第四十話
第一の町の項目をタップすると、二人は一瞬にして転移させられる。転移させられた場所は、第一の町の広場の外れ。
「おー、凄い人だかり」
「この広場にこんな人がいるのは久しぶりだね」
広場の中心に目を向けると、結構な人数の人が広場の中心に立つ石碑に群がっていた。
二人が遠目から石碑を見てみると、その石碑は『各ボス初攻略』のタイトルの下に、各ボスを最も早く討伐したパーティメンバーの名が書かれていた。
第一のボスを討伐したパーティメンバーは、攻略組でも実力が高い者達の名が連なっていた。が、その一つ下、第二のボスの討伐の所を見ると、書かれていたのは『ライト』の名前一人だけ。
攻略組は五人フルで挑んでいるのに対し、このデスゲームの状況下でソロ。その上攻略組よりも早くボス討伐を終えているとなれば、話題になるのは当然である。
その話題の種類も、耳を済まして聞いてみると、ただ野次馬的な会話のだけでなく、攻略組にライトをスカウトしようという旨の会話も聞こえてくる。
ここに来たのは、自分が成し遂げたソロでのボスの初討伐が、どれだけ話題になっているのかを見にきただけであり、その目的が達成された今、下手に見つかって大騒ぎにならぬようその場を離れようとすると。
「あれ? ライ……」
振り返った先に、かつてライトが助けたプレイヤー、キアンが立っていた。
ライトは、キアンが自分の名を話しそうになる前に、素早く彼の口を手で塞ぐ。
「ここで名前を出すのは止めてくれ、確実に面倒な事になる」
ライトは、キアンが頷いた事を確認すると、口から手を離す。
「いきなり口塞いで悪かったな」
「いえ、軽はずみに名前を出そうとした僕が悪いですから、気にしないで下さい。でも、ライトさんはどうしてここに」
「ちょっとこの騒ぎの見学に……まあ、立ち話もなんだしどこか喫茶店にでも入るか」
「喫茶店への案内は任せてください。この間結構いいお店を見つけたんですよ」
今度は、周りに聞こえないような大きさの声で二人は離す。そして、キアンに案内を任せてライトとリースの二人はその後ろをついて行く。
「ねえ、ライト。この人誰?」
「少し前に偶然助けたプレイヤーだ、暗視もないのに夜に狩りしてた命知らずとも言う」
(なんか僕のイメージが誤解されていってる気がする)
喫茶店へ行く道すがら、ライトがリースにキアンの事を教えている際に、キアンはなんとなく嫌な気を感じたが、無視する事にした。
「あ、キアン! 遅かったわね」
「あれ? そちらの方は誰ですか?」
三人が喫茶店にへと入ると、中にいた二人の女プレイヤーがキアンにへと話しかけてくる。この二人は、
「ティファ、ミリィ。この人が前にミリィの記憶を取り戻してくれた人さ」
キアンのパーティメンバーであり、ライトがキアン達を助けた時に一緒にいたプレイヤーである。
喫茶店の中は人が殆ど居らず、ガラガラなのが幸をそうし、ここならライトの名を聞き付ける野次馬もまずいない。
「えっ! ライトさんはもう第三の町にまで行ったの!?」
「ああ、以外と楽だったぞ。ボスの攻撃はパターン通りになるのも多かったからな」
キアン達との会話は弾み、一時間ほどが経過した頃。キアンが少し真剣な口ぶりで話し始める。
「ライトさん、一つお願いが有るのですが」
「何だ? とりあえず聞こう」
「……僕とPVPをしてくれませんか?」
「ほう……別にいいが、理由を聞いていいか」
「僕は、あの一件から強くなりたいと思ってきました。だから、どれだけ強くなったかライトさんに見てもらいたいんです」
「いいね、面白そうだ」
ライトは、いきなり飛んできた『PVPを受けますか?』のメッセージに¨はい¨と答えながら立ち上がる。
「貴方はどっちが勝つと思ってる?」
キアンとライトを追って、リースが店の外にようとすると、ティファがそうリースに尋ねる。目を見れば、ティファ自身はキアンの勝利を願っているらしい。そんな彼女の横を見れば、ミリィも無言ながらに同意見だと目が語っている。
そんな二つの目線を受けながら、リースは
「決まってるだろ、ライトが勝つさ」
そうすっぱりと答えた。