第五話
前回までのあらすじ
馬車に乗せて貰って無事に都に着いたけど、宿に行くところで道に迷った。
迷ってたらお花売りの少女に声をかけられたからお花の代わりに宿の場所を聞いたら教えてくれた。
宿の飯は健康的でした。
あと、都ではお肉が高騰化してるらしいです。
実はお肉も好きだけどそれと同じくらいに野菜も好きだったりします。
目が覚めて、外をみるとまだ暗い。
ちゃんと寝たはずなのにいつもより軽くふっと起きたときに暗いと自分が寝てないとかもしくは無茶苦茶寝過ごしたとか思うことってない?
しかも時計とかがなくて時間も確認できないときはなおさらそういう勘違いした経験ない?
因みに俺は今その気持ち。
「あっれ? 寝過ごしすぎた?」
時計が無くとも落ち着いて外を見て月の位置とか朝焼けとか確認すればわかったろうに俺は違う行動を取った。
「しゃーなし、もう少し寝よう」
はい、あろう事か二度寝を俺は選択した。
いつもなら速効で寝れるがいつもと違うベッドだ、寝付けずもぞもぞしていると窓に朝日が差し始めたことに気がついた。
「ん? 朝か、起きよう。今日は待ちに待った冒険者協会だ。とりあえず下に行くか」
俺は一階に降りて昨日受付の人が言っていたダイニングフロアに行くことにした。
シェフのお兄さん探せばいいのかな?
「すみません。朝飯ってここで頼めば?」
「おぉ、兄ちゃんじゃねえか! 朝飯だな? 待ってろすぐに作っからよ!」
中に声をかけたら昨日のお兄さんがいた。
探す手間が省けたし、飯も食わせて貰えるからよかった。
「へいおまち!」
「さ、流石にはやいですね」
この間5分未満。
あれ? これは牛丼屋といい勝負なんじゃないか?
メニューはと言うと黒くて硬いパンと野菜のスープ、ウリンコの肉と思しきソテーにサラダ
昨日とあんまり変わり映えはしないが、味に問題はないから言うこともない。
しかも、今日は肉もあって味が濃くなる分野菜も美味い。
文句なんてないぜ!
あと、どうでもいいけど俺の飯の食う時間は10分だ。どうでもいいけど。
「お兄さん今日も飯うまかったぞ」
「お前さんゆっくり噛んで食ったか? あんまり早く食うと腹を壊すぞ」
「その辺は大丈夫だ。 昔からこれくらいだからな」
「そうなのか……それとこれが昼飯だ。持ってけ」
そう言って持たされたのはおにぎりとこれまた焼かれたウリンコ肉。
「お、ありがとう」
「いいってもんよ」
「それとひとつ質問いいか?」
「ん? なんだ? 分かることなら答えるぞ?」
「実は、昨日この街にきたばかりで冒険者協会の場所がわからないんだ。教えてもらってもいいか?」
「冒険者……協会……」
あれ? 俺は何かまずいこと言ったか?
「あぁ、保全協会のことか」
「そうそう、それだそれ」
とりあえず通じてよかった、こっちでは保全協会っていうのか。
「それなら、街の中にデカくて白い建物があってそれがギルドだ」
なんだ、ギルドで通じたのか。
「白くてデカい建物か、場所はどの辺なんだ?」
「……」
「ん?」
「兄ちゃん、少しは探すってことをしようぜ」
「え? えっと?」
「ギルドはこの宿の隣だ」
「は!?」
思わず走って外にでた。
ありました。
隣に。
宿から見て右隣に。
昨日暗くなって来てて宿のことしか考えて無かったからギルドのこと考えてなかった。
灯台もと暗しとはこのことなのだろうか。
とりあえずお兄さんのところに戻った。
「ホントだ、ありました。 いや、ありがとうございます」
「わかったならそれでいいや、冒険者になるなら死なねぇように頑張れよ」
「おう、ありがとう。 行ってくるわ」
そう挨拶して俺は宿をでた。
そして徒歩1分のギルドに着いた。
近い! 近すぎる!
そういえば、ギルドと提携してるとか言ってたけど隣接してるからなのかな?
