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最終話「希望の行先」

「毒のトリックだが、まず、第二の扉だ。ロシアンルーレットの如く拳銃の引き金を引いたが順番がアルファベット順で固定されていた。そして、ロシアンルーレットの方式だが、複数で行う場合、ランダム式と順番式とがある」

「私たちがしたのは…? ランダム式?」

「いや。ランダム式とは、次に引き金を引く際、好きなようにシリンダーを回せるやり方だ。俺たちがしたのは後者である順番式。引き金を引くと、自動的に次の弾が設置され、回ってきた弾の順番は変えることはできない。また、あらかじめアルファベットで順番を指定していれば、自分に毒が回ってくるのを防げる」


ヒデコは謎の名探偵の推理を黙って聞いている。ハヅキは問う。


「な、ならっ、第三の扉の毒蛙は!?あれは、名前や順番の指定はなかったはず。シモヤマが別な箱を選んだ可能性もあるし、余った毒の箱がお母さんに回ってくる可能性もあったんじゃない?」


謎の名探偵は声色を変えず淡々と推理を続ける。


「あれは、人間の心理を利用したトリックだ」

「心理?」


眉をひそめるハヅキに謎の名探偵は説明した。


「ああ。扉の前には横に並ぶ四つ箱があった。左から俺、ハヅキ、ヒデコ、シモヤマだったな」

「うん」

「深層心理に基づくと、一番左を選んだ人間は、冷静的に物事を判断できる者」

「あの場合、その位置は謎の名探偵…本当だ、あってる」

「次に俺の隣。あこそは、議題に積極的な発言する人間が選ぶ可能性が高い」

「私ね…た、確かに」

「次にハヅキの隣。あそこは、聞き役に徹する人間が選び易い位置だ」

「お母さんね…」

「そしてシモヤマが選んだ一番右は、かっとなり易い人間が最も選ぶ可能性が高かった位置。この島に入ってから聞き役に徹し、人間観察をしたお前ならシモヤマがあの箱を選ぶことは想定内のはずだ。そしてお前は決定的なミスを犯した。箱の中身を初めから〝生物〟だと決めつけてしまった事だ」


『この箱、一体何の生物が入っているのかしらねえ』


「あの時点で中身が生物だと断定できるのは犯人のみ。よって、島の創設者及び黒幕はお前だ!」


謎の名探偵はヒデコを指さす。その様子にヒデコは体を震わせた。


「お、お母さん?」


すると、


「ク、クク、フフハ、ハーアッハッハッハアア!」


ヒデコの高笑いが島に響く。


「ここに来て、そこまで解けるとはな!見くびっていたよ、謎の名探偵」

「そんな、じゃあ本当にお母さんが!」


顔を青くする娘にヒデコは笑った。


「謎の名探偵の言った推理は正解だ、私がこの気高き うんこアイランドの創設者!」

「やはりな」

「お母さん…!なんで!どうしてこんなことをするの!?」


叫びにも近いハヅキの問いにヒデコは答える。


「府抜けたことを。私の夢はこの世界を征服すること。島をより広くし、いつかは世界を飲み込む。そしてこの世界の頂点に君臨するのだ。謎の名探偵の言うとおり、この島はすべて選抜された人間のうんこで出来ている。島をつくる土台はやはり強力で頑丈なものに限るからな」

「選抜って…だからわざと死者をだしたりしたっていうの? 生存者を絞るためにっ…」


ハヅキは愕然とした。


「その通り。島を強大なものにするには、丈夫なうんこを垂れる恵まれた人間が必要だったからな。実力や運のない奴らは徹底排除だ」


ヒデコは、やれやれ、といった様子で笑みをこぼす。


「フ、バレてしまっては仕方がない。生存者を一人に絞る予定だったが、今回はサービスだ。二人とも、永遠のうんこ製造機として生かしてやろう」


その言葉にハヅキは声をあげた。


「お母さん、間違ってるよ、こんなの」

「なんだと?」

「夢を持つことは素敵なことだけど、世界征服って何かちょっと頭とかおかしいじゃん!今ならまだ間に合うよ、島で、うんこたってる人たちを解放して警察へ行こう!」


しかし、そんなハヅキの必死の説得もここでは意味をなさなかった。


「黙れ!生かしてやると言ってやったのに!もういい、歯向かう奴は全員排除だ!」


ヒデコはへそからビームを出した。


「きゃあああっ!」


光を放つ光線がハヅキに一直線で向かってきた、次の瞬間、


「謎の名探偵!?」


謎の名探偵がハヅキの前へと立ちはだかった。


「逃げろ!最後の扉も死者が出れば開くはずだ!俺が身代わりになる!扉へ走れ!」

「そんな!謎の名探偵、どうしてそこまで!?」


必死の問いかけに、謎の名探偵はカメレオンのマスク越しに笑った。


「幼馴染のよしみだ、無論、借りは来世で清算してもらうがな…ぐ、グアアアアアッ!!」


ヒデコのへそビームを受け、謎の名探偵は光に包まれる。瞬間、扉が開くと同時に謎の名探偵が終始身に着けていたカメレオンのマスクが地に落ちた。その顔にハヅキは目を丸くする。


「そんな…あ、あなたはっ!」

「ハヅキ、に、逃げろおおおおオオオッ!」


謎の名探偵の正体は、ハヅキの幼馴染である、イズミ ケンスケだったのだ。


「け、ケンちゃん!!…ッ…ごめん!」


ハヅキは黒焦げになるケンスケから目を伏せ、開かれた最後の扉の向こうへと走った。

すると嵐は止み、陽の光が島を照らしている。目の前には青くどこまでも広がる海。その先にハヅキが見つけたのは、丁度この島の近くを通り過ぎようとしていた一つの船。

ハヅキは大声で助けを求めた。



□ □ □



 ハヅキが逃げ出した島には不気味なほど静かな空気が流れていた。

 うんこアイランドの創設者ヒデコは、ハヅキの乗り込んだ船を見つめると口角上げ、にやりと不敵な笑みを浮かべた。


「生かしてやるといったのに、馬鹿め。その船の行き先がどこかも知らずにな」


ハヅキが必死に助けを求め乗り込んだ船。その行き先は、

そう、第二のうんこアイランドだった!


最終話までお付き合い頂きありがとうございました!

うんこアイランド、これにて完結です!

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