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第二百二十三話 吸収と暴走

 ライトが獅子目の屋敷から出ていこうとすると、殺気を感じ後ろに飛んだ。そのすぐ後にライトの眼前に短刀が迫ってきたのを、瞬身を使い体一つ分瞬間移動して避ける。


(こいつもか……いや、ちょっと違うか)


 集中コンストレイションを使いながら、短刀で突いてきた人外を観察すると耳には怪しく光る札が揺れていた。上空にライトが逃げたのに反応して、体をよじり追撃しようとする相手より先にライトは空を蹴ってその耳飾りを切り離す。

 すると、紫色に染まった目をした人外は糸の切れた人形のようにその場に倒れた。呼吸こそしているものの、激しい疲労により意識を保てなくなったという様子であり、ライトがその相手を観察していると、


「多分だけど、力に飲まれて暴走しているみたいだね」

「うん、でも変な意思も混ざってるみたい。力を受け取っているこれを奪えばとりあえずは何とかなりそう」


 リースとトイニが早々と結論を出してくれた。そうと分かればいち早くこの場から離れつつ城に向かうだけだ。ライトはまた一人こちらに向かってくる人外の耳飾りめがけてナイフを投げると、ミユを呼び出し二人を抱えるとその場から離脱するのであった。







「いったいどうなってるんだよ!」

「知らないわよ! それよりも前向いてないとやられるわよ」


 また別の場所では、目の前に迫る大量の人外たちにセイクらは襲われていた。宿泊していた宿の女将が倒れていると思ったら、いきなり襲い掛かってきたのだ。街中だというのに、PVPの設定もせずダメージが通るあたりポータル防衛のようなイベント戦闘の一部であると解釈したのだが、前とは違いここにいるのは夜明け(アマネラセ)のメンバーのみ。

 その周りは非戦闘員ばかりのようであったが、元の肉体が強靭なのもあって最初は苦戦を強いられていた。これがただのモンスター相手なら、もっと楽に倒せていただろう。


「何が起こってやがるんだよ」

「昨日まで楽しそうにしていたのに……」


 服装も着流しや店番をしていたままのような格好で襲ってくる人外たちを見ると、どうしても昨日までの楽しそうに祭りに参加していたしてた姿が頭をよぎり剣を振り切る力が鈍る。それに非戦闘員といっても、その肉体は人間族のものよりも格段に強靭であることからあっさりと無力化ともいえないのが苦戦の原因であった。


「解析終わりました! 今からマーキングする場所の札を破壊するか切り離してください!」


 そんななか、後方ですでに気絶させた人外を調べていたフェディアが叫ぶと同時に手を大きく上げる。その指先から強い光が発生し、周り全員が一瞬目がくらんだとと思えば、皆の視力が戻ると、


「っ! サンキュー、フェディア!」

「これならやりやすい!」

「ありがとう、フェディア!」 


 人外たちの体の一部が発光し、その位置は鬼龍の札の位置を正確に示していた。

 フェディアの言葉を受けて、リンが目の前の人外が懐に入れていた木札のみを両断すると相手はがっくりと脱力しその場に倒れるが、その体には大きな怪我も傷もない。


 フェディアのマーキングもあって、勢いを取り戻した夜明け(アマネラセ)のメンバーは周りの人外たちを全員無力化することができたのであった。


「それで、いったい何があったって言うんだ?」

「俺にもさっぱりだよ……朝起きたらこんな感じになってたし」


 やっと一息ついたところで、ようやくセイクたちは疑問を口にした。朝から頭の中はハテナで埋まりさらにはいきなりイベント戦じみた事態に襲われたのだ。


「正直”なぜ”の部分はまだ分かりません」

「でも、”何をやっているのか”の部分なら少しは見当つくわ」

「こっちの証を媒介に力を吸ってあの城に送っている一方で、この証で荒い力を注入して暴走しているみたいですわ」


 フェニックスが両手に持つのは龍鬼の証と鬼龍の証の二つ。シェミルが力の行先として指差すのは、龍鬼祭の時でも入ることができなかったこの朧町の中心に立つ巨大な城。


「とりあえずあそこに行ってみるしかないみたいだな」

「そうね」


 セイクの決定に異議を唱えるものはいなかった。


 

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