第六話
前回までのあらすじ
泊まった宿の隣がギルドでした。
何事もなく無事に冒険者になれたよ。やったね。
あと、パーティー組んだ方がいいらしいけど俺はボッチだから奴隷を勧められました。
ボッチは今日も元気です。
「よし、今日はさっさと奴隷を見に行って迷宮に行こう」
昨晩は迷宮の事とか考えようと思っていたが気がついたら寝てしまった。
どうせ奴隷を買うかねはない。
いくらか貰ったから尊重から貰った金貨5枚にはまだ手はつけてないがそれをカウントしないと有り金は銀貨3枚とちょっとだ。
流石に奴隷が金貨5枚で変えるほど甘くはないだろうから、さっさと迷宮に行きたいな。
そして気づく。
俺、また場所聞くの忘れてたわ。
まぁ、ギルドに行く予定はあるしその時聞けばいいか。
部屋の鍵を閉めて受付に鍵を渡してギルドに向かった。
徒歩一分の。
「よぉ、スピリア。ギルドマスターはいるか?」
「はい、いますですね! 奥にいるですね、入っていいですね!」
「わかった。ありがとう」
さっさと挨拶を済ませ奥のギルドマスターのいる部屋に行く
「はいるぞー」
「待っとったのじゃ。入れ」
ノックをせず声だけ掛けたがすぐに反応が返ってきた。
さっさと扉を開けて中に入る。
「結構早かったのじゃな。もう少し遅く来ると思ったのじゃが」
「あぁ、奴隷を売ってる場所も迷宮の場所も聞いてなかったからな」
「な、なんじゃ、金が欲しくてきたわけじゃなかったのじゃな」
「そういえば、なんかあったな」
「まぁよいそこに座れ、これがお主の報酬じゃ。ありがたく受け取るとよいのじゃ」
「ありがたく受け取っておくわ」
ジャランッと音をたてながらお金の入った袋をテーブルにおいた。
俺は座りながら袋を受け取った。
結構入ってるみたいだ。
「これ、いくらくらい入ってるんだ?」
「む? 気になるのか? 開けてもいいのじゃぞ?」
「数えるのは面倒だから聞いた方がはやいと思ったんだが」
「それもそうじゃな、それは大体金貨30枚じゃ」
「それ、盗賊一人にしては多くないか?」
「何を言っておるのじゃ。お主が仕留めた男は盗賊でも頭じゃぞ?それくらいは普通なのじゃ」
「そうなのか」
「それでこっちが紹介状なのじゃ」
奴隷商に対する紹介状を受け取った。
その後は特に話すこともなく奴隷商と迷宮のある位置を教えてもらってギルドを出た。
奴隷商の場所は商業区らしい。
「商業区はこっから5分程か」
商業区と言えば当然お店だ。
奴隷もちょっと楽しみだけど、実はウィンドウショッピングも好きだ。
というか、必要なものとか見たり、作れそうなものを見るのが好きだったりする。
俺の家にあるバックの中にはハサミやら包帯やらが入ってて軽いメディックキットレベルだったこともあったくらいには、そういうのを見るのが好きなのだ。
「迷宮も早く行きたいが必要なものも揃えたいな……いかん、とりあえず奴隷商に向かわねば」
足早に奴隷商に向かう。
いや、奴隷商を探す。
ギルド公認の奴隷商にはギルドの紋章の刺繍が入った旗印があるらしい。
その旗のおかげですぐに見つかった。
もう少し迷うかと思ったがそんなことはなかった。
「そんなに迷ってたまるか」
