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第四十八話 ロロナの話

 洞窟の外に立つライトを見て、ロロナはポカンとした表情を浮かべていたが、数秒もすると元に戻る。


「とりあえず中に入っていいか?」


「う、うん。いいヨ」


 まだ少し声はうわずっているものの、ロロナは落ち着きを取り戻しているようだ。

 ライトは、一度確認をとってから洞窟の中に入り、ロロナと対面する位置に腰を下ろす。


「どうしてライトはここに?」


 二人の間に流れた沈黙を打ち切るように、そうロロナがライトに問いかける。


「探索してたら崖から落ちてな、一旦休めそうな場所を探してたんだ」


 ライトには特に話さない理由もないので、率直にそう答える。


「……」

「……」


 また、二人の間を沈黙が支配する。ライトはSPを回復させる為に座って休んでいたが、ふと目の前に足を抱えて座るロロナを見て、違和感を感じた。


「なあ、ロロナ。他のパーティーメンバーはいないのか?」


 そう、周りを見渡してもロロナ以外のプレイヤーが見当たら無いのだ。ロロナも所属する攻略組は、基本的に五人パーティーで活動する。現に、前にフィールドで会った際には、ロロナは他のメンバーと一緒にいた。

 このAWOに置いて、ソロプレイヤーというのは少ない。何かあっても一人で何とかしなければならないというのは、肉体的にも精神的にも来るものがある。

 だからこそ、攻略組であるロロナがソロでいるのはライトにとって疑問であった。


「う、うん……他のみんなは、……やられちゃったんだ」

「何?」


 うつむき加減のロロナが、消え入りそうな声と共に話した言葉は、衝撃的であった。攻略組はライトのようなイレギュラーを覗けば、トップクラスの実力者が集まる場所である。しかも、現状最新のフィールドであるここにいるプレイヤーは、その攻略組の中でも更に上位に位置している筈だ。それが一人を覗いて全滅、その事のあらましをロロナはポツポツと話しだす。


ーーーーーーーーーーーーーー


 ロロナを含めた五人のパーティーは、この第三の街のフィールドの散策を進めていた。今のところ調査は順調で、森を抜けたところにある崖の手前で休憩中といったところか。


「ふむ、それなりにマッピングも進んできたな」


 緑の髪を持つ男が、手にした地図を書き加えながら呟く。


「しかし、これからどうしたものか」


 ため息と共に男がちらりと崖の下を見たのは、その下にもまだ行っていないフィールドがあり、今のところそこに行く手段が見つかっていないことから途方に暮れていた訳である。


「ウーン、流石(さすが)にこの高さを飛び降りるのは無理カナ」

「こりゃ、俺でも無理だな」

「忍者とかならできるかもよ。こう、壁とか走れそうだし」

「ハハハ、冗談きついぜ。ジョークの腕でも上げたか?」


 崖の下を覗きこみながら、ロロナ他赤髪と藍髪の男が軽口を叩きながら笑う。

 そうこうしている間に、少し用事遠くから声が聞こえた。


「おーい! ネロッちー! こっちになんか降りれそうな所見つけたよー」


 パーティーメンバーの呼ぶ声を聞いて、ロロナ達はそこにへと急ぐ。するとそこには、


「これは、洞窟カナ?」

「なんか暗いな」

「ふむ、どうやら中はスロープになっているようだな、もしかしたらここから下に行けるのかもしれん」


 中は暗く、底の見えない洞窟があった。どうやらここから少しづつ下に降りれそうと判断した五人は、顔を見合わせると中に入る。

 中は暗く、普通なら歩くのも危ういほどだったが、緑髪の男が松明を取り出したことで、その問題は解決する。


「なんか探検みたいでワクワクするね」

「そうか? 俺は早いとここんな薄暗れぇとこ出たいけどな」


 そう話す余裕があったのもつかの間、悪夢はそこまで迫っていた。


「モンスター来るぞ! 構えろ!」


 緑髪の男がそう叫ぶと、他のメンバーは一気に気合いを入れる。そして、戦闘が始まった。

 敵は地上と同じような敵と、それに加えてコウモリのような物が数体。普段ならば、なんの問題もなかった筈の相手。しかし、


「キィーーー!!」

「しまっ!?」


 松明を持っていた緑髪の男が、死角からコウモリに襲われ松明を落としてしまったのだ。片手が塞がるため、満足に弓も持てず、後ろに下がろうとした時の出来事だった。

 辺りは一瞬にして闇に包まれた、それにより、状況は一変して不利になった。


「クソ……皆逃げろ! 一時バラバラでもいい! 死なないことを考えろ」

「でも……」


 ロロナは、赤髪の男の言うことに何とか反論しようとしたが、それは乱入してきたオークの群れによって妨げられた。

 流石に五体以上はいそうなオークの群れを、一人で相手取ることはロロナには無理だ。他のメンバーはこの暗闇のせいで、ロクな視界が確保できず、がむしゃらに出口を目指して行ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それからは想像つくかもしれないけど、何とか出口を見つけて、こうして洞窟に籠ってたってワケさ」

「なるほど、ちなみにどのくらいここにいた?」


 事のあらましを語り終えたロロナに、ライトはさらに追加で質問する。すると、彼女は更にうつむくと、その質問に答える。


「……四時間」

「え? 四時間ったら……もう夜になってから結構立ってないか?」

「立ってるよ! 凄ーく寂しかったんだからネ!」


 立ち上がって主張するロロナを、何とかライトは和ませようと、話を聞きながらあれこれと考える。そして、


「な、なあ。腹、減ってないか? 丁度パンが数個ほど有るんだが」

「食べる!」


 非常食に、と買っておいたパンを取り出すと、ロロナの前に差し出してやる。彼女はそれを受けとると、ようやく笑顔が戻ってきた。そして、


「ねえ、隣。いいカナ?」

「もう座ってるじゃないか」

「事後承諾ってヤツだよ」


 ライトの隣に腰を下ろした。普段ならもう少し抵抗したかもしれないが、一人でいて寂しかったんだろうと解釈し、ライトは大人(おとな)しく隣に座られる。


(さてと、)


 ライトは隣に座り、パンを頬張るロロナに一度目線を向けてから、洞窟の外に視線を移し、


(これからどうすっかなー)


これからの事について思考を開始するのであった

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