ギルドの中に扉を開けて入る。
中に入ると独特な匂いが充満していた。
薬やら革やら鉄やら油やらの匂い……挙句、男の汗臭い。
受付の女の子は退屈そうな顔をしていたが俺に気がつくと笑顔になってカウンターから声をかけてきた。
「あら、見ない顔なのですね! 冒険者登録ですね?」
「はい、冒険者になろうと思って登録に来ました」
「それならこっちで受付するのですね!」
「お、おう」
「私はスピリア・グゾン16才! 猫人族でここで看板娘をしてるですね!」
「あぁ、俺は柊だ。よろしく」
「ヒイラギさん! よろしくなのですね!」
元気なのはいいんだけど、語尾が『ですね』なのかな?
「それで、ヒイラギさん。 身分証はお持ちなのですね?」
「いや、持ってない。ここで発行できるって聞いたんだけど」
「当然なのですね! ギルドでもちゃんと発行できるのですね!」
やばい、だんだん言ってる意味がわからなくなってきた。
「冒険者登録に銀貨1枚。パーソナリティーカード発行に金貨1枚になるのですね! よろしいですね?」
「あ、あぁ構わない。それで頼む」
俺はお金をだして頼んだ。
「少々お待ちくださいですね!」
スピリアはテトテトと走って事務所っぽいところに走っていった。
ちょっと待った。具体的には10分くらい。
「お待たせしましたですね! 初期発行みたいですね?」
「初めてだな」
「失礼ながら拝見させて貰ったですけど、年齢は20歳で間違いないですね?」
「間違ってないと思うが? 何かあるのか?」
「いえ、本来であれば成人になる16歳でカードを作るはずなのですね。なのに、作られてないのでちょっと不思議に思っただけなのですね」
ある訳無いだろう、俺がこの世界に来たのは5日程前だし。
「ちょっと、貧乏過ぎてな。すぐに作れなくて気がついたらこの歳になってたんだよ」
「そ、そうだったんですね」
スピリアはちょっとショボンとした。
「じゃあ、魔術ランクを証明する物ももってないんですね?」
「あぁ、無いな」
「それでは今回は特別に、一回だけ魔術テストをサービスするですね!」
「なんだそれ?」
「魔術テストはその人の魔力量とその人に合った魔術を探したり、練習した人が昇級するためのテストなのですね」
「因みに本来いくらなんだ?」
「はい、全等級金貨5枚ですね!」
うっわ、金貨5枚がただになるのか。
昨日地味に稼いだ分があるとはいえ出費はしたくないから助かった。
ついでに俺の魔力やらも見れるなら万々歳だ。
「それってすぐにできるのか?」
「はい! 今すぐにですね!」
「じゃあ頼むわ」
「わかりましたですね! ご案内するのでついて来てくださいですね!」
ギルドの奥に案内された。
奥と言ってもコンクリの打ちっぱなしみたいな部屋だ。
その部屋の中心に何か丸いものが浮いている。
「この四神宝珠に魔力をありったけ込めてくださいですね」
「未だに魔力を込めるコツがわからないんだけど。アドバイスってある?」
「アドバイスですね? こう、シュッとしてバッとしてグニャッてするですね!」
「わかった」
あぁ、わからないということがわかった。
「このテストは魔力コントロールとか魔術センスも含めてのテストなのですね! 気を引き締めてやるですね!」
「まじかよ。センスとかは知らねえけどコントロールできるか?」
「大丈夫ですね! ぶっ倒れるくらい魔力を注ぎ込んでもちゃんと介抱するですね!」
「ぶっ倒れるまでやれってか」
「使い果たすのが怖くて出せなかったなんて言い訳をさせないためですね!」
全力でやろうにも容量もなにもわからないしな。
むしろ、実はセンスが殆どありませんでしたって方が安心できそうだ。
「じゃあ、宝珠に手を翳すですね!」
「お、おぅ」
「スタートは自分のタイミングでいいですね! 好きなタイミングで始めるですね!」
「了解した」
魔力ってのが精神エネルギーとかそういうものだっていうなら、手のひらにエネルギーが集まるように力を集中すればいけるか?