俺はそんなことを呟きながら奴隷商の中に入る。
「いらっしゃいませ! 奴隷の購入ですか?」
元気な声で女性が声を掛けてきた。
「あぁ、そうなんだが。ギルドマスターからの紹介状を貰ってるんだ」
「ギルドの紹介ですね! 少々お待ちください。すぐに店主を呼んできます」
10分程して先ほどの女性と共に男が、いやおっさんが出てきた。
「ギルドマスターからの紹介ってことは奴隷の購入は初めてだな?」
「そうだ、初めてだ」
「なら奴隷商協会に則り説明させて貰う」
「頼む」
「どうせだから中で奴隷を見ながらにしよう。なにが欲しい? と言っても冒険者って事は迷宮奴隷だろう?」
「迷宮奴隷? 迷宮に連れて行く専用なのか?」
「お前さん、まさかそういうのも知らないのか?」
「悪いな、ちょっと記憶が失くてな」いや、ないわけじゃないけど。
「そうか、じゃあ一応説明してやるか」
「頼むわ」
「迷宮奴隷ってのは要するに戦闘用の奴隷だ。別に普通の地上のクエストでの戦闘に連れてっても問題はないが大体の人間は迷宮に連れて行くからわかりやすく迷宮奴隷って付けられてるんだ」
「そうなのか」
「あとは一般奴隷っていう家事奴隷と性奴隷だな。どっちも基本は家で家事をするのが主だが性奴隷だけは抱いてもOKと最初から了承してるやつだ」
「ん? 家事奴隷は抱いちゃいけないのか?」
「ここの奴隷は基本的に何らかの事情で売られてるのは流石にわかってると思うが、その中でも家事に自信があるけど相手はしたくないってやつもいるし、奴隷商協会でも、奴隷は物として扱うが少なからずの人としての生きさせるっていう制定があるんだよ」
「なんか、ややこしいんだな」
「最初の段階で性奴隷として扱われたくない場合は一般の家事奴隷となるんだ。買われた後で主人と了承したってやつも多いけどな」
「じゃあ、わざわざ性奴隷と分ける必要あるのか?」
「理由がないわけじゃないぞ? 家事奴隷よりも性奴隷の方が高く売れるからな」
「あれ、迷宮奴隷は?」
「そっちは性奴隷としての了承は入ってないな。それは買ったあと本人と交渉してくれ」
「そうか、わかった」
「とりあえず、迷宮奴隷を適当に連れてくるから見てくれ」
そう言っておっさんは奥に行った。
すぐに戻ってきた。
「何かお眼鏡に適うやつはいたか?」
左から金髪犬耳少女、茶髪猫耳少女、紫髪の幼女、やせ細った少女だ。
この四人だ、正直グッと来る子はいない。
服装は皆布切れを纏っただけだ。
というかおっさんは女の子を握らせる気満々なのか、元々女の子しか買う気はないけども
「そういえば店主、ここで安いのってどれくらいだ? 流石に冒険者成り立てで持ち合わせもないんだ」
「安いのか? 魔族種だったら一人いるが……」
ちょっと困惑した表情をしている。
「売っちゃいけない奴とかか?」
「いや、違うちょっと買う上での条件があってな」
「まぁいいや見せてくれよ」
「わかった。今連れてくるから待ってろ」
15分、ちょっと待った気がする。
そんなことを考えていると奥から連れて出てきた。
「ほら、さっさと歩け!」
おっさんはそういいながら一人の白銀の髪をした女の子が出てきた。
ん? ただの女の子?
