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第六十三話 精霊魔法

 セイク達が第四の町に入ってから二週間が経とうとする頃、他の攻略組やプレイヤー達も続々と第三のボスを倒して来ていた。

 最初は記憶を失う事を恐れて、殆ど攻略にへと動かなかった人々も、段々と覚悟を決めて攻略に乗り出したお陰か、黒狼の時よりも早く、多くのプレイヤーがキングオークを倒していた。

 一方その頃、早々にキングオークを倒していたライトは、


「よっ、はっ、セイッ!」

「頑張れー、ライト」


 四方から迫る光の弾をリースに当たらないように避け、時には弾いていた。何故こんな事になっているのかというと。






「精霊魔法?」

「うん、どうやら魔法職に新しい要素が追加されるみたいなんだ」


 食堂で朝食を取ろうと二人で席に着いた時、リースがそんな事を話題に出してきた。

 朝食の間に話を聞いてみると、この第四の町では精霊魔法のスキルを取るイベントがあるようで、魔法言語というスキルのレベルが一定以上あればそれを受ける事が出来るらしい。


「今のところ掲示板から分かったのはこの位かな」

「まあ、それだけ分かれば十分だろ。今日は特別な予定もないし、そのイベントにいきますか」


 そう言って、ライトは最後の一口になったパンを口に放り込んで立ち上がる。

 精霊魔法のイベントを受ける場所は町の外れにあり、寂れた小屋のような場所であったが、かろうじて杖が描かれた扉のお陰で魔法関連の建物であることだけは分かる。


(さて、どう入るべきか)


 最初は普通に入ろうとも思ったが、こちらは教えて貰う立場なのだからノックをしてから入るべきだろうと考え、ライトは軽く扉をノックする。すると、少しの間を持ってから¨入れ¨と短い返答が返ってきた。

 錆びているせいで、蝶番(ちょうつがい)が妙な音を立てる扉を開くと、中から一発の水球が飛んできた。


簓木(ささらぎ)


 いきなり飛来した水球を、ライトは簓木のアーツを使って下にへと受け流す。床が多少濡れるが、ライトとその後ろにいたリースにダメージはない。


(あっぶな、集中(コンストレイション)使ってなかったらまともに食らってたぞ)


 かつてヴィールと会った際、扉を開けたら襲いかかられた経験からあらかじめ集中(コンストレイション)を使っていたのだが、それがライトにとって九死に一生を得ることとなった。


「おっ、今のを防ぐか」


 ライトとリースが中に入ると、本やら草らしきもの等で乱雑に散らかった床の先に、椅子にだらしなく座り本を手にし、こちらを見る耳の尖った女性が居た。

  

「悪い悪い、最近ここを訪ねてくる奴が多くてな、ちょっと暇潰しに試してみたくて。まあ、驚かせる位の威力しかないし当たっても心配しなくてもいいぞ」

「はぁ……」


 悪びれもなくそう語る女性に対して、ライトは適当な相づちを返すことしかできなかった。最も驚かせる程度の威力だとしても、まともに受ければ一撃で瀕死になりかねないのがライトなのだが。


「おっと、自己紹介がおくれたな。私はマリーナ、ここで研究をしているエルフさ」

「リースだよ、精霊魔法が覚えられると聞いて来ました」

「ライトです、自分は付き添いで来ました」


 三人がそれぞれ簡単な自己紹介を終えた後、マリーナは椅子に座り直すと本題にへと入る。


「精霊魔法だっけ、それならこの先の森を真っ直ぐ行けば精霊の里があるからそこに行けばいい筈さ。だが、魔法言語をある程度は知らんとあいつらとは話せないぞ」

「んー、その辺は大丈夫かな。一応先に達成した人よりは私の魔法言語のレベルは上だし」


 魔法についての話を初めてしまった二人の隣で、魔法に関してはからきしのライトは、なんとなく辺りを見渡してみる。やはり研究をしているとだけあって、回りにあるのは何やら魔法やら動植物について書かれた本らしい。その殆どは日本語は愚か英語ですらないものもあったが、完全翻訳を持つライトはそのタイトルを理解する事ができた。


「じゃあ行こうか、ライト。精霊の里の詳しい場所も聞いたし、もう大丈夫だよ」


 そうやって暇を潰している内に、リースがそう言いながらライトの袖を引いた。そうして二人はマリーナに礼を言って扉を出ようとした時、


「そうだ、これを持ってきな。用心深い精霊は人の前に姿を表さないから、これを持って置けば多分出て来てくれるだろうよ」


 椅子に座ったまま、緑色の石がはめられたペンダント型のアクセサリーを投げ渡された。


「ありがとうございました」

「じゃあね、マリーナ」


 こうして、空いていたアクセサリー枠に、先程貰ったペンダントを着けて二人は精霊の里にへと歩き出した。



 ここまでが冒頭の場面の一時間前といったところか。今は位置的に精霊の里の近くまで来ている筈なのだが、それ以上にモンスターの量。特にウィスプと呼ばれる光珠型のモンスターが多く、今も四方から取り囲まれている状況にあった。


「疾脚!」


 最後のウィスプを飛び膝蹴りで倒したところで、ライトはようやく一息つく。ここに来るまでも殆ど絶え間なくモンスターが現れ続けていたのだ。いくら体力が尽きず、集中も持つとはいえなんとなく疲れるものだ。


「ほら、マリーナが言ってた所まであともう少しだよ」


 正確な位置を聞いたリースの案内にしたがって、また森の中を歩き出す。その最中、ライトはふとした疑問をリースに質問してみた。


「なあ、そういえば魔法言語のスキルレベルが足りないとどうなるんだ?」

「うーん、昨日調べた感じだと、意味不明の言葉に聞こえるみたい。スキルが無い人も同じだって」


 そんな雑談混じりに道を進むと、少し開けた泉が湧いている場所にへと出た。そして、


「え、に、人間?」


 そこには全長一メートル程の小さな少女のような存在が泉の上で浮遊していた。




 


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