まぁ、タダとは言えどせっかくのテストだ無駄にはしたくないな。
まずは、刀に込めてたみたいに気持ちで力を込めるようにして……それを全身から一点に集めるような感じに……
足らないなら大気を自分の身体の中に通して手のひらにエネルギーを集める様に……
そんなことをイメージしながら手のひらに力を込めていると宝珠が淡く赤色に光りだした。
「およおよ? もう少しですよ」
「もう少しって言ったって……どうすんだよこれ」
「ガッといくのですよ」
ガッとって言ってもな、全く想像つかないんだよな。
魔力を叩きつけるイメージでいいのか?
手のひらに集めて……圧縮するように固めて……ブチ込む!
宝珠の淡い光が強く光った。
「うおっまぶしっ!」
無茶苦茶眩しい。
「め、目がーですよー!」
なんでここの住人は色々危ない発言をしているんだ。
光が収まったと同時に身体が一気に重くなる。
鉛が乗っかったとかそんなちゃちなものじゃない。
気持ちの上では全身からトラックで突撃されたんじゃないかって程一気に重くなった。
俺はその場に倒れた。
「ありゃりゃ、本当に倒れるまでやっちゃったですよ」
「お前が……やれって行っただろ……」
物凄い疲労感に襲われる。
「じゃあ、マスターと相談してくるのでそこで寝ててくださいですよ!」
「おま、ここでかよ」
俺の言葉に耳を貸さずに「行ってくるですよー」と、別の部屋に走って行った。
倦怠感と眠気に勝てず、そのまま俺の意識は途絶えた。
目を覚ますとソファーに寝かされていた。
声はテーブルを挟んだ反対側のソファーがあるだろう場所から声がした。
「起きたようじゃな。ソファーまで運ばせてやったのじゃ。感謝するのじゃぞ」
「あぁ、ありがとう助かっ……た?」
身体を起こして声のする方にお礼を言いながら顔を向けるとそこには少女がいや、それよりも小さい。
幼女がそこに座っていた。
「なんじゃ、ジロジロと失礼ではないかの?」
「えっと、ギルドマスター?」
「如何にも! 儂がギルドマスターのメルト・シャーローンなのじゃ」
のじゃロリだ。
なんか、実際見てみてもそこまで興奮しないもんだな。
ロリコンじゃないから別にいいけどさ。
「さて、お主の魔術テストの結果なのじゃ」
「結構すぐにでるんだな」
「何を言っておる、もう夕方じゃぞ」
「なん……だと……」
「そんなことより話を続けるぞ」
「まずお主の魔力量じゃが結構多くての、天級相当じゃった」
「喜ぶべきなのか?」
「まぁ、魔力量だけ見れば普通よりも全然多いから魔力を使う仕事では便利じゃな」
「魔力量『だけ』ってことは他に問題が?」
「話が早くて助かるのじゃ。そうじゃな、お主は基本属性魔術に対してどれひとつ適合しなかったのじゃ」
「えっと、それはやばいのか?」
「やばいかどうかは知らんのじゃ。が、ここでは基本属性しか見れからの、もしかすれば他の魔術には適合するかもしれないのじゃ」
「基本属性魔術が使えないのか……」
「基本が使えない訳じゃないのじゃぞ? 適合しないだけで使おうと思えば使えるのじゃ。その代わり消費する魔力量が多くなるが、お主は天級相当の魔力量じゃから中級くらいまでなら苦もせず使えるじゃろう」
基本属性が適合してないって意外と致命的な気がするんだけど、気のせい?
