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第二十話 並列思考

「ギィ……」


 山道の途中で、棍棒を手にしたゴブリンと、二人の男が闘っていた。

 男達の動きは鋭く、ゴブリンが棍棒をいくら振り回そうともあたる気配が全く無い程だ。

 そして、ゴブリンが棍棒を大きく空振りしたその瞬間、片方の男は手にしていたナイフをゴブリンの顔めがけて投げつける。

 それだけで死ぬほどゴブリンはやわではないが、攻撃を受けたことによる一瞬の硬直。その隙に、もう一人の男が急接近し、下段蹴りでゴブリンを転ばせる。


「ギャァ!」


 地面に転がされたゴブリンは、最後に見た。先程額に刺さったナイフの柄を踏みつける男の姿を。 



ーーーーーーーーーーー


「ふむ、これで大体のことは分かったな」


 地面に落ちたナイフを拾いながら、ライトはそう¨もう一人のライト¨に言う。


「そうだな。五感のリンクも慣れたし、もう殆ど本体と変わらないぐらいの精度になっている」


 もう一人のライトは、先程のライトよりも淡々と感じたことを話すと、無言でその場に待機する。


 この、普段のライトよりも感情が少なく、淡々とした印象を受けるのは、ライトが新アーツ『分身』で呼び出した分身である。

 ライトはこのアーツが使えるようになってから、しばらくの間このアーツの研究を続け、大体の特徴を把握することに成功していた。

 このアーツの特徴は、今のところ四つ。


・分身と本体の五感はリンクしており、分身体 も本体と同じように操れる。


・分身は簡単な命令を与える事で操作もできるが、『切りつける』等の本当に簡単な命令しかできない。


・今のところ出せる最大の数は一体だけ。そして、発動するとHPとMPの最大値が本体・分身共に三分の二になる。 


・分身はHPがゼロになると煙となって消える。そして、分身のVITはゼロとなる。


 こうしてみると、この分身というアーツは本来簡単な命令を与えて使うものだったのだろう。

 いきなり五感が増えれば、人はロクに動けない。特に視界が二つに増えるのは、とても混乱してしまう。

 しかし数時間前、ライトは座り込んである作業をしていた。

 それが『並列思考』を可能にすることである。


 普通、人間は二つの事を同時に行うことや考える事は難しい。

しかし、訓練次第ではそれは可能になるとも言われている。

 ただ、友人と雑談しながらも他の事を考えたり、テレビを見ながら食事をしたり等。以外と人々は同時に二つの事を十分に行うこともある。


 そして、『普通の人』ができる事ならば、ライトは、いや、光一はその殆どの事を任意で行うことができる。

 なので、先程光一が座り込んで行っていた行為は、自身操作を使って自身の脳を操作。そして『並列思考』を新たに使えるようにしたという訳だ。


(しっかし、本当に便利なアーツだな。ま、それも『自身操作』があるってのが前提なんだが)


 そして、自身操作という能力のおかげで、自由に集中力を高めてゾーンにすら容易に入れるライトにとって、分身のデメリットは有ってないようなものである。

 VITゼロやHPの最大値減少は全て回避してしまえば問題ない。五感のリンクについても、ライトにとっては視野が二倍になったようなものだ。


 新たに強力なアーツを手にしたことで、上機嫌なライトはさらにもう一つ新たに取得したスキルを試そうとする。

 そのスキルは、忍者になったことで取得した職スキル。その名も。


「口寄せの術!」


 そう叫び、スキルによって決められた動作である、地面に手のひらをつけるという動きもしたのだが、何も起こらない。

 ¨失敗か?¨そう思いながらライトが口寄せのスキル説明を読んでいると、


「あ……これ他の奴と呼び出すための契約しないといけないのか」


 その原因を見つける。

 そう、この口寄せのスキルは、召喚者(サモナー)のスキルと酷似しているスキルであり、モンスター等と契約を結ばなければ口寄せを行うことはできないのだ。(ちなみに、召喚者(サモナー)は呼び出したモンスターに補正がかかるが、忍者にはかからないという点で、忍者は劣る)


「口寄せは、地道に口寄せできそうな奴を探すとして……そろそろ帰るかな、時間も遅いし」


 モンスター狩りに夢中になっていたが、そろそろ日は沈むもうとしており、ライトも空腹を感じていたので、一旦レベル上げ兼忍者の試運転は終了となった。



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