第二十九話
謎のコボルトとの一戦を終えたライトは、帰りながらメニューを開き、今日の成果を眺める。
アイテム欄には数々の素材が名前を連ね、所持金は昨日よりも更に潤っていた。
これは、ライトがこのフィールドのリソースを全て握っていたのが大きいだろう。広いフィールドを高いAGIに任せて駆け回り、見かける敵を倒していけばこんな数値にもなるだろう。
(ただ、今日の成果で一番大きかったのは、これだな)
そう考えながら、ライトの指が止まったのは、最も新しく手にいれたアイテム。そう、あの謎のコボルトからのドロップ品である。
それは、『ナイトメア』と頭についているのを共通に、皮、骨、肉の体のパーツがいくつか。それと、夜の結晶というアイテムが一つ。
(肉だの皮だのは、要するにあのコボルトの通常ドロップ品だろう。だが、夜の結晶はどうだ? 一個しか落ちてないし、レアドロップじゃないのか?)
生産系統のスキルを持っていないので、ライトが直接このアイテムをどうこうすることは出来ないが、生産職プレイヤーと知り合えれば使うこともあるだろう。
それに、ナイトメアについても疑問があるが、肉や皮はただの通常ドロップであり、再度倒せばまたドロップするだろう。しかし夜の結晶は、その個数と名称からレアドロップだろうと予想がつく。新フィールドのレアドロップ。これを攻略組に売れば、かなりの金になることは間違いない。
現状金にはそれほど困っていないが、何かあったときの金策や良い交渉の札となる。
ライトは、黒いクリスタル状のような形をした、夜の結晶を眺めながらそんな考えを巡らしていた。
(とりあえず、夜の結晶の事はひとまず置いておこう。今の俺一人じゃまだ使えない)
ライトは、一旦アイテム欄を閉じると、アーツの項目を開く。そこには、先程ナイトメアコボルトを 倒したことにより増えたアーツが二つ。
一つは、走りスキルのレベルが上がったことにより取得した『ジャンプ』のアーツ。これは、その名の通り通常よりも高くジャンプするアーツである。
もう一つは、小刀のレベルアップから『ロングエッジ』のアーツ。こちらは、SPを消費して刀身を伸ばすという簡単な説明しか書いていなかったが、これも名から大体の想像はつく。
アーツの項目を見ていると、前方からナイトウルフが現れた。少しの間戦闘もなくただ歩いていただけなので、ライトのSPは少しとはいえ回復している。そこで、ライトは新しく手にいれたアーツを試してみたいという衝動にかられた。
「ロングエッジ」
ライトがそう呟きSPを全て使うと、手にしてた小刀が短めの刀程度の長さにまで伸びる。
その後、ナイトウルフとの戦闘を行ったが、やはりただ単にリーチが伸びただけであった。
(ま、いつか使う機会があると信じようかね)
そう考えながら、止めの一太刀をナイトウルフに加えて倒す。その後は、極力の戦闘は避けて町へと戻り、少し空が明るくなってきた頃にようやくライトはベットに横になることができた。
今度の寝顔は、少しばかり体を動かしたおかげか安らかな顔であったのは言うまでもない。