「別に魔術が使えんでも簡易術式生成具があるからそれを使えば少ない魔力で使えるのじゃ」
「そんなのがあるのか」
「すっごい高いがの」
ダメじゃん。
まぁ、練習すれば少しは使えるだろう。
せめて火を起こせる様にはならねば。
「さて、お主よ。冒険者になったがパーティーは組む相手はおるのか?」
「パーティーですか? いえ、今のところはぼっ、一人ですけど」
「これは冒険者の皆に忠告しておるのじゃが、顔の知らぬ相手を信用してはならぬぞ。少なくとも命が惜しいのであればなのじゃ」
「怖いこといいますねギルドマスター」
「実際そうなのじゃ、冒険者に扮した盗賊が最近多くで周り始めての。騎士団と共に排除に徹しておるのじゃが中々の」
「そこまで難しいのじゃなきゃ一人でも大丈夫でしょう?」
「最低ランクのクエストをしている分には一人でもいいんじゃが、迷宮に行くのじゃったらパーティーをおすすめしてるのじゃ」
「迷宮もあるんですね!」
「な、なんじゃお主、妙に興奮しよってからにそれで、迷宮に行くにも人でが足らないんじゃったら奴隷を買うのじゃ」
「あ、奴隷も売ってるんですね」
というか、やっぱりあるのね奴隷制度。
いやまぁ、異世界だもんね、あるよね奴隷。
買うなら断然女の子だよな、男の子的に考えて。
「当たり前じゃ、但し奴隷は物扱いなのじゃ。持ち込みは二人までになるのじゃ」
「パーティーとして編成はできないんですか?」
「できるぞ? パーティーは自分を含めて4人までと奴隷は二人まで持ち込みおkじゃ!」
「最大で5人まで奴隷でもいいってことですか?」
「まぁ、そういうことじゃな。どう組むかはお主次第じゃ」
「じゃあお金でも貯めて奴隷でも買うか」
「なんじゃお主、奴隷買う気満々なのじゃな」
「そりゃね、そこらの奴らよりはよっぽど信頼できるんでしょ?」
「そ、そうじゃが……奴隷を買うというなら儂が紹介状を書くのじゃ」
「紹介状とかあるの?」
「当たり前じゃ、悪徳商売をさせないためにもこういった連携はしっかりしてるのじゃ。ちょっと待ってるのじゃ」
モノの5分で紹介状を書き上げた。
書き上げたというよりはハンコを押して名前を書いていた程度に見えた。
「これが紹介状じゃ、今日は遅いからの明日にするといいのじゃ」
「わかった。明日行くことにする」
「ふむ、最後になったがこれがお主のパーソナリティカードじゃ」
「これが俺のカードですか」
クレジットカードよりふた回りくらい大きいカードが渡された。
「なんか、盗賊のカードより大きいんですね」
「なんじゃお主盗賊をカードを持ってるのかえ?」
「えぇ、先日盗賊に襲われて撃退した時に助けた商人からこれを貰ったんだ」
そう言ってカードを出す。
「そうか、じゃったら報奨金を渡さねばな、これも明日でいいかの?」
「明日で大丈夫だよ」
「それで特になにもなければこれで終わりなのじゃが何かあるかの?」
「いや、特にはないな」
「ならば話はこれで終わりなのじゃ」
「ありがとうございました」
俺はそう言って席を立ち扉を開けて出ようとすると
「おっと、お主にいうことがひとつあったのじゃ」
「ん?」
「おめでとう、今日からお主は冒険者なのじゃ。頑張るのじゃぞ」
俺は苦笑しながら「ありがとう」と言って部屋をでてギルドを後にした。
徒歩一分の宿に戻り宿泊の手続きをした。
今度は3日分くらいまとめて取った。
鍵を受け取り部屋に戻り、食事と風呂を済ませてベッドにダイブした。
「なんか、あっけなく冒険者になれたな。明日は奴隷を見に行ったら迷宮に行ってみよう」
今日は1日寝てた気がするが、そんなことがなかったかのように俺は眠りについた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
0時迄に仕上げようと思ったら過ぎちゃいました。
一応、ここまでが『冒険者になろう編』という感じになります。
次回から奴隷娘が登場です。
私的に、犬耳やら猫耳やらきつね耳な獣人系奴隷だったり普通に女の子の奴隷だったり色々好きなので結構迷ってます。
どれにしようかな……と
では、次回をお楽しみに……
って言えるほどいい物ができてる気がしません。
2016/9/5
ご指摘いただいた部分を編集しました!
「ギルド協会」→「保全協会」
です。
え?冒険関係なさそうって?
そこは触れないでください。(だって初期設定に自分で書いてたんだもん……