第四話
前回までのあらすじ
村から出て行く事になった。
森の中は思いの外平和で1日と半分で出口まで行けた。
そこで馬車が盗賊に襲われていて、盗賊と戦闘。勿論圧勝。
馬車の男は商人で、都まで雇って貰える上に送ってもらえる。
ちょっと、話がうますぎる気がしてならない今日この頃。
出発してすぐに商人がカードを渡してきた。
「なんだこれ? 何のカードだ?」
「何ってヒイラギ様『パーソナリティカード』をご存知でないんですか?」
「すまない、記憶を無くしてしまってな。 そういった当たり前の事すらわからないんだ」
「そうでしたか、では僭越ながら私がご説明させて頂きますね」
『パーソナリティカード』
このカードは、冒険者協会と各都市に設置されている大きな役所で発行できるらしい。
名前や職業は勿論のこと、年齢だったり身分だったりも乗ってるのだとか。
一番驚いたのは、高機能でその人が所持しているスキルや魔術が見れるというのだ。
因みに、身分証と言われればこのカードを提示で済むそうだ。
何でも、これを偽造するのは不可能な技術で作っているとかいないとか。
さて、ここで判明したことが一つある。
なにか? そう、それは冒険者協会の存在だ。
冒険者協会があるってことは当然冒険者にもなれるということらしい。
都にもあるらしいので楽しみだ。
「そうか、パーソナリティカードに冒険者協会か。都についたら発行しておかないとな」
「そうですね。カードを持ってないだけで、場合によっては盗賊だったり暗殺者扱いされるので気をつけてくださいね」
「それでこの赤い黒いカードはなんのカードなんだ?」
「えっと、それもご存知でない?」
「あぁ、全く」
「それはですね、犯罪者指定されたカードなのです。盗賊等に身を堕とすとカードが赤くなります。罪を犯し続ける程にその赤い色は濃くなっていき最後には真っ黒になります」
「それじゃあ、あいつはそれなりに罪を犯してたのか」
「そうなりますね。そして、そのカードを持って冒険者協会に持っていけば懸賞首分の金額を貰えるといシステムになってます」
「それならさっきの二人のカードも持ってきたのか?」
「いえ、先ほどの2人は死んでいなかったようですので、持ってきていません。というのも、カードには死亡という表記もありまして、死亡以外のカードを持ち込んでも換金してくれないんですよ」
「そこは、不正防止って感じか」
「そうなりますね。裏面が本来スキル等が書いてあるのですが、そこに死亡と書かれているはずです」
そう言われて、裏をみると大きく死亡と書かれている。
カード一杯に書かれてるからちょっと面白い。
「本当だ。これを持っていけばいいのか」
「はい、そういうことです」
「貰っていいのか?」
「何をおっしゃいますか。恩人の得る報酬を横から取るようなことはしませんよ。と言いたいのですが、横取りも犯罪なのですよ。ですので、横から奪われるなんてことは基本的にないので安心していいですよ」
横取りは犯罪か……これは業務上横領とかそんなところなのかな?
しかし、基本的にってことは無いわけじゃないってことか。
気を付けよう。
「おや、そろそろ都が見えてきますよ」
そう言われて荷台から乗り出す様に前をみた。
城壁とかあるのかと思ったが、そんなものは無かった。
「結構広そうだな」
「えぇ、広いですよ。各都はそれなりに大きいですがここも大きな都なんですよ」
そして、都に着いた。
心配はしていなかったが、盗賊や魔物に襲われなかった。
「ヒイラギ様、都の下町に到着しましたよ」
「おぉ、お疲れ様さてと、俺はさっさと冒険者協会とやらに行くか」
「ちょちょ、ヒイラギ様お待ちください!」
「ん? 何かあった?」
「何かもなにも、お金をまだ渡してませんよ」
あぁ、忘れてた。
冒険者が楽しみすぎて忘れてた。
「こちらが、銀貨5枚になります」
「えっと、毎度あり?」
「何故、疑問系なのでしょうか?」
「この場合なんて言えばいいのかわからなかったからかな」
「とりあえず、本当に助かりました。当分は、この都に居ますので何かありましたらお店の方に来てください。できる限りサービスさせて頂きます」
「わかった。それなりに稼げるようになったら行くとするよ」
そう言って、商人と別れた。
そういえば、俺の名前は名乗ったけど商人の名前聞いてないじゃん。
ま、いっか。
時間は夕暮れだ。
先に宿を探したほうがいいかな、安宿はどこだろうか……。
とりあえず街の中を歩き出した。
夕暮れだったからなのか、人はそんなに多くない。
「これだったら商人に宿の場所とか聞いておくんだったな」
さすがに都ってところか、下街と言っていたがそれなりに大きい。
この場合、出入り口付近の方が宿は多いかな?
