第四十三話 臨時収入の宛
「それで、もう用事は終わり?」
キアン達と別れた後、街道二人を並んで歩いていると、リースがそう質問してくる。
「いや、まだもう一つばかし用事がある」
「さっき言ってた臨時収入ってやつかい?」
「あたり」
リースの言った事は、半分ほど勘だったのだが、どうやら当たっていたようで、ライトは口角を上げながら答える。リースが、その横顔を見ながら¨ふうん¨と軽く納得したような呟きを漏らす。すると、ライトが突然立ち止まった。
「着いたぞ」
「ここは、また喫茶店?」
そこは先程とは違う喫茶店であった。ライトは、一度店内をちらりと見ると、くもりガラスが付いた扉に手をかける。
(リース、ちょいと立ち止まっててくれ)
「え?」
ライトが扉を開けようとした瞬間、リースは突然送られてきた念話に思わず声が出た。
その声を無視して、ライトが勢いよく扉を開けると、
「かかったなバカが! くたば……」
「何がくたばれだって」
中からいきなり男がナイフを向けて襲いかかってくる。が、ライトはそれを見越したように、鋭男の手を蹴り飛ばし、ナイフを弾くとそう言った。
「ぐっ……テメェ」
「何だ、まだやるってのか」
蹴られた手を押さえながら、ライトを睨む男に対して、来るならこいといった姿勢を見せたライト。一触即発になりかねない雰囲気だったが、
「そのへんで止めときな、お前じゃそいつに勝てん」
突如後ろからの声に、男はハッとして振り替える。
「へ、でもヴィールさん。今日は大事な話があるから、わざわざこんな寂れた店まで来たってのに……」
「そいつがその話し相手だ、連れてこい」
「は、ハイ! 分かりました」
後ろから響く男の声に、襲ってきた方の男は弾かれたように動く。
「し、失礼しました。アンタがヴィールさんの話し相手だったとは。俺、扉を開けた奴をこれで脅かせって言われて……」
「まー気にすんな、大体分かってたし。試される事ぐらい折り込み済みさ」
「ライトなら、初見でも対処できそうなものだけどね」
「まーな」
男に案内されてやって来たのは、店の一番奥の席。そこには、
「あ、ライトにリースちゃん。久しぶりー」
「よっ」
「ロロナちゃん? という事は、臨時収入の宛って」
「そう、第二のボスの情報さ」
攻略組の一人で、AWOでは割りと珍しい拳を主に武器とするロロナが座っていた。
そして、その隣に座るのは、
「お前がライトか、話はロロナから聞いたぞ。随分腕が立つようだな」
「よく言うぜ。話だけじゃなく、この男使ってまで俺の実力を見ようとするとは」
「生憎、俺は百聞は一見にしかずって奴を信じてるだけさ。文句は昔の偉い人にでも言ってくれ」
黒い皮装備をした眼鏡の男がコーヒーをすすっていた。
「いきなり実力を試させてもらった非礼は侘びよう。座るといい」
男の進めを受けて、二人は席にへと座る。これで、テーブルにはロロナとリース、ライトと男が正面になるよう席につく。
「さて、話を始めようじゃないか。ライトさん」
「そうするか、攻略組さん」