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第百二十八話 流儀

「負けちゃった、ナ……」


 自身の控室にリスポーンしたロロナは、ベンチに横になりながら自身の手を見る。本気を出して負けたのはいつ以来だろうか。

 しばらく横に転がった状態で呆然としていたが、ふと試合会場を移すモニターを見ると、次の試合が始まろうとしていた。次の試合はリンVSライト、特にライトの戦闘は興味がある。昨夜、高速戦闘の教えをいに行った時のこと、


『だいたい形になってきたな、これなら試合でも問題ないだろ』

『アリガト、これなら明日の試合、なんとかなりそうダヨ』


 瞬爆手甲デトネーションガントレットを使っての組み手中、終始ロロナが優勢に進めながらもあと一歩攻めきれない。のらりくらりとかわされて、底が見えないような感覚。かといって手を抜いている気はしなかった。やや矛盾しているようだが、()()()()()()()()()()。そんな感じであった。

 そんなライトだったが、次の相手はあのリンだ。ロロナが直接手合わせしたことはないが、攻略の都合上闘っているのを見たことがある。鋭い太刀筋に、単純なステータスに頼らない足運び。恐らく現実でもなにか武術をたしなんでいるのだろう彼女なら、ライトの本気を引き出せるかもしれない。


『ねえ、ライト』

『なんだ?』

『次のライトの試合、勝てソウ?』


 思い浮かべるのは、昨夜のなんてことない会話。だが、


『……さあ、どうかな』


 その時ライトが一瞬浮かべた、苦虫を嚙み潰したような、悲しいような、歓喜しているような複雑な表情は何を思っていたのだろうか、ロロナには見当もつかなかった。





『さて、先ほどの試合から興奮冷めぬ皆さま! お待たせしました! 会場の修復も終わりまして、お次の試合は麗しき女剣士ことリン選手VS今大会のダークホース、かつてソロ最速討伐をなした男、ライト選手です!!!』


 大歓声が会場を包み、観客たちは試合が始まるのを今か今かと待ち望む。リンの技量は高速戦闘の使い手であり、同時に分身の使い手でもあったリュナを容易く捕らえる。

 オバンドも、ケンも最後にはライトのスピードに対応できず敗退したが、彼女ならそれを覆せるかもしれないという予想と、それを超えるスピードをライトは見せてくれるのでは? という予想で掲示板は持ち切りだ。


「久しぶりね」

「ああ、そうだな。そっちは随分と大変そうだな。そんなもんにまで頼って」


 会場中央で向かい合う二人。ライトの煽るような口調に、少しイラついたリンの目線が細まる。赤黒い瞳孔から滲みだした黒が白かった部分を塗りつぶし、前の試合より浸蝕が進んでいることが一目で分かる。


『さあ、両者準備が完了したようです!! なにやら因縁があるようですが、それはこの試合にて存分にぶつけていただきましょう!! それでは試合、開始ィィ!!!!!』


 実況の声と同時にリンは腰を落とし刀に手を添える。ライトの戦法は、そのスピードで初撃を取るのがセオリー。ならば、こちらも最速で対応できる居合の型で初撃を叩き落してペースを握る。筈だったが……


「!ッ ア、ンタ……何やってるのか分かってるの」

「同門対決だろ? このくらい普通じゃないか」


 ライトが取った行動は、いつもの高速移動による打撃ではなく、


『おおっと!! これは珍しい、ライト選手が刀を構えました!!』


 ロングエッジで短刀を伸ばし、日本刀のように構えていた。

 大多数の観客たちは、珍しく使っただけにしか見えないが、リンには分かる。その構えは間違いなく()()()だ。


「断空」


 驚きはしたものの、高速移動という強みを潰してくれるのなら好都合。まずは居合から断空を叩き込んだのだが、手ごたえが薄い。まるで項垂れる柳に刃を通したかのようだった。そう、これは


(久崎流・枝垂れ柳!?)

「ふー、危ねぇ」


 久崎流の動きに他ならない。アーツではなく純粋な技量での久崎流の再現。それは、


「……へえ。そういうこと、ね」


 久崎凛のプライド大きく抉ったのであった。










 


  

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