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第二十八話 夜の闘い

 コボルトは、上から迫るライトを迎撃しようと剣を振るう。が、上に意識を取られ、分身の接近に気づけなかった。

 分身がコボルトの手元を切りつける。それにより、剣の起動が逸れた。

 避けるまでもない程に、逸れた剣の横をすり抜けライトは落ちる。その勢いをそのままに、手にした小刀を思い切りコボルトの額に突き刺した。


「グッ……ギァ!」


「遅い」


 コボルトは額に小刀を突き立てられたせいで、怯んだがすぐさま体制を立て直して、攻め手を緩めない。

 しかし、それでもライトに攻撃は当たらない。このゲームを初めてから今まで、ステータスを速度特化として振ってきたおかげか、コボルトの攻撃を完全に見切っていた。


 ライトは、銅のナイフをメニューから実体化させながらコボルトの攻撃を捌く。あるときは、片方が引き付け、その隙に攻撃を。またあるときは、集中(コンストレイション)による先読みと超反応だけを頼りに、二人がかりでの近接戦闘を繰り広げたりと、着実にコボルトのHPを削っていく。


 もし、仮にこのコボルトの攻撃がまともに当たれば、ライトのHPは一撃で消し飛んでもおかしくはない。それでも、ライトは笑っていた。

 それは戦闘の楽しさか、それとも一方的な勝利を楽しんでいるのか。それは、判別がつかないが、それでもライトには一つ思うところがあった。


(これが……もしあの世界の力を使えれば、こんなやつさっさと倒せるんだが。ま、仕方ない)


 それは、かつての力を思い出しての事であった。少し前にいた異世界では、今よりも速く、そして巨岩をも易々と砕く能力があった。

 だからこそ、その力が今あれば。とたらればの話を想像してしまうのも無理はないだろう。

 もっとも、それがなくとも今のライトは十分に強いのだが。


 闘い始めて三十分以上が経過した頃。既にコボルトのHPゲージは残り僅か。対する二人のライトも、HPゲージこそ無傷だが、SPゲージはあと効果の低いアーツ一回分といったところか。

 最後の力を振り絞るとばかりに、コボルトが大きく吠え、剣を上から降り下ろす。そこで、二人のライトは剣を隔てて左右に別れた。


 本体は右に避けると、近くの木々をつたって上へと駆け上がる。

 分身の方は左に避けると、殴りのアーツ『硬』を発動する。そして、緑の光を纏った拳でコボルトの顎を思い切りカチ上げる。


 顎を殴られ、強制的に上を向かされたコボルトは見た。


「こいつで……」


 本体のライトが、足に緑の光を纏い、踵落としのような姿勢でいる光景を。そして、


「終わりだ!」


 その振り上げた足を、最初に突き立てた小刀の柄へと落とす。

 その一撃でコボルトのHPはゼロとなり、ライトよりも大きかったその体は光となって消えていく。光が収まった時、その場に立っていたのはライトのみ。


「あー、疲れたー。けど、¨中々楽しめたな¨」


 決闘の勝者は、そう言ってその場を立ち去るのであった。

 



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