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第百六十七話 決着

「セイクがどうしたって言うんだよ!」

「魔力の出ていくペースが早すぎます、このままだと魔力どころか生命力オドまで無くなってしまうペースです!」


 深刻な顔でまくしたてるフェディア。純粋な戦士職であるケンは、フェディアの話す専門用語についてはあまり理解できなかったが、それに気づいたミオが説明を追加してくれる。


「魔力や気というものはオドという生命力の源をより効率良いエネルギーに精製したものです。通常、魔力が切れれば魔法は発動しないのですが、生命力オドを使って無理矢理発動することも出来なくはないのです」

「そんなことしても効率悪いし、気分悪くてそれどころじゃないんだけどね」

「その筈なのですが、今のセイクさんは無理に魔力を精製するだけでなく、生命力オドまで使っているんです。しかも、こんなペースだと魔力だけじゃなくて生命力オドまで無くなってしまいます!」


 後ろにいるティーダも苦い顔をしているようで、戦士系のケンにもこの状況がまずいことは分かる。


「さて、今の状況は理解できたようだね。ここは協力しようじゃないか」

「誰がテメェなんかと……」

「ボクならこの結界を解除できるって言ってもかい?」

「なっ!?」


 ロズウェルの言葉に、否定しようとした口を塞がれた。


「なーに、難しいことはないさ。ほんの一瞬でいいからライト君の動きを止めて欲しい、それで全ては解決するさ」


 ケンが周りを見回すと、皆ロズウェルに協力をするのは癪だが今は頼るしかないという表情をしていた。そもそも、このままでは聖櫃コミュニィオンを破壊できずに指を加えて見ている事しかできない。


「……分かった、やってくれ」

「そうこなくっちゃ」





(分身がやられたか……)


 聖櫃コミュニィオン内部、ライトはそこまで広くもない筈の空間を覆いつくすような魔法の矢を避け、弾き、時には土遁で防ぎ、中心にいるセイクに一撃を加える。

 自身操作マインネッター世界変異リアクトワールドの影響を受けた魂喰らい(ソウルイーター)を突き刺し続けることで、魔力を吸収し続けようとしたところまでは良かったのだが、予想外のことがあった。魔力というものを無意識的にしか使ってこなかったセイク、その体に眠る潜在魔力は莫大であるが、その全てを使いこなすには至っていなかった。


 しかし、セイクは魂喰らい(ソウルイーター)の影響で大量の魔力が抜けていく感覚と共に、己の内に眠る膨大な量の魔力に気づいたのだ。ただし、人妖合身のように魔力の使い方を補助してくれる存在は今はいない。

 適切な量の魔力を出す。というごく当たり前のことができないこの状況では、フェディアの推察通り生命力まで流失しだしているといっても過言ではない。それでも、普段使っていない潜在能力を使えるということに変わりはない。


(この力、多分使い続けたらヤバいんだろうけど……これなら)


 それまで圧倒されていたライトを、魔法の物量で押し返していくセイク。間違いなく命を削るような行為だが、目の前の親友を助けるためならこの程度惜しくはない。この世界に来た時、自分たちのために命を張るような選択をしてくれた光一への恩返しでもするように、セイクはさらに湧き出ていく魔力の量を増やしてくのであった。


 お互いがその身を構わずに出力を上げ続けていたその時、互いの攻撃を受けてなおビクともしなかった筈の聖櫃コミュニィオンが、パキリと音を立てて砕けた。オレンジ色の欠片がまるでシャワーのように降り注ぎ、お互いの脳裏にはロズウェルが現れた瞬間がフラッシュバックする。


(ヤツが来るっ!?)


 ロズウェルが来たとなれば、均衡していたこの場はさらにかき乱されるのは間違いない。ライトからすれば、その混乱こそが付け入る隙を得るチャンスとなるため望むところである。お互い、ロズウェルがどんな動きをするかを注視し、反応しなければこのチャンスを活かせない。

 ライトは聖櫃コミュニィオンが割れた方向に視界を向け、過剰集中コンストレイションのリソースをそちらにも向けた。


 その判断は間違っていない。ここまで魔力が引きあがったセイクの聖櫃コミュニィオンを破壊出来るとすれば、ロズウェルぐらいのものだろう。ロズウェルの動きに注視しなければ、今のセイクとライトでも致命的な隙を晒してしまうという点も合っている。だが、


「なっ!?」

泥水の反乱(マッドシュトローム)泥水の反乱(マッドシュトローム)

鋼鉄の呼び声(アイアンコール)!!」


 そのロズウェルとケンたちが協力しているとは、露にも思っていなかった。ライトの周りを覆うように濁流が出現する。さらに激闘で被った砂埃がケンの磁力に反応し、引き寄せられてしまう。


「土遁 鉄砂盛蛇てっさしょうじゃ


 強引に土遁を発動し、砂鉄を体か剥がすと共に濁流にぶち当てそこを一気に駆ける。ケンとティーダからすれば、これで決めるつもりだったのだが、同時ににやりと口角を上げた。


「マスター、覚悟!」

「お前らまでっ!?」


 何とか切り抜けた先に現われたのは、緑に発光するブレードを構えたミユ。さらにその後ろに魔法を構える二人の妖精の姿も見える。このミユをスキルやアーツで切り抜けた後隙を刈る算段なのだろう。


(そうはいくかよ)

「!?」


 それならばスキルやアーツを使わず切り抜ければいいだけの事。ミユの刀を受け止め、その力の向きを変えることで彼女の体勢を崩して突破する。スキルもアーツも使っていない、武術での行動なのでクールタイムは存在しない。

 ライトに絡みつくように放たれたはずの追尾魔法も、瞬身を使うことで安全に回避されてしてしまう。


「エルダーハンド……ッ!?」


 あれだけ苦戦したロズウェルも本調子ではないようで、トランプを持った手を振り下ろす前にライトが投げた魂喰らい(ソウルイーター)が突き刺さりアーツが中断されてしまう。それどころか、ロズウェルと交錯しながら刺さった魂喰らい(ソウルイーター)を掴み、ロズウェルの胸を引き裂く。

 苦痛に顔を歪ませた筈のロズウェルだが、その口角は僅かに上がっていた。


(ここまでお膳立てしたんだ、後は頼んだよ)

「ぐあっ!?」


 パチンとロズウェルが指を鳴らした瞬間、ライトの胸の奥に激痛が走った。胸の奥から臓器を引きはがされているのではないかという衝撃。痛覚は鈍らせているというのに、まるで魂の奥から響くような衝撃にこの戦闘で一度も止まらなかったライトの足が止まった。


巨躯なる(エクスヴェルド)聖剣ディアボース!!」


 それでも、ライトがセイクへの意識を欠かさなければ彼が最大の一撃の為の力を溜めているのに気づけただろう。しかし、ケンたちの波状攻撃で注意が逸らされた上にロズウェルによる干渉を受けて、最大の隙を晒してしまう。


(ああ……負け、か)


 光の奔流に飲まれながら、ライトは安堵したような表情を浮かべるのであった。










大変投稿が遅れてすみません。今年からの新生活に慣れずにここまで投稿が遅れてしまいました。

ある程度慣れてきたのでこれからはマシになると思います。月曜日あたりまでにもう一つの方の更新をする予定です。

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