「一度戻るか、もう少し進むか……どうしたものか」
「す、すみま……せん……」
進退を決めかねて立ち止まっていると、後ろから今にも消えそうな声で呼ばれた。
振り向くと、服というには少々ボロ過ぎる布を纏った少女と思しき子が立っていた。
「ん? 今君が俺を呼んだのか?」
「あ、えと……お、お花を、買って、ください」
なんと、異世界と言えばお決まりの展開なお花売りの少女!
意外とこういうのテンション上がるね。日本人だから?
「お花か、いくらだ?」
「え、えと……銅貨1枚です」
銅貨1枚、通貨的にはこれが最安値なのかな?
見た目的にはコスモスが1輪だ。
お花一つ1円と考えると高い気もするが、こうでもしなければ生きていけないというのであろう。
「銅貨1枚か、悪いけど今は銅貨を持ち合わせてないだ」
そういうと少女は俯いて帰ろうとした。
「が、ちょっと聞きたいことがあるんだが訪ねていいか?」
「え? あ……は、はい」
「この辺で、安い宿って何処にある? ここは始めてで道に迷っちまったんだ」
「宿……それなら、そっちのお家が……宿だと思う」
もうちょっと進んだ位置だった。
意外と近かったな、まぁいいか。
「おぉ、あんな所に宿があったのかありがとう助かったよ。じゃ、花は買わないけどこれはお礼な」
「こ、こんらに!」
少女に銀貨1枚を握らせた。
相場的に考えれば破格なんだろうけど、今はそんなことよりも宿が最優先だ。
貰えても銅貨数枚だと思ってたであろうところに銀貨1枚をもらったからか、少女は
パァッと明るい顔をしつつ、自分が噛んだことに顔を赤らめながらペコリとお辞儀をして去っていった。
「さて、宿が空いてるといいなぁ」
宿に入ってすぐに受付のカウンターがあった。
「すみません、部屋は空いてますか?」
「はい、一人部屋が空いていますよ」
「借りれますか?」
「一人、銅貨60枚の先払いになります」
「銅貨60枚か」
高いのか安いのかわからないんだよな、村長からもたせてもらった金貨5枚があるとは言えど下手な出費は命取りだ。
しかも、明日には冒険者協会に行って冒険者登録とカードの発行だ。
かさむ出費はあれど収入が皆無。
冒険者になれば、もう少しいい収入があるだろうけど……
疲れた、とりあえず泊まろう。
「こちらの宿は冒険者協会と提携させていただいてますので、冒険者様であれば銅貨50枚です」
「冒険者だと安くなるんだな」
「はい、その分は協会の方が負担する形になります」
とは言っても俺はまだ冒険者じゃないし銅貨60でもいいや
「いや、俺はまだ冒険者じゃないから最初の値段でいいや」
「こちらは一人部屋のみの値段でして、夕食とお湯を付けますと銅貨70になりますがよろしいですか?」
「そうなのか、じゃあそれでいい」
「わかりました。こちらがお部屋の鍵になります。お食事はもう運びますか?」
「頼む」
「かしこまりました。ではすぐにお持ちしますね。夕食のみお部屋にお持ちする形になっておりますので、朝食の注文は隣のフロアが飲食フロアですのでそちらでお願いします。」
「わかった」
長いぞ。いや、大切な説明だけど長いぞ。
とりあえず、1日分支払った。
銀貨1枚支払って、 大銅貨9枚と銅貨30枚のお釣りが来た。
部屋は階段を登って右側の奥から二番目だ。
「まだ一週間も経ってないはずなのに、すげー過ごした気分だ」
部屋に入って荷物を投げてベッドにダイブ。
少ししたら扉がノックされた。
「お食事をお持ちしました」
「ありがとう」
晩ご飯が来た、久しぶりのジャーキーじゃないご飯。
「お食事がお済みになりましたら廊下に出しておいてください」
「了解した」
今日の晩ご飯。
何かのスープと黒くて硬いパンとサラダ
「肉づくしだったよりは健康的か」
肉だけの飯よりかは幾分ましにだったと思う。
少なくとも日本で食べてた健康的な食事である野菜は取れた。
晩飯はすぐに食べ終わり食器を廊下に出しておいた。
「明日は冒険者協会だ。今日みたいに迷わないといいけどな」
そう考えながらバックを漁る。
袋に入ったウリンコの肉があったのを忘れていた。
取ったのは昨日だ
「これ、食べれるのかな? いや、腐ってるか?」
