第百九話
「うーん、どうしようカナ?」
decided strongest本選二日目、ロロナは依然マイペースに準備を進めていた。管理教団が関わっていることを知りながらも、自分のペースを崩さずにいられるのも、攻略組幹部として必要な強さなのかもしれない。
「HP回復か、それともこっちの方がいいカナ?」
既に管理教団のことはヴィールに伝えてある。対策を考えたり、人を動かすのは彼の方が得意だ。今、自分がやることは単純。優勝、目指して全力を尽くすだけだ。
「よし!」
気合を入れるように、両手を合わせ立ち上がり部屋を出る。その顔には不安も暗さもない、ただこの大会を楽しみ、後悔のない戦いを望む純粋な表情だった。
『やあ、調子はどうかな』
「アンタか……一体どうしたんだ、そっちから依頼以外でかけてくるなんて珍しい」
一方、銃の最終メンテナンスをしていたザールにフレンドコールがかかってきた。コール画面に表示されたのは“ロズウェル”の文字。
『いや、特に用があったわけじゃないんだけどね。次の試合の意気込みを聞こうかと思ってね』
「俺は傭兵だぜ、金さえ貰えればその分の仕事はこなすさ。勝ち進むごとに報酬倍増、忘れるなよ」
『うん、その調子なら大丈夫そうだね。じゃ、これはその意気込みに免じてのボーナスさ』
「これは……、相変わらずどこからそんなにポンポンと出てくるのか」
ロズウェルから通話越しに送られてきたのは、多額のGだった。この大会の優勝賞金にも届きうる程の大金をあっさりと渡してきたのだ。
『それは教えられないなぁ、そういうことに首を突っ込まないから傭兵なんだろ?』
「そういやそうだったな、忘れてくれ」
『それじゃ、期待してるよ』
その一言を残して、通話は一方的に切られた。今では管理教団の一員のように数えられることもあるが、あくまでザールは傭兵だ。圧倒的な金払いの良さが気に入って手を貸しているが、最近疑問に思うことも多くなってきた。
「ま、別にいいか」
しかし、それを追求しないから彼は傭兵なのであり、大金で繋がる以上ロズウェルにも何か隠し事があるのだろう。そんな事を深く考えたところで、彼にとって一銭の得にもならない。それよりも、今は次の試合に勝って、ボーナスを得る事を考えた方がよっぽど有益だ。そう結論づけると、愛銃を腰に差し、コートを羽織り部屋を出るのであった。
『皆さんお待ちかね!! decided strongest 第二回戦の始まりでーす!!! 第一試合は、実は二丁使いだったザール選手VSいまや唯一の攻略組のロロナ選手です!!』
『これはいきなりの好カードの予感、観客の皆さん賭け相手を変えるなら今ですよ!』
『それでは、試合…………開始!!!!!』