第四十一話 対決
ライトとキアンの二人は、三メートルほどの距離を取って向かい合う。
町外れの店の前という事もあり、周りに人の気配はない。
「いつでもいいぞ」
「では……いきます!」
ライトの言葉に応じるように、キアンは剣を構えてステップを発動。ライトとの距離を一気に詰める。
キアンは、ステップの勢いをそのままに手にした剣を突き出す。しかし、そんな単純な攻撃を食らうライトではない。ライトは、キアンの突きを横に移動することで避けるが、キアンの攻撃は止まらない。
「横薙ぎ!」
「!」
キアンは、そこでステップに剣のアーツ『横薙ぎ』をチェイン。ゲームシステムにより、キアンの体は強制的に止まりその場で剣を横に振るう。その剣は、当然横にいたライトにへと向かう。
普通なら避けられないタイミング。ステップを使おうにも、ステップは前以外には使えない。
(やった!)
そんな考えがキアンの脳裏に浮かんだ。が、
「ジャンプ」
「なっ!」
ライトはアーツ『ジャンプ』を発動。それより、ライトの体は高速で飛び上がる。そして、ジャンプで横薙ぎを回避したライトの右足が、黄色い軌跡を描いてキアンに迫る。
それに対応するように、キアンの剣が赤く光っていき、彼は一気に剣を空中のライト目掛けて振るう。
「弧脚!」
「強撃!」
赤と黄の攻撃が激突する。拮抗したのは一瞬であった。
押し負けたのはライトの方であった。(手数を活かす戦闘スタイルのライトでは、パーティの前衛を勤めるキアンに正面から勝てるわけが無いのだが)
押し負けたライトは、自ら後ろにへと飛んでキアンの強撃の威力を減らす。
(ここで一気に攻める!)
今が好機と悟ったキアンは、後ろに飛んで距離をとったライトに一気に詰め寄ろうとした。その時。
「!?」
キアンの腕に衝撃が走り、剣を落としてしまう。¨誰かに攻撃を加えられた¨その考えが浮かぶと同時に衝撃を加えられた方向を向くと。
「なっ!? え、ええ?」
「ライトさんが……二人!?」
そこには、もう一人のライトが蹴りを加え終わった姿でいた。
もう一人のライトを見て、キアンはすっとんきょうな声を上げ、シェミルも同じように驚きの声を上げる。ミリィは、声こそ上げないまでも、二人のライトを交互に見ながら目を丸くしていた。
「まだやるかい?」
「いえ……降参します」
攻撃手段を失ったキアンは、弱々しく降参を宣言することとなった。
これにより、ライト対キアンの二回目となる対決は、またもライトの勝利で幕を閉じたのであった。
「ほら、だから言ったじゃないか。ライトが勝つってね」
対決が終わったのを見て、隣で目を丸くしていたミリィとシェミルに向かってリースは、そう呟くのであった。