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第五十一話 VSナイトメアオーク②

「よし、そうと決まればまずは……逃げるぞ!」

「エ? …………まっ、まってヨー!」


 四方から迫るオークの攻撃を避けながら、自身の策に同意を得たライトは、リースを抱えてその場から飛び退く。ロロナは、その言葉に一瞬呆けたが、直ぐに気を取り直しライトに着いていく。


(リース、一番強い魔法打つのにどのくらいかかる?)

(詠唱に一分半ってとこかな。でも、その魔法は前にしか撃てないよ、それでもいいのかい?)

「十分、敵は俺らで引き付けるさ」


 ライトは、両腕に抱えられながら、MPポーションを飲むリースに念話で必要な情報を聞き出す。

 オークから離れるように駆け出したライトが次に立ち止まったのは、


「ライト……ここって」

「ああ、さっきの洞窟だよ」


 そこは、先が見えないほど暗く、だが、先程まで二人でいた洞窟であった。

 ライトは、二十メートルほど奥に進むと、リースを下ろす。


「ちょ、ちょっとライト! 何んでここ二!? ここじゃ逃げ道が……」

「ほら、無駄口叩く時間は無いぞ。一分半、何とか持たせるんだ」

「ああん、モウ! こうなったらヤケだヨ!」


 ロロナの抗議も空しく、二人は入り口から何十匹と入ってくるオークに向かって突撃する。

 


ーーーーーーーーーーーーーーー


練気功(れんきこう)!」


 オークに突撃しながら、ロロナは両拳を体の正面で合わせる。すると、その体は薄く緑色のオーラで覆われていく。

 そして、オーク達と激突する瞬間。


攻気功(こうきこう)!」 


 更にアーツを発動。その体に纏うオーラが、爆発したように激しくなり、それに比例するようにロロナの拳の威力が強化される。その強化された拳で、続々とやってくるオーク達を撃退していく。


(ヤバッ……! 硬気功(こうきこう)!)


 四方からの攻撃を捌き切れず、ロロナはモロに棍棒の直撃を受けてしまう。受ける直前に防御系のアーツを発動させたお陰で、致命傷では無いものの彼女の体は吹き飛ばされてしまう。


「カハッ……!」


 吹き飛ばされた彼女の体は、洞窟の壁面に叩きつけられた。それにより強制的に息が吐き出させられる。体の痛みと、呼吸が中断させられた苦しさで彼女の動きは止まってしまう。勿論(もちろん)そんな隙を見逃すオーク達ではない。棍棒を手に、¨捕まえた¨とばかりの卑しい笑みを浮かべて彼女にゆっくりと近づいていく。


「……プ、弧脚!」

「プギィィ!!!」


 そこに、ライトが移動系アーツを駆使しながら割り込んできた。彼は、ジャンプでオークの眼前にまで飛び上がると、手持ちのナイフをオークの目に突き刺す。それだけでは、大した威力は望めないが、彼はさらに空中で体制を切り返し、弧脚をナイフの柄に打ち込む。それにより、深く突き刺さったナイフはオークを大きくよろめかせた。


「大丈夫か」

「っ……モチロン! まだまだいけるヨ!」


 ライトがオークのターゲットを反らした隙に、ロロナはHPポーションを飲み干しながら答える。

 まだHPにも余裕は有る、SPやMPもまだ残ってる。なら、やられる前に全力を尽くそう。そんな思いを胸にロロナは拳を握る。


 そして、その時は来た。


(ライト、詠唱完了したよ。すぐその場から離れて)

「了解。ロロナ、リースの正面から離れるぞ!」


 洞窟の後方に居るリースを見ると、彼女が持つ杖から目映(まばゆ)い光が(ほとば)しっているのが見える。二人は巻き添えを食らわないようにと、リースの直線上から逃げようとする。

 確かに二人の離脱には問題はなかった。しかし、


「ヤバッ! オーク達が!」


 オーク達もその光の危険性を察知したのか、リースの射程から横に逃げようと行動しようとしていた。彼女の話によれば、最大の魔法は一度で殆どのMPを使う、外してしまえばもう一度注意を引き付けきれる補償はない。ロロナが、そんな状況に絶望しそうになったその時。


「「「震脚!!!」」」


 ライトが分身達と共に右足で強く地面を踏みしめる。そこから円形の波となって揺れが伝わって行く。さらに、その波は合成波となり、巨大になった波がオーク達の動きをほんの少しの間止める。

 そして、その数瞬で十分であった。


豪爆炎(ヴァレーヒ)!!!」


 ライトの震脚によって足止めされたオークたちに向け、リースの杖から照射された魔法は、赤を通り越して白い炎となってオーク達を一気に飲み込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 ライトとロロナがオーク達を引き付けている間、リースは詠唱以外にも魔法のサポートをするスキルを使用していく。


(高速詠唱……発動。魔力充填……発動。瞑想……発動)


 スキルにより、彼女の周りには多数の魔方陣が浮かび、さらに彼女自身も淡く発光しているのが見てとれた。そして、詠唱を始める。今から詠唱するのは、高速化を施しても、一分半もの時間がかかる現時点での最強魔法。

 この世界でのリースは、ライトの口寄せ体として呼ばれているが、そのステータスは並のプレーヤーよりもよっぽど高い。それが神という立場によるものなのかは定かではないが、それほどの力量を持つ彼女が、ここまでの準備を必要とする魔法。その威力は強大である。


 詠唱の大部分を終えた彼女は、最後の仕上げにへと入る。手に持った杖で狙いを定め、最後の一文を紡ごうとする。


「炎よ集い……爆炎となり、狂い(たけ)りて全てを焼いて、喰らい尽くせ!」


 しかし、その瞬間オーク達が狙いから外れようともがくのが見えた。このままではギリギリ逃げられてしまうかもしれない。しかし、もう狙いは変えられない。

 リースが¨不味い¨そう思ったその時。


「「「震脚!!!」」」


 自身の従者である彼が、オーク達の動きをほんの少し止める。そして、そのほんの少しで十分だ。


豪爆炎(ヴァレーヒ)!!!」


 最後の一言を叫ぶには。

 

 

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