そうこうしてると再び扉がノックされた。
「はい」
「お湯をお持ちしました」
「は~い、わかりました」
「使い終わりましたら、先ほどと同じように廊下に出しておいてください」
「わかった。あと、申し訳ないんだけどさ、この肉って使えるかわかる?」
そう言ってウリンコの肉を差し出す。
「これは?」
「これ? これはウリンコの肉だよ、昨日取ったんだけど火がなくてね」
「わ、わかりました。マスターに聞いてきますのであづかってもよろしいですか?」
「あぁ、持ってっちゃっていいよ」
「えっと、はい、わかりました」
そう言ってスタッフさんは部屋を後にした。
お湯、なんとなく頼んだけどこの世界はお風呂が無いってやつか。
しゃーなし、頑張って拭くとしよう。
奮闘すること15分。
とりあえず全体的に拭けたかなと思いながら桶を廊下にだして、部屋に鍵をかけて寝ることにした。
安宿のベッドはゴワゴワしててちょっと痛かった。
これはあれだ、下手にベッドで寝るよりも馬小屋とかの藁で作ったベッドの方がいいぞ。
草原で大の字で寝ると気持ちいいだろ? 馬用の藁も結構いい匂いがして気持ちよく寝れそうだろ?
と、安定の阿呆なことを考えていたらまたも扉をコンコンとノックされた。
「なんですか」
「すまない、この宿で料理を任されてる者だ。話を少しいいか?」
俺は扉を開けながら「もう寝たいんで手短にお願いします」と言いながら扉を開けてシェフという男を引き入れる。
「このウリンコの肉は君が狩ったのか?」
「あぁ、俺が狩った」
「まだ肉はあったりするか?」
「もう少しあるぞ」
「売って欲しいんだがいいだろうか?」
「構わないがいくらだ?」
「本当か!? どれくらいある」
ウリンコの肉は結構狩ったのでそれなりに多い
数えたらブロック状になったものが18個あった。
今更だけど、よくこの量を俺は持ってたな。
「このブロックひとつ辺り大銅貨5枚! いや、8枚でどうだ」
ブロックひとつあたり2kgくらいとして1kg辺り大銅貨4枚か。
そんなに苦労してない分ボロ儲けな気はするし問題ないかな?
「わかったそれでいい。俺も調理する方法を持ち合わせて無かったからな」
「ありがとう、助かるよ。今は肉の仕入れが落ち込んでて何処も高騰してて買えないんだ」
「そうなのか、大変なんだな」
「今の相場よりも安く仕入れさせたお礼も込めて明日の朝食と昼飯は俺が負担させてもらうよ」
「いいのか?」
「売ってもらった本人の前でいうのはアレだが、今は肉の相場が今の売ってもらった一個あたり銀貨1枚は余裕で超えるんだよ。だから、それくらいはお礼をさせて欲しいんだ」
なんか、ちょっと失敗した気がするけども、とりあえずはよしとしておこう。
あんまり調子に乗って稼ごうとしてもしょうがないし。
「じゃあ、また明日頼むは、俺はもう寝るから」
「おぉ、わかった。邪魔して悪かった。お金は明日の朝に渡すよ」
そう言って、シェフの人は出て行った。
俺はさっさと扉の鍵を閉めて寝ることにした。
今度こそ寝る。
意味のない決意を胸に眠るのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
イマイチ使い方に慣れなくて2,3話で後書きが入力されてなかった……。
すみません。
誤字脱字が無いように気をつけながら頑張って書かせて頂きます。
おまけと言いながら私のメモのようなものを載せました。
おまけ『王国共通通貨の計算』
金貨1枚=銀貨10枚
銀貨1枚=大銅貨10枚
大銅貨1枚=銅貨100枚
銅貨1枚で一円
大銅貨1枚で百円
銀貨1枚で千円
金貨1枚で一万円
宿代が銅貨70枚単純計算で70円
銀貨1枚が単純計算で1000円
お釣りは970円
通貨に換算すると大銅貨9枚と銅貨30枚となる。
今回の売上
ウリンコの肉のブロックが18個
一個辺り大銅貨8枚で単純計算で800円
大銅貨8カケル18で144枚
大銅貨10枚で銀貨一枚なので銀貨が14枚と大銅貨4枚。
さらに、銀貨10枚で金貨1枚なので今回は金貨1枚と銀貨4枚大銅貨4枚の収入。
苦労してない分どう見ても、ボロ儲け。