「えっと、その子が魔族種なんですか?」
「あぁ、待たせたな。こいつが魔族種吸血鬼族のセレナだ」
セレナと言われた女の子はすごく顔色が悪い、奴隷ってのは絶望的な表情とかしてて目がうつろな感じだったらわかるが何か違う感じだ。
何が違うか聞かれても答えられないが違和感はあるとだけ言える。
「その子、調子が悪いんですか?」
「それがさっき言ってた条件なんだよ」
「と、言いますと?」
「こいつは、というか吸血鬼族は最低でも数日に一回のペースで吸血しないと身体を壊すらしくてな」
「吸血は人じゃなきゃダメなんですか?」
「いや、基本的には関係ないな。吸血相手は人種でも獣人種で同じ魔族種でも関係ない」
それって結局、この世界で言う『人間』ってことなんじゃないのか?と思ったが言葉にはしないでおこう。
「因みにだけどいくらなんだ?」
「魔族種の迷宮奴隷はどれも安くてな基本は金貨60枚だ」
「60枚か……」
「だが、こいつは条件付きの奴隷だからもう少し安くして金貨40枚でどうだ?」
「う~ん、金貨40枚か全然足らないな」
足らないのは確かだが、ちょっとわざとらしく言ってみた。
「な、なら金貨35枚でどうだ」
「因みに取り置きってできます?」
「取り置き? そいつをか?」
「そうだ、こいつをだ」
「こんなの売れないから取り置きなんて事しなくたっても平気だろうが取り置きはできるぞ」
「そっかわかった」
俺はそう言ってセレナに近づく
セレナは肩をビクッとさせて俺を見上げる。
意外と小さいな身長は160前後かな?
「えっと、セレナ。ちょっと俺から血を吸ってみてくれるか?」
「え?」
「ちょっと勝手なことはされると困る」
「いいよ、この子お金溜まったら買うし」
「か、買ってくれるなら問題ないが……」
セレナは俺とおっさんの顔を交互に困惑した表情をしながら見ていた。
おっさんが俺の言うことを聞けというと俺の方を向いた。
「し、失礼します」といいながら俺の首元をチロチロと舐めて牙を立て血を吸った。
1分くらいだろうか、それくらいで吸血が終わった。
セレナの顔色は少しだけ良くなったように思える。
「ありがとうございましゅ」
「どういたしまして」
セレナが噛んだところは無視しておっさんは話を戻した。
「お前さん、因みに持ち合わせはいくらなんだ?」
「持ち合わせ? 今は金貨25枚くらいだな」
「じゃあ、金貨25枚でいい。さっさと買ってってくれ」
「なんでまた?」
俺はラッキーと思いながらも疑問を投げつけた。
「こいつは他の奴隷商でもたらい回しにされててな、吸血鬼ってのは主に牙を立てなきゃいけないからな、いつ裏切られるかわからないような奴だ。物好きでもなけりゃ好まれないんだよ」
「こんなに可愛いのに?」
「可愛くても吸血され続ければ弊害だってでるからな」
弊害か、それはちょっと怖いな
破格だし買うけど。
「まぁ、金貨25枚でいいってんならさっさと購入するか。手続きは?」
「じゃあ悪いがまたそこで待っててくれ」
そう言いながらおっさんはまた部屋から出て行った。
俺はというとその間に金貨25枚を準備して待っていた。
おっさんが戻ってきた。
「待たせたな、じゃあ購入する前にお前さんのカードを出してくれ」
「ちょっと待ってくれ。これだ」
「んで、セレナ、こっちに来い。ここに指を押し付けろ」
そう言われるとセレナは近づいて行ってカードに指を押し付けている。
「これで奴隷契約は終わりだ」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
「は、早いんですね手続き。というか、お金まだ払ってませんよね?」
「ん? 別に足らなきゃ後で払ってくれればいいしな。 そこは冒険者協会と連携してるだけの理由はあるってもんよ」
「えっとこれ、金貨25枚です」
「はいはい、確かに」
おっさんは大した確認もせずに受け取った。
「別に今はしなくてもいいが、宿にでも戻った時にでも奴隷のカードは確認しておけよ」
そう言っておっさんは部屋から出て行った。
どうやら、手続きとかはこれで終わりらしい。
「えっと、セレナこれからよろしく」
「よろしくお願いします。ご主人様」
セレナはそう言ってペコリとお辞儀をした。
「手続き終わったみたいだし、店を出ようか」
「はい、わかりました」
そう言って、俺とセレナはさっさと店をでた。
初めての奴隷を買ったけど、なんか、すっごく安かったな。
俺としては一人じゃないだけマシなんだけど。
これでボッチじゃない! ボッチじゃないぞ!
