃない。

 何故って? こちとら痛みまで再現された死ぬ夢を何度もみてるんだよ。

 だが、痛いものは痛い。


「あぁ、痛いな。これ初めてのダメージだな」

 《グルル》


 サヴラードは笑っているようだった。

 当人は避けられるとは思わなかったらしい。


 さて、俺はというとさっきは魔力を込めずに居合い斬りを放った。

 ならば今回は魔力を込めてみようと考えた。

 因みに言うと、これも実験と練習を兼ねてる。


「さぁ、次は避けられるといいね」


 再度居合い斬りを放つ構えをする。

 先ほどと違うのは魔力を込めているというだけ。


 そして居合い斬りを放つ。

 サヴラードも盾で受けた。

 が、盾がまるでないかのようにスパッと斬れてそのままサヴラードの首を落とした。

 そして、緑色の宝石が落ちた。 


 首を落としたのを確認するとセレナが駆け寄ってきた。


「ご主人様、怪我をお見せください」

「え、大丈夫だよこれくらい」

「いいから!」


 セレナが少し強引だったため、とりあえず傷口を見せた。

 そうするとセレナが傷口に手を当てた。

 俺がなんだ? と思っていると手から淡い緑色の光が発せられた。

 そして、俺の傷はみるみる塞がり何もなかった様に綺麗に治った。


「へぇ、セレナは魔法とか使えるんだな」

「はい、吸血鬼族は比較的魔法にも武術にも長けた者が多いそうです」

「そりゃいいな。セレナみたいに可愛くて魔法も使えるのが半額以下ってお買い得過ぎたな」


 と、俺は冗談めかしに笑いながら話していたらセレナは顔を赤くしていた。

 ちょっとは距離が縮まってたらいいんだけどな。


 そして俺達は迷宮をもう少し下の階に行くことにした。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


そういえば、前回奴隷について書くだけ書いて忘れいていましたが前回から『奴隷を従えて迷宮編』になりますね。

編集とかのやり方がわからなくて書けていませんが……


覚えたら変更しようと思います。

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