第七話 仲間との別れ
拳をもろに受けたリンが、その場に崩れ落ちる。セイク達は、倒れたリンへ駆け寄り、それを尻目にライトがその場から立ち去ろうと背を向けたその時、後ろからケンが声をかけた。
「なんの用だ、まさか今度はお前が闘うなんて言わないよな」
ライトが、そう言いながらケンの方へ振り替える。すると、ライトの目の前にメニューウィンドウが出現する。
「まさか、ライトはリン相手に勝ったんだ。止める理由はねぇよ。でも、フレンド登録くらいはしてもいいだろ」
「……そうだな。別に、俺とお前らが敵同士になるって訳じゃないしな」
そのウィンドウには、『ケンからフレンド登録の誘いが届きました。了承しますか?』の文字が浮かび、ライトは『はい』の部分をタッチすると、今度こそセイク達に背を向ける。
「今度会える時は何時かは分からんが、それまでは脱落してくれるなよ。いくら制限時間があるとはいえ、な」
そう言って、振り返らずに手を振りながら、ライトはその場を去る。その背中を
(光一、やっぱ強いな。けど、次会う時は、俺ももっと強くなってやるからな!)
そんな思いとともにケンは見つめ。
(光一。次会う時は、必ず倒してみせるんだから!)
そんな決意を胸に、力強い視線でリンは見つめ。
(光一、あいつ俺らを気遣ったのか……でも、次会う時はそんな気遣いが要らないぐらい強くならないとな)
そんな思いとこれからを考えながら、セイクは見つめていた。
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その後。ライトは、ゴブリンなどの雑魚モンスターを倒すなどを倒してレベルを上げていた。そのお陰で、懐も少しばかり潤い、あと十日は問題なく過ごせる程の金を稼ぐことができた。
現在のゲーム内での時刻は、夜の七時頃。夜になってしまうと、AWOの設定上敵の能力が少し上昇したり、昼とは違う敵が出てきたりするので、殆どのプレイヤーは夜に闘いに行くことはない。
ライトもその例に漏れず、今は適当な宿をとって自室に居た。ライトは、メニュー画面から開ける掲示板等を、部屋のベットに腰掛けながら見ていたが、めぼしい情報はもう見終わってしまう。
ライトは、固まった体をほぐすようにその場で伸びをすると、腰かけていたベットに仰向けに倒れこむ。
今のところライトがAWOで手にはいる情報は、粗方調べてしまった。そうなれば、
『なあ、リース。聞こえるか』
後は現実から情報を得るだけだ。
ベットに倒れこんだまま、ライトは一人言のようにそう呟くと、
『聞こえるよ、光一。また、随分大変な事になってるね』
脳内に、聞き慣れた声。リースの声が聞こえてくる。現状AWO内から、外へのアクセスは完全に不可となっているが、流石に神の従者としての能力までは防げなかったようで、こうしてライトは外のリースとの連絡が可能となった。
『早速だが、一つ聞きたい……』
ライトが、現状の情報を少しでも得ようと、話を振ろうとすると、
『あの謎の男の事かい? それなら大体光一の考え通りだと思うよ』
それよりも早く、リースは答えを話す。質問が予測されていたが、未だ解決はされていない。つまり、ライトが少し考えて分かるほど、問題は単純でありながら、解決は難しいという事だ。
『やっぱり神とやらが一枚噛んでるのか』
『うん。どうやら、この前光一に計画を頓挫させられた悪神の仲間らしくてね』
『それで、解決策はなにか無いのか』
ライトが、難しいと分かっていながらも、問題の解決法を問うと。
『今のところ、こちらから大きく干渉するのは難しいね。でも、一番確実な解決策は、あの男が言ってた通り、このゲームをクリアする事だろうね』
『あの男が言っていた事に、嘘は無いのか。だが、なぜ自分が不利になる条件をつけたんだ?』
ライトが当然の疑問を口に出すと、
『簡単さ、私達神は基本的に人間界に干渉するときは、殆ど力を使えない。それでも、あの神が、このゲームに干渉するほどの力を使えるのは、制約をかけたからさ』
『制約?』
『そう、¨ゲームをクリアすれば開放¨を制約に、あいつは力を強めたんだろうね。多分、他にも光一達に有利な条件があったら、それも制約の一つだと思うよ』
¨まあ、次元の揺れで世界が一時的に混ざったのも、関係なくは無いんだけどね¨そう付け加えると、リースとの通信は切れてしまった。どうやら、あちらも中々に忙しいらしく、その為とリースは言っていた。
一人となった部屋で、ライトは自身の手のひらを見る。現状ライトしか持っていない、神の従者としの能力は三つある。
リースを現実世界に呼び出す能力、『神様召喚』
全ての文字、言葉、言語を操る能力、『完全翻訳』
そして、ライトが最もよく使っている。自身の体を思い通りに動かせる能力、『自身操作』
特に最後の自身操作は、ライトの生命線と言っても過言ではない。この能力、様々な使い方があるが、その内の一つに『集中』という技能がある。
これは、端的に言うなら、スポーツで言うところのゾーンに任意に入ることの出来る。と言った能力である。リンとの戦闘では、これを使った事により。ライト視点では、リンの動きがはっきりと、そしてゆっくりと見えていた。
このように、割りと応用の聞く能力であり、これがあったからこそ。ライトは、ここまで大きな態度をとる事ができているのである。
(ま、何にせよ方針は決まった)
このAWOをクリアして、あの神に吠え面をかかせてやる。今後の大きな目標が決まったことで、少し安心したのか、ライトの瞼は少しずつ重くなって行く。
ベットに倒れこんでいた事もあり、ライトはその眠気に逆らわず、意識を投げ出した。
ステータス紹介(スキル構成編)
Name ライト
スキル 蹴りlevel3 殴りlevel2 ナイフlevel3 投げlevel1走りlevel3