にしても、吸血鬼はそんなに忌み嫌われてるのか?そんな疑問をセレナにしてみると彼女は俯きながら「そうなんだと思います」と答えた。
俺としては金貨60枚が25枚になって半額よりもさらに安いから文句もなにもないけどな。
「とりあえず、その服装どうにかしたいな」
「す、すみません」
「いや、別に君は悪くないから。とりあえず、服屋でも探すか」
「えっと、服屋でしたらあちらにあります」
セレナは指を差しながら小声で言った。
「ほんとだ、じゃあ行こうか」
「はい、ご主人様」
服屋に入った、そこまで大きくはない、俺ファッションセンス0なんだよな。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご要件で?」
店員のお兄さんが声をかけてきた。
「安いのでいいからこいつに服がほしいんだ」
「えっと、奴隷にですか?」
お兄さんは明らかに不機嫌な表情をした。
「あぁ、そうだ。悪いな。こんな布切れじゃ愛玩とするにもな。ここの店の服が俺の趣味と合いそうだから来たんだが。だめだったか?」
「いえ、わかりました。何着かお持ちしますね」
そういってお兄さんはすぐに服を持ってきた。
セレナはと言うと愛玩という言葉を聞いて顔を僅かに紅くしていた。
「このお店にある一番安い服になります」
「いくらだ?」
「一着辺り大銅貨1枚です」
一着大銅貨1枚って高いのかな……?わからないけどいいや
「わかった、それを3着くれ」
「え、か、かしこまりました」
俺はさっさと買って店を後にした。
外にでるとセレナが俺の袖を引っ張った。
「ご主人様、わざわざ新品など買わなくても古着で良かったんですよ」
「別に、着せるのはなんでも良かったしな、偶々近くにあったからそこで買っただけだ」
「そ、そういわれましても」
「そんなことより、俺は迷宮に行きたいんだ。準備する物とかあるか? 欲しい武器とか」
セレナは困惑しているみたいでしどろもどろとしている。
「短剣とか槍とかないのか?」
「あ、では短剣を二本お願いします」
「よし、じゃあ武器屋を探そう」
「でしたらあちらに」
「でかした。行くぞ」
「へいらっしゃい、どんな武器をお望みかね?」
「短剣を二本だ」
「冒険者かい? なら銅の短剣はどうだ? 一本大銅貨1枚だ」
「そっちのは?」
俺は奥の短剣を指さしながら聞いた。
「これかい? これは鋼の短剣だ。 一本銀貨5枚だ」
案外安い?いや、二本で金貨1枚だから高いのか?
「じゃあ、それを二本頼む」
「こ、こっちをかい? わかった二本で金貨1枚だ」
金貨1枚渡して、売買終了。
俺は短剣二本を投げるようにセレナに渡した。
「ほら、これを使え」
「え? え? これはご主人様が使うのでは?」
「いや、俺には獲物がちゃんとあるからいらないぞ」
「し、しかし新品でましてや鋼だなんて」
「迷宮で背中預けるのにしけた武器持たせたら怖いだろ」
「そう……ですね」
適当にこじつけて納得させた。
納得したのかは知らないけど。
「じゃあ、迷宮行くぞ」
「はい、ご主人様」
俺とセレナは迷宮に向かうために都の外に向かった。
ここまで呼んで頂きありがとうございます。
前回、最初の奴隷っ子をどの種族とかにするか迷った挙句、魔族だったら人間達から排他的なんでは?と思って魔族にしたあと、それなら王道的な吸血姫でもいいかな?と、ちょっと適当にしちゃいました。
ほぼ趣味ですね。
誤字脱字には気をつけていますが……
という決まり文句も飽きてきたのが心情です。
とりあえず気をつけてます!って感じですかね。
さて、次回から迷宮探索です。
おたのしみに?