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第百九十八話 もう一つの試練

 セイクたちが人外が支配する朧町で龍鬼の試練を受け、その位を上げようと奮闘している一方でライトは何をしていたかというと。


「ねえ、ライト今度はあっちに行ってみようよ」

「そんな引っ張るなっての、ぶつかるぞ」


 浴衣を着たトイニがライトを引っ張って温泉街を歩く。最初こそこの町の雰囲気におっかなびっくりなところこそ見せていたものの、一日寝てからはすっかり慣れたのかこうして新しい町に目を輝かせていた。

 ライトが袖を引っ張られながらも、後ろにいるミユとリースの二人に一度視線を移すと、


「私はご主人様(マスター)についていくだけですので」

「私も観光したいけど特に希望はないからね、トイニの行きたいところいこうよ」


 そう言ってセイクの後をついてくる二人。リースは軒先に店を出していたお茶屋からなにやら饅頭のようなものを買い、それを見たトイニがずるいとばかりに引き返したのを饅頭を一つ渡して機嫌を取っていた。

 この町の人外たち曰く、立ち上る気配が違うとのことで見た目こそリースは人族であるものの、しっかりと人外として認識されているようでこの四人で人族として物珍しく見られているのはセイクだけのようである。


「ま、いいじゃないか。今は先に進む道も見つかってないんだからさ、こういう場当たり的な行動が案外役にたったりするもんだよ」

「その意見に関しては、リース様に私も同意します」


 いつの間にかミユも、どこからか買った飲み物を片手にリースに同意する。ミユはトイニのように妖精ではなく、大地の精霊が結晶化したものを核とし疑体に入れて動いている自動人形オートマトンであるため、本来であれば口からの飲食は必要ない。だが、魔力の補給のために飲食ができないというわけでもなく、この町の食事は大地からの魔力が潤沢に含まれているということから、口にこそ出さないがかなり好んで飲食をしている様子がよく見れる。


「それにしても、どっかに先にいくための道があるとは思うんだが……」

「あれだけマッピングしても見つからなかったからね」

「もしかしたらこの町みたいに道が隠されてるかもしれないけど、それにしたって私やミユ、リースが気が付かないのは不自然だしね」

「魔力以外の方法で隠されているのなら、ご主人様(マスター)が察知できる可能性が高いので、先へと進むヒントないしそのものがこの町にある可能性は高いかと」


 この町に来る前は分身を使った広範囲はマッピングに、三人の魔法職による魔術的な索敵でも打つ手なしといった具合であり、この町で打開への道を見逃すとなれば攻略においてかなりまずいことになる。


「でもこれ凄いわよね、よく分からないけど色んなところでサービスしてもらえるし」

「見えるところに着けとけって言われたけど、ただのアクセサリーってわけじゃなさそうだよな」


 饅頭をパクつきながら話すトイニが持っていたのは、龍と鬼と桜の絵柄が書かれた木札。獅子目の屋敷に止まっているライトたちであるが、町を歩き回りたいと言うと朝食を食べているところに獅子目が人数分の木札を渡してきたのだ。


「なんだこれ?」

「まあちょっとした餞別だ、見えるところに着けておけばいいことあるかもしれんぞ」

「ふーん」


 四の文字が刻まれたそれを、ライトは腰の短刀につけ、トイニは紐を通して手首に巻き付け、ミユは細長い耳にピアスのようにつけている。リースに関してはシンプルに紐を通してネックレスのように着けているのだが、


『ね、光一後ろ結んでくれないかな?』

『……はい』

『悪いね、普通の紐を通しただけだから結びづらくてね』


 念話で話してきたリースが髪を上げた時に見せたうなじに、自身操作マインネッターを使って冷静さを装いながら木札を結んだのはライトだけの秘密である。例え念話を通してお見通しだろうと、ライトの動揺を口に出さず目を僅かに細めるだけでいてくれるのは女神の優しさなのだろうか。



「なんか、こっちはあんまり店がないのね」


 そうしてしばらく観光をしていたところ、街外れに来てしまったのかだんだんと茶屋や道具屋のようなものも減り、それよりも普段店をやっているような人外よりも一回り体が大きく武器を携帯した人外とすれ違うことが多くなった。


「止まれ、証を見せろ」


 それでも断崖にを左手に進んでいくと、赤い色をした巨大な門が現れその横にいた槍を持つ鬼が現れライトたちの前に威圧的に話す。


「証って……これか?」


 いきなり証と言われても、ライトからすれば心当たりは獅子目からもらった木札しかなく、それを見せると鬼はそれまでの威圧的な態度を一気に改め、一度頭を下げると門に手をかけて開ける。


「まさか御三家の方とは知らず、申し訳ございませんでした。どうぞこちらから先にお進みください」

「ちょちょ、そんなことよりこれは一体なんなんだ? いきなり進めとか言われもそもそもこの札が何かすらも分かってないんだが……」


 ライトの言葉を聞いて、門を開けた鬼は信じられないと言った顔をしたが、すぐに真面目な顔になると至極丁寧にライトに龍鬼の試練の説明と札の権限についての説明をした。


「ふーむ、なるほどね」

「ライト、これって」

「ああ、間違いないな」


 ニヤリとRPGで隠し通路を見つけたような笑みを浮かべたライトは、こうして龍鬼の試練への挑戦を決めるのであった。










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― 新着の感想 ―
[良い点] 200話おめでとうございます [気になる点] 202話じゃった…あれ? [一言] いつも投稿ありがとうございます 楽しく読ませてもらってます
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