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第十八話 忍者

「ま、立ち話もなんじゃし。続きは中で話すとしよう」


 ライトの返事も待たずに、老人は付いてこいといった仕草をすると、茅葺き屋根の小屋へと入っていく。


(なんだ? この人。いきなり現れたと思ったら、『忍者にならんかの』だと、……まさか転職イベントか? これ)


 転職ができる町【グレンデン】で、いきなりの『忍者にならんかの』という発言。ここから、ライトはこの一連の流れが何かのイベントではないかと仮説を立てた。

 特に予定もなく、ただの肩慣らし的な意味合いで狩りをしていたライトは、¨少しくらい付き合ってもいいか¨と考えて、老人の後を追って小屋の中に入る。


 小屋の中は十畳程度の畳の間で、部屋の中心には囲炉裏が位置していた。今まで、外国的な雰囲気の町並みをしていたAWOからは、少し外れた和風な空間。

 老人は、囲炉裏を挟むようにに敷いてあった二組の座布団の内、奥の方へ座り、ライトは老人に向かい合うように座る。


「で、なんだ。その忍者とやらは」


「開口一番がそれかの、目上の者への口の聞き方がなっとらんな、それじゃ教える気も起こらんというものじゃ」


「人殺し未遂がよくそんな事言えるな。それに、俺が教えて貰う? 馬鹿言うな、今は俺がアンタの頼みを聞くかどうかって話をしてるんだぞ? もうボケが始まったのか」


 小屋に入ってから五分とたたずに、二人の間には火花が散っていた。

 追記するなら、ライトは本来ここまで初対面の、しかも老人相手にこんな口を利いたりはしない。


「それに、敬って欲しければもう少し態度を改めたらどうだ。俺だって、本当なら老人相手にこんな口を利いたりはしないさ」


 そこでライトは少しだけ間を開けると、


「いきなり人に攻撃した。これはまだいい、俺は結果を重視する男だ、俺は死んでもないし、怪我もしてない。だが、一方的に要求吹っ掛けてきた割りに、未だ謝罪の一つも無いっては許せないな」


 そう付け加える。

 そう、ライトの口調がここまで悪かったのは、老人の態度に納得がいかなかったからだ。

 死んだら記憶を失うこのAWO、その中でいきなり攻撃されたと有れば、誰でも怒るだろう。それがたとえNPCだとしてもだ。


 ライトの主張を聞いて、老人は¨フッ¨と小さく笑うと、


「そうじゃな、確かに悪いのはワシじゃな。これで敬えというのも酷じゃな」


 前半は和やかに言い。そして、


「悪かった。いきなり攻撃などしてしまっての、これでは責められても文句は言えん」


 そう、座布団から立って頭を下げる。

 それを聞いて、ライトも立ち上がると、


「顔を上げて下さい。自分も少々きつく言ってしまいました。……では、お互いにスッキリしたところで本題に入りましょうか」


 老人の謝罪を聞いて、口調を元に戻して話を進める。老人の方も堅苦しかった表情を、少し崩す。

 二人は再度座布団に座り、簡単な自己紹介を始める。


「ワシの名はソウジじゃ、ここで忍者として暮らしておる」


「自分はライトと言います、今は盗賊の職についているソロプレイヤーです」


「ほほう、盗賊の職持ちかの。それは好都合じゃな、なにせ忍者は盗賊からが一番なりやすい職じゃからの」


 ライトの自己紹介を受けて、ソウジの声の調子は嬉しそうに上がる。

 やや上機嫌になったソウジは、そのままつらつらと忍者についての事をライトへと話す。

 上がりやすいステータスに、固有能力、必要な条件。それらを聞いて、しっかりと吟味したライトは、座布団から立ち上がると。


「分かりました、『忍者』への転職を受けさせていただきます」


 忍者への転職を決めた。

 決め手は、忍者はすべての中位職の中でもトップクラスのAGIを誇るという点である。

 他にもソロプレイに有用そうなスキルに、


(一つ面白うな固有アーツもあったしな)


 ライトの興味が引かれたあるアーツがあった点が大きい。


「よし、分かった。それではゆくぞ、『職業変更(ジョブチェンジ)! 忍者』」


 ソウジは立ち上がって宣言したライトの前へ立つと、手をライトの額に向けてスキル名を宣言する。すると、ライトの足元が目映く光り、それに包まれたと思うと、


「これでお主は今から忍者じゃ、精進するとよいぞ」


 一瞬でその光は収まる。端から見れば、何も変わって居ないように見えるが、ステータスをオープンすれば、しっかりと職は変わっている。

 ライトが職が変わった事を確認すると、ソウジに礼を言って小屋から出ようとする。が、それをソウジは呼び止める。

 ソウジは、部屋の隅にあった箪笥から布に包まれた何かを取り出すと、ライトへと手渡す。


「職業の変更祝じゃ、大切にしとくれよ」


「これは……小刀? ありがとうございます、大切に使わせていただきます」


「ああ、それじゃあの」


 ソウジに手渡されたのは小刀であった、ステータスはライトのナイフよりも高く、次の武器としては十分有用であることは言うまでもない。


 今度こそライトは、ソウジにお礼を言って小屋を出る。

 そして、道中の敵を最初よりもスムーズに倒していくライトの姿がそこにはあった。





ステータス紹介


 Name ライト 

 Level 22

 Job 忍者(new!)


スキル  蹴りlevel 13 殴りlevel 14 ナイフlevel 14 投げlevel 11 走りlevel 15 


 

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