第二十二話 口寄せと神
すみません、少々急がしてくて今回は短いです
(……朝か)
昨夜は久しぶりの豪華な食事に満足し、そのまはベッドに倒れこむように寝てしまっていたライトは、部屋に朝日が差し込んできているのを感じて、意識を覚醒させる。
目はまだ閉じているものの、感じる朝日を受けながら、本日の予定をどうするか考えていると、ライトは一つ違和感を感じる。
(ん? ここの枕ってこんな高さだったか? もう少し低かった筈だが)
それは自分が頭を乗せている枕の高さの事であった。ここの枕は、まるで煎餅のように平たかったのだが、今ライトが乗せている枕はそれよもいくらか高い。
(ま、目を開けてみれば分かることだ)
ただ、そんな違和感も目を開けてみればすぐに正体が分かる。その事から、ライトは特に慌てることもなくゆっくりと目を開ける。すると、
「あ、光一。起きたみたいだね」
「……ッ!」
ライトの視界一杯に広がっていたのは、ここしばらく声しか聞いていなかった人物。いや、神物。
「顔、赤いよ。光一」
「この状況で照れない男がいるなら、俺はそいつが同性愛者だと疑うけどな。リース」
「ふふっ。さすが光一、寝起きでも口はよく回るね」
光一を神の従者にした張本人であるリースがそこにいた。
ライトは、自身の頭がベッドに座っているリースの膝にある状況。つまり、膝枕をされている事に気づくと、思わず顔が少し赤くなってしまう。
苦しいながらの言い訳も、リースはお見通しといったように笑って流してしまう。
自身操作が十全に使える現実なら、顔の赤みを何とかしてごまかすことも出来たのだろうが、それもできずこの状態を何とかしようとライトはリースの膝から頭を離して立ち上がる。
「それで、さっきの行動にも突っ込みどころはあるが、それよりもーーーなんでここに居るんだ」
立ち上がったライトは、そう当然の疑問を述べる。
現実世界なら、ライトを通して、殆ど神としての力を封じる代わりにリースは人間界へと降り立つ事ができる。が、ここはゲームの世界での中であり、実際今までリースは声こそ届けたものの姿を現した事はなかった。
その、至極当然の問いに、リースは自身の左手を指差すジェスチャーをする。それを見て、ライトが自身の左手を見てみると、
「な、なんだ……これ? 昨日まではこんな模様無かったぞ」
そこには左手の甲に丸く縁取られた、女性のマークが浮かび上がっていた。
ライトはそれを見て、何かの状態異常かと予想すると、メニュー画面を開く。しかし、そこには特に状態異常など無いと記されていた。だが、
(……ん? こいつは口寄せの項目……)
メニュー画面の中で、新たに更新された部分を示すように、スキル欄が発光している事に、ライトは気づく。そして、その発光していた部分である『口寄せ』の項目をタップすると、昨日の時点では空欄だった場所に『神様召喚』の一文が追加されていた。
左手の模様は、どうやら新たに口寄せできる物が増えたことによる知らせのようらしい。
「いやー、光一が召喚系のスキルを取得してくれたおかげで、こっちからこのゲームに少しだけ干渉できたんだ。と言っても、AWOでの私に神としての力は無いけどね」
「つまり、リースは俺の『神様召喚』をAWOの『口寄せ』に干渉させてここに来たってことか」
「そゆこと。これなら私もこの世界にこれる事が分かったし、これからは、口寄せのスキルが許す限りなら私を呼び足せるよ」
今まではリース達神は、このAWOの世界に干渉することができなかった。しかし、光一が持つ神の従者としての能力の一つに『神様召喚』というものがある。これは、自身の魔力を使ってリースを召喚するといったものである。(神の力は人間界ではほぼ使えないので、呼び出されたリースは殆ど普通の少女である)
この『神様召喚』を、ライトがこの世界で新たに手にいれた召喚系のスキル『口寄せ』に干渉させることで、中々手を出しずらかったこのAWOの世界に、少しながら干渉が可能となった。
そのため、リースがこのAWOの世界に顕現できたというわけだ。
ライトはリースの説明を聞いて、しばらく自身の中で噛み砕く。そして、粗方理解をしたところで、
「まあ、大体のことは分かったし……まずは朝食だ、リースも来な。これからのことは食べながら話すとしよう」
「そうだね、その方が効率的だし、ちょうどこの世界の料理にも興味があったところだ」
空腹を訴えてる腹を黙らせる為に、ライトはリースを連れて宿屋を出るのであった。