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第八十八話 修行の裏で

 ライトが忍者の里で修行を始めていた頃、セイク達はルーリックであのメッセージを受け取っていた。


「¨Decided strongest¨か、面白そうじゃねぇか」

「そうね、こういうの初めてだから楽しみ」

「へー、こういうのあるんだ」

「楽しそうですわね。運営は沈黙したと思ったのですけど、こういったことぐらいはできるのかしら?」


 ¨Decided strongest¨の開催を伝えるメッセージ。それを受け取ったセイク達は、相談するまでもなく出場を決定した。


「それじゃあしばらくは自由行動にしようか」


 ¨Decided strongest¨の本選は一対一のトーナメント方式、セイク達は予選までの間個別に行動をして、自身を鍛える期間に当てようということになった。

 リンとケンの二人は高レベル帯の狩場に行くといって颯爽と出ていってしまい、フェニックスも中位職に上がった際に世話になったNPCの所に行ってしまった。

 セイクも自身のレベルアップの為に、適当な狩場を選んでいると、


「ねえ、ちょっと付き合ってくれない?」


 同じくどうするか悩んでいたシェミルに呼び止められた。セイクとしてもこれといった予定が有るわけでもなく、彼女の誘いに了承する。


「どこに行くんだ?」

「精霊の里」






 岩場が多かった第五の町周辺の狩場とはうってかわって、辺り一面緑が生い茂る深き森。かつて来た際には、散々迷って大変だった道中。


「今回は全然迷わなかったな」

「私の魔法言語のレベルも上がってるからね。そろそろ精霊言語になりそうだし」


 しかし、今回は迷うこともなくすいすいと進んでいく二人。と言うのも、周りの精霊や自身が契約した精霊に案内をしてもらっているというわけだ。


「でも、何で俺を誘ったんだ? 精霊に道を聞けるなら迷わないだろ」

「なんか分かんないけど、セイクの周りだといい感じに精霊が集まるのよね。普通に探すと友好的な精霊探すのも大変なのよ」


 前回の半分程の時間をかけて、二人は精霊の里に足を踏み入れる。シェミルの顔にも特に疲労の色はなく、このデスゲームにとらわれて四ヶ月程がたち、彼女もレベルだけでなく精神的に成長しているのだろう。

 シェミルが精霊の里印ポーションや、長に話を聞きたいと言って少しの間別れることになった。手持ちぶさたとなったセイクがその辺りを散歩がてらに里の外周を回るように歩いていると、


「ん~~」


 湖のほとりに一人の少女がいるのを発見した。最初は他のプレイヤーが居るのかと思ったが、その背に目を向けると半透明の羽が生えていた。少女は湖の縁に座り、何やら剣のような物を手に首を傾げていた。


「? アンタ何よ、人間? 初めて見た」

「あ、ああ。俺はセイク、ちょっと付き添いで来てね」


 その少女が話した言葉にセイクは驚きを隠せなかった。今までに他の精霊と話しそうとしたところ、何を言っているのか全く理解する事ができなかった。普通シェミルのように魔法言語のスキルがないと精霊とは話す事はできない筈なのだが、目の前にいる少女は羽があることから精霊のような存在なのだろうが彼女はプレイヤーが理解できる言葉で話していた。


(ふーん、以外と人の言葉も簡単じゃない。こいつは多分魔法言語使えないでしょ、私の羽を見て人語で話しかける時点で素人ね)

「剣なんか持って何してたんだ? 精霊は魔法を使って戦うって聞いたんだけど」

「別に剣持ったっていいでしょ、確かに魔法の方が強いけど。……そ! れ! と! 私は精霊じゃなくて妖精のトイニよ!」


 セイクが精霊や妖精について無知であることから、トイニも精霊間違われた事に対してもライトの時よりは怒りはしない。


「はあ、まあいいわ。私はもう行くから」

「え、え?」


 そう言い残してトイニの姿は消える。ライトの召喚スキルを逆に利用して忍者の里へ遊びに行ったのだが、そんなことをセイクは知るよしもない。


「よ、妖精って凄いんだな……」


 何らかのアイテムを使った形跡もなしに転移するトイニを見て、セイクとしては妖精の力に素直に感心するだけであった。ここにシェミルがいれば人語を話す妖精の異常さが分かっだろうが、戦士系統のセイクがトイニの異常

性を知らないのも無理は無いだろう。


(あ、あれ置いてってる)


 トイニが消えた場所には彼女が作っていた氷の剣が放置されており、少年心をくすぐられて手にとって見ていたところ。


「あ、あの!」

「ん?」


 声をかけられた方に振り替えって見ると、そこには金色の長髪を揺らした少女が立っていた。背丈はトイニよりは高いが、シェミルよりは小さい。彼女も妖精なのだろうか? そんな事を考えて止まっていると、


「あのー、私の言葉分かりますか? ……どうしよう、やっぱり人語は難しいのかな?」



 申し訳なさそうに彼女は言葉を続ける。セイクが言葉を分からず困っているように見えてしまったのだろうか。何か、どことなく気弱そうな印象を受ける少女を、これ以上困らせるのは心象が悪い。


「あ、ごめんごめん。聞こえてるよ、君も妖精?」

「い、いえ。私はまだ精霊です……」

「そうなの? いやー、精霊と妖精について全然知らなくてね、それで何か用?」

「あ、はい。ここにトイニっていう妖精の子居ませんでしたか?」

「それならさっきまでここに居たよ。もうどこかに行っちゃったけど」

「ホントですか! トイニちゃん森の方にでも行っちゃったのかな。すみませんが、もしトイニちゃんを見つけたらこれで連絡下さい!」

「え、あっ、ちょっと……」


 最後に、彼女はセイクに何かうっすらと発光する石のようなものを手渡すと、またどこかにと行ってしまった。



 


 



 


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